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鈴仙1 1スレ目 55 「大勢の仲間を見捨てて逃げ出した私に幸せになる資格なんてあるわけない!!」 夜の竹林に響き渡る声。普段の鈴仙からは考えられない迫力だった。 アポロ13の到達を発端とする月の探索により、月の兎は幻想となった。この間永遠亭を襲撃してきた賊は、つまり、幻想郷に迷い込んだ月の民だったのだろう。 彼らが現れたことによって、長年の間鈴仙の心の中に閉じ込められていた罪悪感が蘇り、重い枷となって鈴仙を縛り付ける。 そうしてそれは、単純な拒絶となって俺の前に立ちはだかった。 「どんな過去を歩んできても、それが幸せになれない理由になんてなるわけないだろっ……」 体は自然と動いていた。両の腕を鈴仙の背に回して、強く抱きしめた。 驚いて一瞬体を硬くするが、それ以上の抵抗はない。 俺は自分の決意を固め、揺るぎない物にするために、続けた。 「お前にどんな過去があっても関係ない。それがお前を苦しめるというなら、俺が全部取り除くから」 「……私は卑怯な女なんだよ? 私と一緒にいたら、貴方まで不幸になる」 鈴仙の声は既に涙交じりだった。 「それでも構わない。お前といられるなら、月だって敵に回してやる」 小さな嗚咽と、笹が擦れる音だけが静かな竹林にいつまでも響いていた。 最初の台詞が何を言っているのか意味が解らんと言うやつは永夜抄のおまけ.txtを読んでくれ。 今回のNG 「それでも構わない。お前といられるなら、月の頭脳だって敵に回してやる」 ピチューン 1スレ目 57 うどんげ、月兎してもいいかな? 1スレ目 64 俺「さあ、鈴仙。ちゃんと俺の目を見て言ってくれ。俺を好きだと」 優曇華「う……あう……そ、その……」 (少女幻視中…) 俺「ぐぁぁぁぁあぁぁっっ!目が!目がぁあぁぁぁあああっ!」 BAD ENDING(ありきたり) 1スレ目 119 121 126 128 130 133 150 153 「…全く、永琳さんも無茶な事言うよ…」 永琳さんに薬学を教えてもらう事になり、僕は材料を集めに山奥まで来ていた。 「まだ着かないの、その場所に?」 「…飛べれば早いんだけどね」 隣を歩いている少女――鈴仙・優曇華院・イナバもその手伝いとして着いて来て貰った。 この山って飛ぶことが出来れば、それほどの距離にはならないんだろうけど、 飛べない僕には難所でしかない。 「そう言えば優曇華も飛べるんでしょ? だったら先に行ったら?」 「ダメ、師匠にちゃんとあなたを連れて帰るように言ったから、一緒に行くの」 そう言って、一応僕にペースを合わせてくれるのは嬉しいんだけど やっぱり、効率とか考えれば飛んでいってもらうのが早いんだけどな… 「てゐみたく飛べるんだから、先に行ってとってきたほうが早いよ」 「…だめ」 それでも譲らない優曇華。 「…だから、優曇華」 「鈴仙」 突然、自分の名前をハッキリと言う優曇華。 「あなたって、私以外の人にはちゃんと名前で呼ぶよね。 てゐ、永琳師匠、輝夜さま …でも私だけ、名前で呼ばれてない」 「いや、それは…みんなそう呼んでるから――」 「鈴仙!」 …どうやら、僕が名前で呼ぶまでこの口論は続きそうだ。 「だから、優曇華?」 「鈴仙!」 「…うど――」 「鈴仙!」 目が赤い、いや…いつもの事だけど、この表情は…泣きそうだ。 やっぱり、そう呼ぶしかないのか… 「…鈴仙」 「…何?」 「…行こうか、日が暮れちゃうよ」 「…うん」 既に妖怪とかが出そうな時間の空だった。 「…これで、一応揃ったのかな?」 僕にとっては見知らぬ草花とかばっかりだ。 でも、鈴仙のおかげもあってか、永琳さんの指示した材料は、全部集まった。 「ねえ」 「…うん?何、鈴仙?」 集めた物をまとめながら僕は彼女の方を向く。 既に日の暮れているこの場所は、暗いながらも月の光で鈴仙の姿を映していた。 「私が、月から逃げてきたって言ったよね?」 「…それは、一応聞いたけどさ」 鈴仙の重い過去のお話だ。 この話は、彼女の口からではなく、永琳さんの口から聞いた事だが。 「私は、今でもちょっとだけ後悔してるの」 「そりゃ、そうだろうね」 きっと家族とかも居ただろうし、友達だって居たはずだ。 それを置いて逃げてきたら、僕ならきっと耐えられない。 「でも、嬉しい事もあったんだ」 「うん、永琳さんやてゐ、輝夜さまに会えたからだろう?」 「それもあるけど…」 そこで一瞬、息を吸う。そして、僕の方を真っ直ぐに向き 「あなたに、会えたから」 笑顔でそう言った。 それに対して僕はどう返すべきなのか、頭が真っ白になりながら考えた。 「…ぼ、僕も…鈴仙と、会えて…嬉しい、よ?」 「――さ、帰りましょう? 師匠も心配してるだろうし」 そう言って顔を真っ赤にしながら、背を向ける。 「鈴仙!」 ビクッと、一瞬彼女の体が硬直する。 「…僕は、鈴仙の事が好きだから」 「――!」 暗がりでも照らす光が、彼女が震えているということが分かった。 「…返事は、いらないけど」 「…――」 「え?」 蚊の鳴くような声で、何かを呟いた。 「私も、あなたが好き…大好き…!」 「うん…」 僕達は月の照らす中で、抱き合い…その後、山を後にした。 「とりあえず、ちゃんと材料は集めてきたみたいだけど…二人とも随分と遅かったわね」 永遠亭に辿り着いて早々に永琳さんに言われた言葉がそれだった。 「…探すのに手間取りまして」 とっさに口に出た言葉は、きっと通じはしないんだろう。何せでっち上げなのだから。 あからさまなため息をつきながらきつい目をして 「…何のためにウドンゲを付いていかせたと思ってるの?」と永琳さんは言う そりゃ、材料を探す為だけど… 「そうでした、師匠。 それで一体何を作るつもりなんですか?」 鈴仙の言葉で僕も思い出した。 確かにそれを聞いてない。 初心者にとって本当に初歩の初歩とは聞いていたけど…それが何なのかは分からない。 「あぁ、言ってなかったわね」と 永琳さんは言葉を切り…少し考えるようなふりをして、やがてこう言った。 「…秘密よ」 教えてはまずい事なのか、いやそれとも面白そうだから、ただ黙っているのか… 目が笑っている事から考えると、やっぱり後者なんだろうなぁ… 「さぁ早速、薬の製作に入りましょう。ウドンゲ、あなたはちょっと出て行きなさい」 その永琳さんの言葉に驚いたのか 「え、私も手伝いますよ?」 と、鈴仙は言った。 「ダメよ。これは彼の修行だから、でも、そうね…。 後でその薬の実験台になってもらおうかしら」 「え…」 実験台――そのあからさまな単語に鈴仙は一瞬で後ずさる。 そりゃ、誰だって実験台になんてなりたくないって… 「大丈夫よ。風邪薬みたいな物だから」 それは結局の所、風邪を引いた人じゃないの無意味なのでは? 「…そ、それじゃ、頑張ってね」 鈴仙はそう言いながら、さっさと部屋を出て行った。 残された永琳さんと僕の間に沈黙が包み込む。 「…まずは、調合の分量から言っておくわ。 これを間違えると薬は毒になるの 薬も度が過ぎれば毒とはよく言ったものね。大体、このくらいの分量ね」 「はい、えっと…こっちの分量はこれくらいでしょうか?」 「もうちょっと少な目ね。 分量をミスしたら、それだけあの子が苦しむわよ?」 「脅さないで下さいよ…」 いや、これはもう脅しじゃないけど 「脅しじゃないわよ?あなたがミスしなければいい話だから」 それもそうか。薬学を志す身として、ちゃんと最初の作業くらいは成功させないと! 僕は目の前の作業に取り掛かった。端で笑っている永琳さんの様子も気になるけど… 「…ふぅ」 外に出てから、私はゆっくりと溜め息をついた。 何を作っているのか気になる一方で、彼が大丈夫かという不安に襲われている。 「大丈夫…だよね」 いくら師匠でも、そんな事をするはずはないし…多分、大丈夫………のはず くいくい そんな考えが浮かんだ途端に私の服の袖が引っ張られた。 その方を向くと、二匹の妖怪兎が私の方を見ていた。 「えっと、どうかしたの?」 見下ろすような形をやめて視線を合わせて、その様子を見る 「れーせん…」 と一度私を指差して自らを指差す。 「――」 そしてもう一匹が、今、部屋の中に居るであろう人物の名前を舌っ足らずに言い その指を自分に指す 「う~」 と急に二人の妖怪兎が抱き合うような形になる。 「れーせん、だいすき」 「わたしも、すき」 …ボッといきなり顔が熱くなったような気がした。 いや、気がしたじゃない。現に熱くなっている。 「あ、あ、あ、あ…あなたたち…見てたの!?」 「う!」 首を縦に振る…という事は肯定の証らしい。 しかしあんな山奥に偶然に行くなんて事は考えられない。 つまり、誰かに頼まれていったという事だろう。 「…怒らないから正直に言ってみて。誰に頼まれたのかな?」 そう言って私は敢えて立ち上がった。 別に威圧するわけでもない。自然な行動だ。私は怒ってないし。立って見下ろす形に なるのは普通の事だ。うん、間違いない。 「てゐ!」 「てゐ!う~」 「そう…てゐなのね…」 自分でも頬が緩んでいる気がする。 自分でも不思議に落ち着いている。あまりにも怒りが過ぎてしまうと、 その頭は急速に冷却されて逆に落ち着くという事を、師匠の文献で見た気がする。 いや、そんな事は…どうでもいい。 「あの子ったら…少しお仕置きが必要みたいね…。ふふ、うふふふふ」 鈴仙…実験台なんて大丈夫なのかな? この薬、毒薬って事はないだろうけど…やっぱり飲ませる身としては 心配だ。 「ほら手が止まってるわよ」 「は、はい」 当の本人は全く教える気配すらないし… 「永琳さん…」 「何の薬を作っているかなんて質問は三十二回目だから却下するわよ」 「………」 バレてるよ。 「毒薬なんて作る気ないから安心しなさい。誰が好き好んで鈴仙を殺すもんですか」 それも、そうか。 「…そう、ですね」 家族同然なんだから、苦しめるような真似はするはずがないんだ… …僕が変な事をしない限りは。 「それじゃ次の作業ね」 そう言った時だった。 ガシャァァァン と、大きな何かガラスのような物が割れる音がした。もっともこの永遠亭にガラスなんて ないはずだから、きっと何かが暴れる音なんだろう。 「…何でしょうね?」 「さぁ?」 そう言いながらも含み笑いをする永琳さん。 …やっぱり見当はついてるって事かな。 「これで最後だから、やり方は紙に書いておくわ」 そう言って簡易なメモを残して、永琳さんは部屋から出て行った。 きっと、原因を調べに行くのだろう。絶対見当はついてるはずだろうけど… 「それで、出来たのね?」 「はい、出来ました」 僕の手元には確かに薬がある。 結局何の薬かは教えてもらってないけど。 「あの、本当に鈴仙に飲ませるんですか」 「そうじゃなきゃ、薬の成果が試せないでしょう?」 …風邪薬みたいなもんだとか言ってたような気がするんですが。 やっぱり、怪しいもんだ。 「てゐは…さっきボロボロだったし、他の誰かが連れてくるはずね」 「え、てゐがどうかしたんですか?」 「…少しね」 やっぱり目が笑っている。 もしかしたら、また何かあったのかもしれない。 「……遅くなりました」 ……静かに出てきたのは凶悪なオーラを漂わせてた月の兎だった。 満身創痍と言うか何というか…ともかく、疲れているということはハッキリと分かる。 「…とりあえず、これでも飲みなさい。疲労回復くらいはするかもよ?」 と、素早く僕の持っていた薬を奪い取って鈴仙に渡した 「じゃあ、遠慮なく…」 鈴仙は疑う事もなくその薬を放り込んだ。 「…あの、永琳さん、本当に飲ませて大丈夫だったんですか?」 数分経っても、飲んだ彼女に変化は見られない。 かと言って、永琳さんの言った事も信用できないんだよな… 「大丈夫でしょ。 あなたが変な失敗をしてない限りは」 「それこそ大丈夫です。だってずっと隣で分量とか細かく計算したじゃないですか」 「師匠、結局これは何の薬なんですか?」 「いや、だから秘密なんだけどね」 思ったように効果が出ていない…ってところかな? 表情から予想するには。でも、効果が出ない方がきっといい。 僕はそんな予感がしていた。 だが、観察をして更に数分が経ってから…それは起こった。 「う、ん…」 「…どうかしたの、鈴仙!?」 「効果が出てきたみたいね」 「効果って…もしかして、あの薬の!?」 どうやら心拍は上がってるようだし、顔も赤い。 風邪とはまた違った症状みたいだけど…汗をかいているみたいだ。 「と言うよりも、僕に何の薬を作らせたんですか!?」 「…その状態で気付かないの?」 「熱…いよ」 弱っていると言うよりも、どことなく色っぽい雰囲気を出している鈴仙。 やっぱり、これって… 「あの、薬ですか?」 「えぇ、あの薬よ」 悪い予感的中。僕の勘は当たるようだ。当たっても嬉しくないけど。 「熱…い。脱い…で、いい?」 「待て待て待て!鈴仙!落ち着いて!脱ぐな、いや、脱がないで!」 ここで何か起きたら、間違いなく僕のリミッターが外れるような気がする。 これは予感じゃない。確信だ。 「ちょっと、永琳さん! どうにかして…って居ないし!」 いつの間にか、永琳さんの姿はどこにもなかった。 いや、それどころか、永遠亭中の気配がない。 「…れ、鈴仙さん?そう引っ付かれると、大変身動きが取れないのですが」 「だぁめ…汗かいたら、ちょっと…寒くなったの…」 ダメだ。僕はこのままだと、終わってしまう。 何かが終わる。 でも……きっと、またこの世界に帰って来れるだろう。 きっと…そして、また鈴仙と会えるように―― 蛇足 いつもの永遠亭にいつもの日常が再び始まっていた。 あの日の僕の記憶はところどころ曖昧だが、 きっと、ロクな事になっていないのだろう。 鈴仙は花の異変を解決して戻ってきたばかりだ。 …まだ、季節外れの花が咲いているところを見ると、完全とは言えないみたいだけど。 「おはよう」 「…お疲れさま。昨日は鈴蘭を取りに行ったんだってね?」 「うん…おかげで色々疲れたわ」 まだ寝足りないのか、まぶたを擦る鈴仙。 「…眠ったら? まだ時間的には余裕があるでしょ?」 朝早くに永琳さんの持っている文献を読むのが、僕の日課である。 まぁ、鈴仙はこれにたまに付き合う程度だけど。 「……何かあったのかな?」 「え?」 自分じゃ気がついてないみたいだけど、目が赤い。 また泣いたのかな?あの時みたく。 「涙の線が残ってるしね」 「…っ!」 図星を指されたのか鈴仙は顔を隠すように僕の胸元に抱きついてきた。 多分、また泣いたんだろう。 「大丈夫、鈴仙は…優しいよ」 「私、自分勝手って言われたよ…?」 「…それでも、罪を認めて泣くことが出来るなら…僕は鈴仙と一緒にいたい」 「でも、でも…」 頭を撫でながら僕は出来る限り優しく言い聞かせる。 「幸せな時に罪は思い出さなくてもいいんだ。 勝手だけど…僕と一緒にいる間は、罪は忘れてくれないか?」 楽しく幸せに居たい、その想いだけを語りかける。 「私…あなたと一緒にいたい…居たいよ…!こんな罪、忘れたいよ…!」 「大丈夫だよ。僕が一生、鈴仙についてあげるから」 罪は裁かれなきゃならないなんて…そんな事はない。 どんな者でも幸福な時間を過ごす権利はあるはずだ。 だから、彼女を守っていきたい。この脆くて儚い少女を… 「ねえ」 「何だい?」 「…さっきのって、ぷ、プロポーズって事でいいのかな?」 「ぷ、プロポーズ!?」 「…違うの?」 「いや、そんなあからさまにがっかりしないでよ!いいって!プロポーズって事で! 嘘偽りないんだから!」 「本当?」 「うん、キミとなら、ずっと歩いていける…だから――」 蛇足の蛇足 「…れーせん!」 「あ、何?」 あの出来事から二日ほど経っていた。 また、あの妖怪兎の二匹が居たのだ。 あの時と同じようにひざまづく形で二匹を見る。 「…れーせん、――とずっと一緒?」 「いっしょ?」 またてゐ辺りに盗み見しろとでも言われたのか、 その妖怪兎は例の出来事を知っていた。 でも今度はあの時と違って、怒りなんてない。むしろ誇らしいくらいだ。 「うん、私にとって大事だし、一生懸命になってくれるのが…うれしいから」 「う?」 「彼とだったら、ずっと一緒に歩いていける…」 「きみとなら、ずっと歩いていける?」 あの時彼が言ってくれた言葉そのままだ。 その妖怪兎達の言葉に私は頷く。幸せになれるから。 「あなた達も、そういう人がいるんだよ?」 そう、私にとっての彼のように―― ─────────────────────────────────────────────────────────── 1スレ目 322 長いSSやあまあま小話なんてかけないので 短くスパッとプロポーズしようと思う。 うどんげ! そのうさ耳僕にも貸してください(*ノノ) ─────────────────────────────────────────────────────────── 1スレ目 370-372 微エロ注意……かな?言葉よりも行動で。鈴仙ファンの方許して。 がつん、と脳髄を直接殴られたかのような衝撃。 視神経を焼きながら、電流が頭の中を駆け巡っていく。 声を出すことさえ許さない激痛。 「くっ…………あっ…………ぐっ…………あああっ!?」 何だ? いったいなんでこんなことに? 疑問符が頭の中で暴れているだけで、とても形にならない。 苦しい。どうにもならないくらいに苦しい。 今すぐこの頭蓋骨を包丁で叩き割って、煙を上げている脳を両手で掻き出して視神経をそのままずるずると引きずり出したいくらいの痛みが走る。 俺は両目を押さえてうずくまった。目から激痛が頭に駆け上がってくる。 呼吸ができない。喉が痙攣している。 いったい、なんで………… 逗留していた永遠亭の主、蓬莱山輝夜に頼まれて廊下の奥の奥、薬品の材料倉庫にまで誰かを呼びに行ったその先で…………. 「ぐっッ!がはぁっ!」 唾液が飲み込めなくて俺は喉をかきむしって咳き込む。 このまま、死ぬかもしれないと本気で思った。 「――――!――――ってば!ねえ、しっかりして!」 俺の名前を呼ぶ声が、かすかに耳に入った。 肩に手らしきものが置かれて、上体をゆすぶられるのが分かる。 やめてくれ、かえって頭が痛くなる。 「――――!ねえ!ねえってば!お願いだからしっかりしてよぉ」 震えながら閉じていた目を開ける。シュールレアリズムが具現したような歪んだ視界。 「息を吸って。そして吐くの。ほら、深呼吸して」 何か考えることもできず、その声に人形のように従った。 息を吸って吐く。その単純な動作の繰り返しさえも忘れそうな激痛の中、ひたすらに同じ行為を反復していく。 ようやく、乱れた視界が形を取り戻していく。 俺の肩に手を置いて、こちらを心配そうに見つめているのは………… 「れ、鈴仙…………」 オモチャのような耳をした月の兎の少女。そのルビーよりも赤い瞳が、俺を見ていた。 ざくりと、目から心臓までその瞳の赤が貫いたよう。 「よかった……………………」 俺は……何を……考えている? 肩に置かれた手が、気になって仕方がない。 「鈴仙…………」 「なに?まだどこか痛むの?」 顔と顔が、額と額が触れ合わんばかりに鈴仙の顔が近づく。 「いや、もう……大丈夫だから……」 必死に顔を背ける。頭は割れんばかりに痛むのに、胸の内は冷たくも深い炎が熱を放ち始めてきた。 その白くてふかふかの兎の耳。 柔らかそうな血色のよい頬。 そして、長い髪から香る甘い香りが、 頭の誰かを、狂ワセテイク。 俺は……鈴仙を…… 今まで、こんなことは思いもしなかった。ただの月の兎だ。まだ少女だし、それに、人じゃない。 いや、違う。前から、俺を見る鈴仙の目は異なり始めていた。 俺と楽しそうに話していた鈴仙。風邪を引いたときは永琳さんを差し置いて看病してくれた鈴仙。俺にしか見せない顔で笑ってくれた鈴仙。 俺は……鈴仙を…… ははっ、なんて……馬鹿なことを。 「じっとしていて。すぐ、誰かを呼んでくるから」 肩から離れてしまう手。 行ってほしくないと、心の底から思った。 それと同時に、頭がこれ以上ないくらいに強く痛んで、 俺はせっかく取り戻した意識をまた手放していた。 手だけが勝手に動き、去ろうとする鈴仙の手首をつかんで 床に、押し倒していた。 俺は……鈴仙のことを…… コワシテシマイソウダッタ。 「きゃあっ!?」 床に背中を打ち付けて、痛みと驚きの混じった声を上げる鈴仙。 その声に、胸の中の暗い情念がさらに燃え盛っていく。 何が起こっているのかわからずに反射的にもがく体を押さえつけ、両手首をつかんで頭の上で一つにする。 「ひッ…………や、やめてっ!」 怯えたような声が、かえって耳に心地よい。 鈴仙の開いた脚の間に体を入れ、腹を押さえて動けないようにさせた。 じっくりと眺める。 これからこの玩具を、好きなようにできる。 陰惨な喜びが、口元に勝手に笑みを作らせる。 「やめてぇ、お願いだからやめて!正気に戻ってよ!」 いくら叫んでも、ここは倉庫の奥まった場所。助けなど誰も来ないさ。 さて、どうやって楽しもうか。 腹に置いた手を上にやり、鈴仙の上着のボタンをはずして広げさせる。 「こ…………こんなの、あなたは望んでない!こんなことするはずないもの。だから正気に戻って!」 耳元で叫ばれたような気がする。 必死に体をねじって抵抗しているが、力では俺のほうが上だ。 正気、ね。 たしかに、あの赤い瞳を見てから俺はこんな行為に及ぼうとしている。 だがそれは鈴仙、お前が原因だろう。お前のその、赤い瞳が。 ネクタイを首から無理やり取った。 隅に放り投げたその手で、ワイシャツのボタンに指をかける。 「い……やっ…………もう…………やめ……て…………」 涙目で哀願する様は、俺の心の征服欲を満たそうとする。 が、まだ満たされることはない。 ならば、もっとこの兎を堪能すれば、少しはましになるだろうか。 試してみるのも、悪くない。深くものが考えられず、自分の体のしていることが自分のしていることとは別のような気がする。 ボタンを立て続けに半分ほどはずして、鈴仙の反応を見る。 「もう…………お願い…………もどっ……て…………」 さっきまで全力でもがいていたせいで疲れたのか、抵抗は鈍い。 両手を頭の上で押さえられ、上着とワイシャツを半ば脱がされた姿。 スカートは片方の脚が膝を折っているせいでまくれて、太ももまで見えている。 そして、なおもこれ以上はやめて欲しいと懇願する顔。 その、赤い瞳。 鈴仙の瞳が、俺を狂わせていく。 「こんなの……こんなのって…………ひどいよぉ…………」 耳元で聞こえた声に、涙の気配が混じり始めていた。 けれども。 俺はそのまま、のしかかっていた全身を鈴仙に重ねた。 すすり泣く声で、目が覚めた。 赤にかすむ視界の中、左右を見回してその声の主を探す。 すぐ隣にいた。 鈴仙だった。 顔を覆って泣いている。 「俺は…………」 何てことを、してしまったんだ。 欲望のままに、俺は鈴仙に………… どんなに許しを願っても許されないことを、この女の子に。 絶望と自己嫌悪が、鏃となって心を抉る。 「鈴仙…………」 何と言えばいいのか、何と謝ったらいいのか分からず、俺は名を呼ぶことしかできない。 「ごめんなさい…………」 だが、謝ったのは鈴仙の方だった。 「どうして、君が謝るんだよ……」 「ごめんなさい…………ごめんなさいごめんなさい。悪いのは全部私。あなたは何も悪くないから。全部、私の瞳のせい」 「そんなことあるか。俺は確かに鈴仙の赤い目を見た。そのせいでおかしくはなった。でも、欲望を抑えられないで、鈴仙をはけ口にしたのは俺自身だ。俺は、俺を許せない…………」 「違うの。そうじゃないのよ」 鈴仙は泣きながらこっちを見る。 初めて、何かがおかしいことに気づいた。 鈴仙は服をきちんと着ている。ネクタイも歪んでいないし、上着にもしわはない。あれだけ無理やりひどいことをしたのに、長い髪にも白い肌にも乱れや傷はなかった。 俺は、夢を見ていたんだろうか。だとしたら、どんなによかったか。 でも、そんな希望に逃避することも許されない。目の前の鈴仙の涙が、俺の行為を現実のものだと告げている。 なら、何が違うんだ。 「お願い……怒らないで聞いて欲しいの。あなたは私の目をまともに見てしまって狂気に駆られた。衝動が現実化して、それで……その……こんなことに」 「ああ…………全部、俺が悪い。鈴仙、もし何かあったらそのときは責任を……」 「それが、その…………あなたが、ええと、その、色々した相手は私じゃないの」 「はぁ?」 「だから、あなたは私だと思ったみたいだけど、それは幻視。本当は私じゃなくて別の人なのよ。ここにいた」 それで全てが繋がった。なぜ鈴仙が謝るのか。そして彼女が無事なこと。よかった、もう少しで俺は鈴仙に取り返しのつかないことをしてしまうところだった。 イヤ、チョットマテ。 ってことは、これはここにいた誰かを鈴仙と勘違いして襲いかかったのか?それは誰?誰なの? Aてゐ B永琳さん C輝夜様 あああああ!!全員駄目だ!助けてめーりん――――(゚∀゚)――――! Aてゐの場合~「ね~ね~、私赤ちゃんができちゃったみたい。責任とってくれるよね?」←妊娠詐欺で一生強請られる B永琳さんの場合~「私がどれだけ痛い思いをしたか、分からせてあげるわ」←直径が俺の頭くらいある座薬挿入の刑。ひぎぃ! C輝夜様の場合~「死ね」←生身で大気圏突入の刑。灰も残らない OH MY GOD!どのルートでもBADENDは暴走特急。スティーブン・セガールでも止められない沈黙の要塞。アホ毛の神綺様でもヤマザナドゥ様もハード・トゥ・キル! 俺は自分でも蒼白となっていると分かる顔を、泣いたせいでさらに赤くなってしまった瞳の鈴仙に向ける。 もう耐性がついたのか、瞳を見てもなんともない。俺の根性は中古のヒューズか。いっそホムンクルスに殺されてしまえ。 「俺…………誰に不埒なことをしちゃったわけ…………」 鈴仙はあからさまなまでに視線をそらしつつ、指で俺の後ろを指す。 それはあたかも呪いのように。 見たくないと必死に頭の中に住んでいる俺の良心たん(推定7歳。好物はお好み焼き。ラッキーカラーはすみれ色)が叫んでも、脊髄はその絶叫を無視し体ごと振り返る。 そこで、半裸で俺を待ち受けていたものは………… 「彼、ここの薬品倉庫に資材を卸しに来ていたの。……あなたは彼を呼びに来たんでしょ?」 そこにいたのは、満足げな色をメガネの奥の瞳に輝かせてこちらを熱く見つめる香霖堂の店主(♂)だった。 ウホッ!いい店主! 「(もう一回)やらないか……」 (フラグが立ちました。香霖ルートに移行します。もう変更できません。強制です。逃げても無駄です。追いかけます。諦めてください)
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鈴仙3 1スレ目 624 初めに、これはプロポーズスレ 530-531の話に僕が勝手に続きを書いたものです。 人様の作品に勝手にアナザーを書くのはどうかとも思いましたが。 ぶっちゃけ、鈴仙のこのシチュエーションじゃないと僕の力量じゃアイデアを生かしきれませんでした。 よいきっかけを下さった530様に感謝しつつ。 530-531から続く。 あれ以来、僕が鈴仙の裸を見てしまってから、 なんと! 前以上に鈴仙に声をかけてもらえるようになった!! 朝、廊下ですれ違う。 「おはよう、ヘンタイ」 乾いた笑顔がまぶしいぜィェァ! あれ? 永琳さんのお手伝いで鈴仙と一緒に薬草を探しに行った時も 一歩後ろを付いてくる鈴仙が突然つぶやいた。 「スケベ」 思わず振り返るとジト目で言われた。 「なに、盗み聞き? サイテー」 チキショウゥゥゥ 僕は涙を拭きながら駆け出した。 確かに悪いのは僕さ、でも、だからって、こんな扱いされるなんて…… 僕が他の人といるときは鈴仙も普通だった。 ウサギたちと一緒に長い廊下の掃除をしていたときは 「お掃除ご苦労様です。がんばってくださいね」 と最高の笑顔で言われた。 ウサギたちはそれぞれの持ち場へ掃除をしに行く。 僕は鈴仙の笑顔のギャップに見とれその場でポカーンとしていた。 鈴仙に睨まれてあわてて動き出すが、足元のバケツを引っ掛けてこぼしてしまった。 うあぁぁしまった、廊下が水浸しだ。 手持ちの雑巾だけじゃ拭ききれない、新しい雑巾はどこ…? 僕がおろおろしていると僕の視界が急に暗くなる。 後ろから顔を覆うように頭に雑巾を載せられた。 「バーカ」 そう言ってすぐに背を向け歩いていく鈴仙。 「まって! 鈴仙、わざわざ僕のために雑巾を持ってきてくれたの?」 「そんなわけないです。自意識過剰はキモチワルイ」 く……それ今迄で一番グサっときた。 でも、なんだろうこの気持ち……僕は内なる自らの新しい感情の芽生えを感じていた。 「ありがとう、鈴仙」 素直に礼を言ってみた。 「n……えと……な、なにまじめにお礼なんて言っちゃってるんですか? ヘンタイの癖に いまさら遅い。信じられない、アリエナイ、変人、サディスト、マッド、ひきこもり、存在感 薄、嘘つき、変な髪形、えーっと、あと、とにかく……エッチ!」 顔を真っ赤にして、耳をピンと立てて怒る鈴仙。 そしてそのまま行ってしまった。 「僕はMなのかもしれない」 そう思った、だって今の鈴仙がたまらなく可愛い…… 鈴仙に冷たくされて、嬉しくなって礼を言って、 鈴仙がよけい顔を赤くして取り乱すという僕的素敵ワールドが何度も繰り返された。 まぁ、鈴仙にとっては楽しいものではないだろうが 心なしか前よりもっと頻繁に鈴仙に声をかけられるようになった気がした。 そんなある日、永琳さんから話があると呼び出された。 永遠亭の奥の部屋に入ると永琳さんが座して僕を待っていた。 僕も永琳さんの目の前に座る。 永琳さんは微笑むと僕にお茶を出してくれた。 「お茶をどうぞ、ヘンタイさん」 !! 「これはこれでアリだ」 僕が親指を立てると永琳さんはあきれた表情で言った。 「あらあら、本当にヘンタイなのかしら。まぁいいわ。今日の話はそれとも関係があるのよ」 言いながらしぐさで僕に茶を促す。 素直に飲む。 うぇ、つーんて、辛くてしょっぱい、涙出る。 永琳さんはニコニコしている。 やっぱりこういうのは嫌かも……でももしこれが鈴仙なら…… 僕に塩わさび入り緑茶をだしてニコニコしている鈴仙を思い浮かべる。 うん、悪くない。 ということは僕はただのヘンタイではなく、鈴仙だから…なのか? 「最近、鈴仙と仲がいいみたいね」 「いえ、いじめられています。自業自得では在るのですが。」 「でも、その前はほとんど口聞いてもらえなかったんでしょう?」 「それは、確かにそうですが…」 永琳さんは少しまじめな顔をしていった。 「何が自業自得なのかは聞かないで置いてあげるけれど、ね。それよりも、あの娘の過去は聞いている?」 「月から逃げてきた、という話は噂で」 「そう。彼女は月につらい想い出がある。そして、あなたをみるとそれを思い出す。あなたが来たばかりの頃はそう言っていたわ」 「それは俺が…」 「外から来た人間だから、でしょうね」 「俺は知らない間に彼女に嫌な事を思い出させていたのか…」 「でもね」 そう言ってから一呼吸おくと、永琳さんは自分のお茶を飲んだ。 あ、顔をしかめた。 自分でも味が気になってたのか、チャレンジャーだなぁ。 「鈴仙が過去を思い出すのは何もあなたのせいだけではないわ。とくに、この間の花の異変から時々 難しい顔をしてふさぎこむ事もあったのよ。けれど最近は吹っ切れたみたい。それはきっと、あなたに関係がある」 永琳さんはそう言って俺の瞳を真っ直ぐに見つめてきた。 吸い込まれそうになる、俺の心を見透かされているようで。 そして永琳さんは微笑んだ。 「だから、あなたにお礼を言おうと思って。鈴仙を元気付けてくれてありがとう」 「でも、僕、嫌われるならまだしも……信じられません」 「ふむ」 永琳さんはあごに手を当て考えるしぐさをする。 「盗み聞きをしているてゐ、あなたはどう思うかしら?」 バタンと音がしてふすまが倒れ、アハハと愛想笑いをするてゐが現れた。 「そ、そうですね……確かに鈴仙は最近あなたの話ばかりしています」 え……俺の脈が速くなっていく。 「あ、そういえば昨日も……」 てゐは急に瞳を潤ませ、しなしなと壁にもたれかかった。 耳をパタッと倒し髪を指に絡ませながら真っ赤な顔で言った。 「私、あの人のことを思うと……ウサウサが止まらないのっ!!1!1 ……って鈴仙がいってましたよ?」 「ウサウサ!?」 ドキンと一つ僕の心臓が跳ねた。 我ながら分かりやすいと思った。 いつのまにか、僕は本気で鈴仙に惚れてしまっていたらしい。 「僕、鈴仙に会って来ます」 「そうね。いってらっしゃい、後悔のないように」 立ち上がり、永琳さんに礼をしてから部屋を出た。 「ところでてゐ、ウサウサって何?」 「嘘です、たきつけたら面白そうだったのでつい」 「……。私もウサウサがとm」 「やめてください(笑顔)」 永遠亭の外、竹林で鈴仙は竹の間から細切れに見える青い空を見ていた。 風が吹く、何かに耐えるように自らの両肩を抱く鈴仙。 冷たい風じゃない、ならばきっと耐えているのは感情の波だろう。 声をかけようとすると、彼女が何か独り言をつぶやいた ……。 それは僕の名前だった。なぜ? やっぱりてゐの言ったとおりなのだろうか。 声をかけるのがためらわれる。 もしこのまま彼女を放って置いたなら あがなえない内なる激情の渦に耐え切れなくなった彼女は ついうっかり僕が見ていることも知らずにウサウサするのだろうか見たい見たい見たい。 じゃなくて。 「鈴仙」 暴走したのは僕自身の心。それを抑えて声をかけた。 「な、なんのよう?」 一人で物思いにふけっていたところを見られたためなのか、鈴仙の反応はぎこちない。 いつものようにいろいろ言われる前に俺はすばやくその場に膝を付いて頭を下げた。 「この間はごめん! わざとじゃないんだ、って言っても鈴仙に嫌な思いをさせたのは事実だし、どんな罰でも受けます。 だから本当にごめんなさい!」 は? 馬鹿じゃないの? そんなんで許されるわけないじゃない。 罰を受ける? なら、今すぐ私の前で逆立ちしながらえーりんえーりんしてもらおうじゃないの! スッパで! 「お代官さまそいつぁ無茶だ」 「??」 あれ、予想した返事が来ない。 「御免忘れて」 もう一度頭を下げる。 「べつに……」 鈴仙はうつむいて、小声で答えた。 「べつにこないだの事はもういいの。あんなの、てゐとか師匠にはよくやられるし……、ただ、ちょっとドキドキしたって言うか…」 「え?」 予想外の答えに俺が顔を上げると、鈴仙と目が合った。 かぁぁぁぁっと鈴仙の顔が赤くなる。 「ああああやっぱりダメ。許さないヘンタイ、スケベ! あなたなんて大っ嫌いなんだから!!」 ぷいっと横を向く鈴仙。 その兎さ耳は中に「の」の字を書いていた。 だから僕は言った!! 「でも、僕は鈴仙が大好きだ!」 「!!」 鈴仙の耳がピンと伸びる。 「ほ…本気、なの? へンタイの癖に…」 「こんなの冗談じゃいえないよ、鈴仙、君が可愛すぎるから、どうしても君のことを考えないでいられない」 俺は一歩近づいた。 鈴仙は動かない。 「ア、アブナイ人?」 「うん、そうかもしれない。僕はもう君の瞳に魅入られてる」 もう一歩近づく。 鈴仙はその場で横を向いたまま緊張してカチカチになっている。 あぁ、今すぐ鈴仙を抱きしめたい、けれど僕はまだ許してもらっていない。 今そんな事をしたら鈴仙は逃げてしまうだろう。 僕は再び頭を下げ手を差し出した。 「もし許してくれるなら、僕を受け入れてくれるなら、どうかこの手をとってください」 そのまま、少しの時が流れた。 不意に、鈴仙の緊張が緩んだ。 はぁ、と何かを決心するため息を付く。 そしてまだ頭を下げている僕のほうを向いていった。 「やっぱりあなたは馬鹿です。あなたをみて過去の重罪を思い出してた私まで馬鹿みたい。でも」 そう言って彼女は僕の手をとってくれた。 「あのとき、あなたも必死で生きているんだなって思いました。些細な事で、私にとっては重大問題だけど、 一生懸命になったあなたがなんだか可愛くて…それで、えっと…その…ほら、よく言うじゃない。 好きになった子ほど苛めたくなる…って」 好きと、確かに鈴仙は言ってくれた。 「僕も、鈴仙にならもっと苛められたいかも」 俺は鈴仙の手を引っ張ってその小さな体を両腕で抱きしめた。 鈴仙は抵抗しなかった。 「ばか…」 鈴仙はただ、俺の腕の中で小さくつぶやいた。 白くて細い指がぎゅっと俺を掴んで話さない。 「大好きだ、鈴仙」 「私も、あなたの事好きになりました」 end どうしても直視できなくて一部ネタに走った。 鈴仙にバカって言われたかった。 1スレ目 940 唐突だが僕は今、窮地に瀕している。 いや、どういう状態かというと…一部の人なら喜びそうな状態なんだが…僕にはその気は無いので… まぁ、簡潔に言うと、兎にマウントポジションを取られている。 その兎の名前は鈴仙・優曇華院・イナバ。 何でこういう状況なのかというと… そもそも僕は人間界に住んでいた。 小、中、高と全然女性運が無く、恋愛とは無縁の暮らしをしていた。 趣味は散策でいろんな山、谷、海岸等を歩いたもんだ。 だが、ある神社から歩いて1時間ぐらいの竹林を歩いていたら…僕らしくも無く迷ってしまった。 軽い散策のつもりだったからもちろん地図、磁石なんてないし食物も軽い物しか無かった。 そして迷って三日、ついに食料も底をつき「もう死んでいいか…」なんてことを考えながら眠りについて… 気がついたらこの永遠亭の布団で寝ていたわけである。 僕を介抱してくれたのは薬草探しに来ていた鈴仙だった。 そして、そこの居住者である八意永琳さんに話を聞いてみたら、ここは幻想郷という世界で、 僕はどうやら行きがけに通った神社(博麗神社というらしい)の結界を破ってしまい、この幻想郷に来たらしい。 帰ることを促されたが、僕は人間界は散策してもあまり面白くないが、こちらなら面白そうだという理由で断った。 そしたらそこの家主である蓬莱山輝夜さんがある条件と引き換えにこの家に住まわせてくれると言ってくれた。 輝夜さんの提示した条件はというと…ネット回線が突然繋がらなくなったから直してほしいとのことだった。 …後でてゐから聞いた話によると、輝夜さんは人間界で言うヒッキーらしい… 僕はもともと通っていた学校が工業系だった為に容易くここに住まわせてもらえることになった。(ちなみに原因はLANケーブルの断線だった。ここにいる兎の中でもかなりのイタズラ好きの奴が齧ったらしい。ちなみにその夜、おかずに兎の肉のソテーが出て、鈴仙とてゐが食事を辞退したのは言うまでも無い) さて、前置きが長くなったが今のこの状況になるまでのプロセスを思い出すと… 事の発端は永琳さんが僕と鈴仙に薬草を取りに行かせたことだ。 「この薬を作るのにどうしても必要な薬草なんだけどこの辺にはあまり生えていない希少な植物なの。だから2人で手分けして探して頂戴」 といわれて、僕らは二手に分かれてその薬草を探し始めたのだが… しばらくして鈴仙が僕の探しているところにやってきた。 「あっち探してたんだけど生えてそうに無いの。だからこっちを手伝うわ」 と言って一緒に探し始めた。 「おいおい、これじゃあ永琳さんが2人に頼んだ意味無いんじゃあ…」 「いいの。貴方の場合見落としがあるかもしれないから。」 流石に少しカチンとくる言われ様だったが、実際鈴仙の方が薬草探しは慣れているので言い返せなかった。 そしてしばらく二人で探しているといきなり鈴仙が僕の正面に立ちはだかった。 「…おい、何のつもりだい…」 「貴方に…話したいことがあるの。」 話したいこと?なんなんだ?と思いつつ「なんだい?」と聞いてみるとその"話したいこと"はものすごいことだった。 「…あのね…わ、私は……あ、貴方のことが好き!…なの…」 「…はい?」 いきなりのことだった。まさか愛の告白をされるとは思わなかった… 「…い、いや…でも…その…」 うん、この時の僕ほどキョドってた奴はいないな 「その…何?」 鈴仙が顔を近づけてきた。 「そ、その…まず聞きたいことは…なんで僕なの?鈴仙みたいに…か、可愛い女の子には…僕みたいな輩は…不釣合い…」 「そんなことない!私なんて可愛くなんか無いし、それに…貴方は…そんなに自分を卑下すること無いわ。少なくとも私にはカッコいい」 「う…でも…僕は…そんなに君が言うほどアレじゃないし…その…その…」 「…結局貴方は私と付き合うのが嫌なの?」 「い、嫌だなんてそんなことは!」 「じゃあ、なんで答えてくれないの!」 「そ、それはその…」 うん、この時の僕ほどヘタレな奴はいないな… すると鈴仙が「ああ!もうじれったい!」と言いながら僕を押し倒してマウントポジションを取った。 「う、うわ!ち、ちょっと鈴仙?」 仰向けに倒れた状態で鈴仙の顔を見ると…な、泣いている? 「どうしてハッキリしてくれないの!私貴方のそんなところが嫌いなの!いつもいつもその場の雰囲気に流されて!自分の意見を押し通したことなんて一回も無い!」 「鈴仙…」 「もっとハッキリしてよ!私だって…私だってそんな貴方だけど大好きだから勇気を出して告白したのに…やっぱり貴方は自分の気持ちを出せなくて… 私は…私は……」 「…ゴメン…ゴメンよ…鈴仙……僕は人間界にいたときもこんな感じだから何も出来ず、ただ意味の無い生活をしてたんだった…学生の時だって…好きな人はいたけれど…そのことを伝える勇気が僕には無くて…結局その人は僕の友人と付き合って…僕はそれを祝福してやることしか出来なかったんだ…自分の… 自分の気持ちを結局無視して…」 「○○さん…?」 「自分の気持ちは…ハッキリと伝えなくては相手には伝わらない…鈴仙、僕は…僕は今から君に僕のキモチをぶつけるよ!」 「○○さん…」 「鈴仙、僕は…僕は君のことが好きだ!僕と…僕と付き合ってください!」 「…○○さん…その想い、確かに受け取りました…よろしくお願いします!」 「鈴仙…ありがとう……」 僕らはそのまま抱き合い、そしてキスをした。 今まで僕が伝えられなかったこと…これからならそれも取り戻せそうな気がする… 実はてゐの子分の兎がその情事を覗いていて、永遠亭に帰ったらてゐの手荒な祝福を受けたのはまた別の話… 2スレ目 60( 52からの流れで) (結婚式場で白無垢の鈴仙を引きずって主人公に投げ与える輝夜) てるよ「た、種ぇ」 鈴仙「姫様、どうせよと?」 主人公「おそれながら鈴仙殿………… てるよ様はこの場にて、 鈴仙殿とそれがしに男女の契りを 結ばれるよう望まれておられるご様子」 鈴仙(男女の契り…) 主人公(ワクワクテカテカ) 鈴仙「…………」 主人公(わくわく) 鈴仙「…………」 主人公(わくわくハァハァ)
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コダマ名 HP 攻撃 防御 特攻 特防 速度 合計 属性1 属性2 攻撃属性 弱点 耐性 スキル1 スキル2 必要アイテム ちびれいせん 80 20 60 100 65 75 400 理 - 理岩鋼 虫霊闇 闘理 狂気を操る程度の能力 - 鈴仙カード A鈴仙 110 30 75 140 100 90 545 理 岩 理岩炎樹鋼 水樹地虫霊闇鋼 無炎毒風理 狂気を操る程度の能力 狂気の赤い瞳 力の霊珠 T鈴仙 105 40 80 125 105 90 545 岩 鋼 岩鋼理 闘地水 毒無風氷理虫岩霊神闇 狂気を操る程度の能力 狂気の赤い瞳 技の霊珠 S鈴仙 115 30 85 110 100 105 545 理 - 理炎岩鋼 虫霊闇 闘理 狂気を操る程度の能力 狂気の赤い瞳 疾風の霊珠 D鈴仙 130 30 90 110 105 80 545 岩 毒 岩毒理鋼 地水理鋼 毒無炎風虫 狂気を操る程度の能力 狂気の赤い瞳 守の霊珠 AD鈴仙 100 60 80 120 110 90 560 理 鋼 理鋼岩 炎地 毒理無樹氷風岩神鋼 狂気を操る程度の能力 狂気の赤い瞳 一夜の霊珠 ※太文字のみは禁呪、青文字は属性一致、赤文字は重複弱点、緑文字は重複耐性、灰色は無効、(括弧内)はスキル効果あり ちびれいせん A鈴仙 T鈴仙 S鈴仙 D鈴仙 AD鈴仙 スキル 1.狂気を操る程度の能力(Lv25習得) ターン終了時、10%の確率で相手を混乱させます。 2.狂気の赤い瞳(Lv50習得) 自分が状態異常になると、相手にも同じ状態異常を引き起こします。 スペル スペル名 属性 分類 威力 命中 消費 詳細 ちびれいせん A鈴仙 T鈴仙 S鈴仙 D鈴仙 ADレイセン マインドシェイカー 理 特殊 60 100 0 30%の確率で、相手を混乱させます。 初期 初期 初期 初期 - 初期 アイドリングウェーブ 理 特殊 80 100 0 30%の確率で、相手を混乱させます。 - - - - 初期 - インビジブルハーフムーン 岩 特殊 80 100 15 30%の確率で、自分の特攻が1段階上がります。 15 15 15 15 15 15 マインドベンディング 鋼 特殊 90 100 25 30%の確率で、相手の特防を1段階下げます。 20 20 20 20 20 20 マインドブローイング 理 特殊 90 100 25 30%の確率で、相手を混乱させます。 レンタル限定 30 30 - - 30 イリュージョンシーカー 理 特殊 100 100 20 30%の確率で、相手を混乱させます。 - - - 30 - - インビジブルフルムーン 岩 特殊 100 100 30 30%の確率で、相手の特防を1段階下げます。 - 35 60 - 30 60 ルナティックブラスト 岩 特殊 70 100 20 先攻で攻撃できます。 - - 35 - - - 瓦斯織物の玉 毒 特殊 100 100 15 相手を毒にします。 レンタル限定20 - - - 35 - ルナメガロポリス 鋼 物理 100 100 0 30%の確率で、自分の防御が1段階上がります。 - - - - - 35 ルナティックレッドアイズ 理 特殊 120 100 40 30%の確率で、相手を混乱させます。 - 40 - 35 - - フィールドウルトラレッド 理 変化 - - 20 5ターンの間、特殊攻撃のダメージを半減します。交代しても効果は継続します。 - - 40 - 40 - ディスカーダー 理 変化 - 100 10 相手のスペルを3個封じます。このスペルは属性の影響を受けません。 - - - 40 - - マインドエクスプロージョン 理 特殊 100 - 10 使用から2ターン後のターン冒頭に攻撃します。ダメージはその場にいるコダマのステータスで決定します。このスペルは属性、装備、スキルの影響を一切受けません。 - - - - - 40 クラウンヴィジョン 樹 特殊 90 100 20 30%の確率で、相手を混乱させます。 - 60 - - - - テレメスメリズム 闇 変化 - 75 15 相手を眠らせます。 - - - 60 60 - マインドスターマイン 炎 特殊 90 100 30 20%の確率で、相手を火傷させます。 - 禁呪 - 禁呪 - - ディモチヴェイション 理 変化 - 100 0 相手のスペルを2個封じます。このスペルは属性の影響を受けません。 - - 禁呪 - - - インフレアドムーン 理 変化 - - 20 先攻で使用します。使用時のVPにより、使用ターンのみ回避率が上昇します。(3/4以上:+1000、3/4未満:+2倍、1/2未満、+20) - - - - 禁呪 - ピーター・ザ・ラビット 鋼 特殊 100 100 40 相手の属性によりダメージが変化しません。 - - - - - 禁呪 カード効果 アイテム名 装備時効果 契約コダマ 入手(金額) 備考 鈴仙カード 特殊スペルのダメージを16%軽減し、特殊スペルを急所に当たらなくします。 ちびれいせん 永夜印の福袋美月堂(3,000,000) 初期
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鈴仙4 314 「あわてんぼうのサンタクロース、クリスマス前にやってきた~♪っと」 実際そんなサンタがいたら迷惑極まりないが、今回は俺がサンタだ。 そんなヘマはしない。 本日、十二月二十三日、クリスマスイブイブだ。 俺が居候させてもらっている永遠亭の面々には クリスマスと言う概念がないらしいが、今回は他の幻想郷の面々が クリスマスパーティを開くと言うことなので、今年から開かれるらしい。 もっとも、彼女たちのことだからただ騒げればいいだけなのかもしれないが。 「うむ、クリスマスツリーはこれで万全だ」 ちなみにここは紅魔館。 内装が和風の永遠亭では、それこそクリスマスを開くのには向くとはいえない。 むしろ、周囲に竹などあるから七夕のほうがムードが出るかもしれない。 うん、織姫と彦星のことについて語ったら、似合わないとか言われそうだけど、 やるんだったら、一応言っておこう。 きっとまたやることは酒盛りだろうけど。 「こっちはもう終わったわ」 同じように飾り付けをしていたメイド長の人が音もなく現れる。 「あぁ、こっちももう終わります」 大体、飾りつけも終わる。 これが終わったら、あとは帰るだけだ。 「ところであなた、クリスマスプレゼントは買ったの?」 「あー、いや、一応自分で作ったものを…」 そう答えると驚いたように彼女は目を丸くする。 普通に見れば俺自身、物を作るような人間には見えないだろう。 「作ったものって、もしかして置物かしら?」 その言葉に首を振る。 俺にとっては置物を作るほうが難題だ。 綺麗に陶器を作れるとは思えないし。 「や、ちょっとだけ服を…」 「服!?」 そのメイド長さんの驚きようは意外なんてものじゃなかった。 まるで、ありえないと言うように俺のほうを見る。 「はは、始めは誰もがそういう反応しますね。でも、最近の鈴仙やてゐの服とかは 俺が作ったものですよ?」 あの時、忘れもしない二ヶ月前、鈴仙とてゐの服を 俺の頭脳で何とか作り上げたものだ。 「あなた…何者よ?」 「…コスプレイヤーの知り合いに技術を伝授された奇妙な奴…でしょうか?」 「コス…?」 「あー、衣装とかそういうのを着たり作ったりする人です」 俺は専ら作るほうが専門だけど。 さすがに着るのはちょっと…勘弁してほしい。 「へぇ、じゃあ作るのは慣れてるのね?」 「えぇ、今回は一応普通の女性が着れる程度の服を作ったんですけど…」 「どうかしらね?」 考えてみれば体格差はかなりあったりする。 こっちの永琳さんと、ここのお嬢様とじゃ、かなり差があるんだよな…。 「ま、楽しみにしておくわ」 「プレゼント交換に当たったら、ですけどね」 交換会なんて結局の所、何十分の一の確立だし。 簡単に当たるとは思えないなぁ…。 …ここの館のお嬢様が運命でも操らない限りは。 いや、逆に運命を操られたらまず間違いなく当たるんだろうな。 やらないと思うけど。 そうこうしている内に、とっくに日が暮れて俺は帰るルートを辿っていた。 プレゼント交換用の服は完成しているのだが、本命に渡す服…というか衣装は まだ完成していない。 「鈴仙…気に入ってくれるといいんだけど…」 そう、俺の本命は鈴仙だ。 言うなれば一目惚れ。 彼女と出会ってから、割と人生が変わった気がする。 「問題は…補修が大変なんだよな。あの衣装」 生地自体が、香霖堂にあったから良いにしても もしかしたら、二度と作れないかもしれない。 「ま、何とかなるか」 そもそも、この衣装の存在自体も言うなればネタに近い。 ここから回想に入ってみるとしよう。 これが俺が衣装を作るまでの過程である。 『ねぇ、この箱何?』 俺の荷物を整理していた鈴仙が、それを持ってきた。 『あー、それアニメDVDの箱…そっか、服作る資料で持ってたんだったなぁ…』 『え?この可愛い服作るの?』 やはりこの時も鈴仙に驚かれた。 可愛いかどうかは置いといて、 『まぁ…一応は作る予定だったんだけど…着る人がなぁ』 ここに来てから、作るつもりなんて欠片もなくなった。 『じゃあ、作ったら私が着ようか?』 俺の心臓が飛び跳ねました。 萌えとか胸キュンなんてチャチなもんじゃ断じてねえ。 もっと恐ろしい、彼女の片鱗を味わったぜ… 『どうかした?』 『あ、いや、まぁ作る予定は未定って事で…』 こうして、俺はクリスマスまでに彼女の服を作ることを決意したのである。 それは(ピー)月だったんだが… まぁ、そんなこんなで四苦八苦しながら、俺はクリスマスの当日を迎えてしまったわけだ。 だが、最高に「ハイ!」ってやつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ! 「…何でそんなに壊れ――はしゃいでるの?」 いつの間にか寄っていた鈴仙にジト目で見られていた。 まぁ、向かう途中の森の中で某吸血鬼のように高笑いをしてれば、普通引く。 誰だってそーする、俺もそーする。 「いや、こっちに来てからのクリスマスだし、それなりに楽しみなんだ」 「…あなたって、楽しむことを考えるとあんな高笑いをするの?」 「…普通はしないけどな」 そんな他愛のない会話をしながら、俺と鈴仙は紅魔館までの道を辿った。 一応両方のプレゼントをスタンバイしてある。 一つは交換会に提出するプレゼント、もう一つは隣にいる彼女に渡すものだ。 攻守において完璧だ! …守は置いといて。 「ところで、鈴仙は何を用意したんだ?」 「ん、私は――」 そこで鈴仙は言葉を切って 「内緒」 と舌を出していった。 あぁ、もう可愛いなこんちくしょう 「…あなたは服を用意したんでしょう?」 「まぁ…普通の人が着れるサイズを…」 基準にしたのは適当だけど…。 むしろ、鈴仙の衣装を作るので必死だったので、こっちのほうは手抜きなのは内緒だ。 二着作ったので、出来ればそれで勘弁してほしい。 普通の体格サイズと幼女体格サイズ。 クリスマス会が始まり、何時間も経過した。 そんなこんなで、ドンチャン騒ぎだ。 進行が適当だからこそ、騒ぐときに騒ぐ、それが一番だ。 「さ、そろそろプレゼント交換でもしましょうか」 と、人形遣いの鶴の一声で、ようやく、プレゼント交換までに至った。 「…さーて、何が当たるのか…」 出来れば俺の提出したプレゼントは、大きい子と小さい子がいる場所に行くことを祈ろう。 「十三番はどれ?」 吸血鬼のお嬢様が番号を呟きながら選ぶ。 こういうとき、自分の提出したものが自分の所に帰ってきてしまうと悲惨でしかない。 俺の番号は十六番、俺のプレゼントは十九番だ。 「えっと、十三番っとは」 そうして探していると、やたらと軽いプレゼントが当たった。 いや、袋は軽いのだが中身がちょっと重い。 鉛とか、そういうものが入っているようだ。 「あぁ、私のね」 嫌な予感がした。 「…永琳さんの?」 ごめんなさい、何となく中身が分かってしまいました。 「薬…ですか?」 「そう、滋養強壮剤」 何が目的で仕込んだんですか、あなたは? つーか、こんなの貰っても普通は嬉しくない。 「不満?」 「いや、貰えるものは貰いますが…」 「ふふ、じゃあ、帰ったら私の部屋に――」 「師匠!」 顔を真っ赤にした鈴仙が来ていた。 「あらあら、妬けるわね」 この人の本気がどこまでなのか分からない気がした。 「うぁ、藁人形だ!アリスだな?これ入れたの!」 「誰よ?お守りなんて入れたの。巫女に送りつけるなんていい度胸じゃない」 「って、私ナイフ貰ってもしょうがないわよー!お酒ーお酒ー!」 「…本は嬉しいんだけど…男性の写真集…誰?」 「お肉ー」 他の人達はそれはそれで、楽しんでいるらしい。 「あー、服だー!藍さまーお洋服ー!」 どうやら思惑――あった訳じゃないが、どうやら希望は叶ったらしい。 八雲紫の式とその式ならば、ちょうど服もぴったり合う…か分からないけど 多分大丈夫だろう。 「なぁ鈴仙、ちょっと外に出ないか?」 宴もそこそこ落ち着いた所で、目的の彼女を呼び出す。 きっと最後のほうで何かあるのだろう、吸血鬼のお嬢様が含んだ笑いをしていた。 それも考えながら、俺は彼女を誘う。 「ん、まぁいいけど」 「決まりだ。じゃ、行こうか」 彼女の手を引いて、外に出る。 冬だからか、外に出ると冷気が俺たちを包み込んだ。 「ほら、大丈夫?寒くない?」 鈴仙が俺のほうを心配そうに見上げた。 そう言いながら、見た感じ彼女のほうが寒そうに見える。 「…大丈夫。だけどお前の方が大丈夫か?」 「うん、私は大丈夫」 そいつは重畳だ。 こう寒いと、意識がなくなることはない。 眠くなる可能性はあるけど。 「ほら、プレゼント」 「…え?」 紙袋を受け取った彼女は目を丸くしていた。 うむ、予想通りの反応だ。それがおかしい。 「…え、えと、これは?」 「クリスマスプレゼント。 …まぁ、本来はサンタクロースが渡すものだけど 今回は俺で勘弁してくれ」 「ん…うん!」 まぁ、彼女が喜んでくれたならこれでよし。 「…別に大事にしなくていいから、一回くらいは着てもらいたいな」 「えぇ、だってこんな素敵なら、一回は着てみたいしね」 それだけ聞けば十分だ。 「あ…私、プレゼント返せない」 「大丈夫、大丈夫。俺のプレゼントを貰ってくれるだけで」 単なる自己満足に過ぎないが、それでも俺は十分だ。 彼女に贈り物をしたって言う事実だけで… 蛇足―― 翌日、十二月二十五日。言うなればこっちが本当のクリスマスである。 昨日は結局、外にいたせいか軽く寒気がした。 「寒い…」 良い子の枕元にはサンタクロースがプレゼントはあるらしいが この年でそんなものを貰っても―― 「お、おはよう」 目を覚ますと、枕元には俺の作った衣装を着込んだ鈴仙が座っていた。 …… ゴシゴシ …… ゴシゴシ ……!? 「魔法少女リリカルれーせん」 思わず呟いてしまった。 ここまで可愛くなると、作った甲斐があるというものだ。 「え?」 「…あ、いや、なんでもない…着心地は?」 「うん…ピッタリだけど…ちょっとだけ、胸のほうがキツいかな?」 確かに、その辺のサイズは分からなかったので、ごまかし程度に作ってしまったが。 よく見ると、ちょっとだけ胸が強調されてるように見える。 そこだけ見ないように、顔を背ける。 今絶対に鏡を見れない。 「着てくれたのは嬉しいんだ。っていうか、すっげえ嬉しい」 「ど、どういたしまして」 微かながら、彼女の顔は赤い。 ぎゅっ… 「あーもうかわいいな鈴仙は!」 「う、うぅ…」 微妙に鈴仙にとっては羞恥プレイかもしれない。 でも、俺はこんなに幸せだった。 こんなクリスマスはありかもしれない。 サンタに感謝…ってね。 後書き ===衣装の裏=== オレは……生き返ったんだ 故郷… プロポーズスレでみんなと出会った時…門板のスレを裏切った時…にな… ゆっくりと死んでいくだけだった…オレの心は生き返ったんだ…みんなのおかげでな……… 幸福というのはこういうことだ………… これでいい 気にするな…………… ===衣装の裏ここまで=== とりあえず、いつものパターンで完成させました。 補足 ※鈴仙の衣装というのは某魔法少女をイメージしたものである ※鈴仙のリリカル姿を描いてみたは良いが、あまりにも適当すぎたのでボツった ※コスプレイヤー姉に衣装を作った…。そういう時期も私にはありました… 4スレ目 149 『鈴仙!俺を狂わせてくれぇっ!!!』 正気でも狂気でも、幸せであればいいじゃない。 みんなまったり行こうよ。 避難所 52 避難所 33を受け ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「○○さん、また酒にやられたんですか?」 鈴仙が心配そうに覗きこむ。 「どうやらそうらしい。おかしいよなぁ…今日はあまり飲んでないのに…」 そう答えると、鈴仙は少し考えた後…… 「そうですか…じゃあここでは満足した治療も出来ませんので永遠亭に行きましょう」 と、言って○○の手をとった。 「え?いや、ちょっと、そんないいって」 「いいえ、悪化したらどうするんですか。強制ですよ」 そう言って鈴仙は○○の目をじっと見た。 「え、ちょっ!顔近いって!!、ってその妙に紅い目は何…を……」 鈴仙の目をしっかりと見つめてしまった○○、あえなくダウン。 「ふふふ……」 -永遠亭 鈴仙の自室- 「……うぅ~……ってハッ!!」 ○○が目を覚ますとそこは永遠亭っぽいところだったが、まだ一度も入ったこと無いところだった。 「ココは……?」 「あ、気がつきましたか」 不意に声が聞こえ、その主のほうを見ると…… 「おわぁっ!れ、鈴仙……なんで一緒に寝てるんだよ!?」 鈴仙が○○の横で寝ていた。 「あ、すいません……○○さんの治療をしていたら眠くなってしまって……その……気を害したのならばごめんなさい……」 そう言うと鈴仙はしゅんとしてしまった。 「いや!そんな気を害したとかそう言うんじゃなくて……む、むしろ暖かくて良く眠れた……って何を言ってるんだ僕はっ!!」 「え……?」 あわてて否定したおかげで余計なことまで言ってしまう。 でも鈴仙は何故か赤面して黙ってしまった。 つられて○○も黙ってしまう。 ………… 半刻ほどして鈴仙が口を開いた。 「あ、あの○○さん……今日は……その……もう少し……このままでもいいですか?」 「え?……あ、ああ。いいよ……」 「本当ですか?ありがとうございます」 「いや、別にいいよ。僕も……まぁ、うん……」 ……結局○○は永遠亭で一夜を過ごすこととなり、翌日鬼と天狗に折檻をもらったとか…… な ん だ こ り ゃ 全然文としてまとまってない。 文に文章のまとめ方を習ってきます…… [森]λ… 4スレ目 700 「一人で過去を背負うことなんて無い。俺が死ぬまで、隣で支えるから。 ・・・迷惑なことなんてあるか、断ったって傍にいてやるさ。」→鈴仙 うどんげは好きな相手に告白されても、迷惑がかかるからって涙ながらに断りそうなイメージを幻視した。 よって2行目を追加したした次第。 5スレ目 161 「なあ鈴仙」 「なあに?」 「押し倒していいか?」 「………ごめん、今なんて?」 「いや、『押し倒していいか?』って言ったんだが」 「……………」 「………駄目か?」 「…………だっ…ななな何、何言ってるのよ貴方って人はぁー!!」 パァーン 「ふぐぉッ!」 あ~っと! 鈴仙くんの平手で ○○くん ふっとばされた~! そのまま鈴仙は文字通り脱兎の如く走り去ってしまった。 「くっ…駄目だったか……」 「あらあらウドンゲもウブねぇ。 まぁこれだから貴方たちを見てるのは楽しくて堪らないのだけど。」 「見てないで助けてください永琳さん……姫様もいらっしゃるんでしょう?」 「あら、バレてたの。流石ねぇ」 「もういい加減慣れました。痛つつ……」 「それにしても貴方にしては随分積極的だったじゃない。何かあったの?」 「いや、なんだかそういうのが流行ってるらしくて……」 「ふぅん。外では変なことが流行ってるのねぇ。」 一方、うどんげはというと……… 勢いで走り去ったものの何処へ行ったらいいかわからず、永遠亭に戻ってきていた。 しかし帰って来たはよかったが、顔を合わせづらかったので庭でうろついているところだった。 「はぁ…はぁ…まったくもう、あの人はいきなりなんてことを……」 ふと、○○の行ったことが反芻された。 「でも………彼にだったら………いい、かも………」 「ふーん、成程ねー」 「ッッッ!!! て、てゐ!!!」 突如、竹林の影から不敵な笑みとともに白兎が現れた。 「い、今のはちが…そういう意味じゃなくって!」 「ふふーん、意外と大胆なんだねぇ。みんな聞いて聞いてー!鈴仙ちゃんがー」 「うう、やめてー。」 時既に遅し、てゐに知れた時点で、その話は永遠亭の全員に知られたと同じことを意味するのだった。 その後○○と鈴仙の間には気まずい空気が流れていたが、 その他大勢はいつ押し倒すのかと期待に胸を膨らませていた。 ちなみに鈴仙自身もちょっと期待をしていたのは秘密だ。 すまん、今まで書いたこと無いのに勢いだけでやってしまった。 しかもイチャイチャできてない上に微妙に流行が終わってる気がする・・・ 5スレ目 199 遅れたけど、つまりこういうことですか? 「鈴仙。嬉しい話があるわ」 いつものように鈴仙と採取してきた薬草の仕分けをしていると、八意永琳大先生がにこやかな顔で入ってきた。 イナバ達はそこらではしゃぎ回り、輝夜様はたまたま野草集めにやって来た妹紅と鉢合わせ、殺し合いの真っ最中。 至って平和な永楽亭の昼下がりである。…一区画を除いて。 「え、なんですか師匠? 良い話というのは」 「貴女、胸が大きくなっているみたいよ」 「へぇ、そうなんですか……って、はいぃぃ!?」 全く想像してなかった話に顔を赤くする鈴仙と、あまりにも脈絡の無い話に思わず頭を柱に打ち付ける俺。 「大体従来比にして…2、3センチは増量ってところかしら」 「いや、その、嬉しい…のは嬉しいんですけど、…師匠なんで知ってるんですか?」 「鈴仙、乙女には誰にも教えたくない秘密が十や二十くらいはあるものなのよ(はぁと」 「それ、多すぎやしませんか永琳さん…?」 こちらにウインクする永琳先生。…ツッコミ所満載だが、敢えて黙っておくのが身の為である。 「因みに、今の貴女のトップは8じゅ」 「わーっ! わあぁぁーッッ!!」 「そうねぇ…毎晩のように彼と励んでいたらそうなるのも当z」 「わぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」 必死に言葉を遮る鈴仙。これも弄られ役としての宿命か。というか師匠、見てるんですか? …なんか関係を知られているということが意識されて、顔が赤くなる。 相変わらず庭からはイナバ達の楽しげな声が響き、雄叫びや爆音が聞こえる。 「カァァァァァァァァァァグヤァァァァアァァァァァァッッッッ!!!!!!!!」 「モオォォォォォォォォォォコオォォォォォォォォォォッッッッ!!!!!!!!」 ……庭の一角は無事だろうか? クレーターとか出来てないだろうか? しかし凄い叫び声である。魂に火をつけろ? 「最近鈴仙ったら身体検査もさせてくれないんだから…久しぶりに驚いちゃったわ」 「師匠…あれは普通『身体検査』と呼称される行為とは違うと思います…」 どうやら、俺の想像を超える「アレ」な行為が日夜繰り返されていたらしいようなそうでないような。 まぁ今はその「身体検査」をするのは俺の役割だけどなうはははは… …と師匠に言ったら、一抱えもある座薬を捻じ込まれたのは苦い記憶だ。 なんだか危険な世界に目覚めてしまいそうです、あぁん。 …外からはイナバ達の声がしなくなってきた。どうやら総員退避命令が下ったようである。 「アァァァァァカシックゥゥゥ・バ○タァァァァァッッ!!」 「ムウゥンヒィィリング、エ○カレーショォォォンッッ!!」 …段々両者が危険な世界に転がり落ちて行っているようだが、毎度の事なので黙っておく。 結局薬草の選別をしたり、妹紅を連れ帰りにやって来たが諦めた慧音と共にお茶を飲んだりしてその日は過ごした。 夜ですよ …俺と鈴仙は、一つ同じ布団の中で横になっている。 彼女の長い髪が、俺に絡まっている。くすぐったくて、何となく心地よい。 外には蒼い月。月光が優しく降り注ぐ、静かな夜である。 「科学忍法・火○鳥!!」 「マ○クロウェーブ…来るッ!!」 …前言撤回。今もなお激しい闘いが繰り広げられていた。 もはやネタの披露合戦という様相を示してきているが。というか姫様、それは幻想郷的にOKなの? 月に関係あるとはいえ… 色々考えることはあるが務めて頭の中から消し去るよう努力する。つーきーの光にみーちびかーれー、なんーどもー、殺しーあうー。 「……ねぇ?」 …俺の腕に頭を乗せていた鈴仙が、こちらに尋ねてくる。 「今日も…するの?」 真剣な目で、そう問う。 返事の代わりに、鈴仙の顔をこちらに近付け、唇を奪う。 「ん……んっ……」 そのまま腰を引き寄せ、手の平を(続きを読むには泳ぐキンギョでやみなべパーティー。飛んでもNothing~) 5スレ目 368 「えーりんって、すげー美人だよな」 「はぁ? いきなり何言い出すのよ」 「ムッチムチでボインボイーンだし。おまえと正反対だな。それでも弟子なのか?」 「失礼ねッ! わ、私もその内、ぼ……ぼいんぼいーんになるわよ!」 薄い胸を張って、うどんげは声を張り上げた。 「で、その内って、いつ?」 「その……いちねんご?」 「第二次成長期終わってんのに育つわけないだろ馬鹿。一生その洗濯板を抱いてろ」 「…………」 恐ろしく狂った目つきをしたうどんげに頬をつねられる。凄まじい力だ。たぶん千切れる。 「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくてですね」 必死の命乞いと土下座の甲斐あって解放してもらってから、俺はうどんげに言った。 「胸を揉んでもらえば育つって言うだろ? 新聞でも話題になってたくらいだし、大丈夫だって」 「も、揉む!?」 ちなみに、話題のその人物はイニシャルA・M。いぢられキャラばんざい!! 「なんだったら俺が揉もうか?」 「揉むなッ!」 「またまたそんなこと言って、よーしパパ押し倒しちゃうぞー」 「揉むなッ!触るなッ!押し倒すなッ!!」 「と、怒りながらも内心ドキドキなうどんげでした」 「か、勝手なモノローグ語るなッ!!」 ちなみに、本当は内心ドキドキでちょっぴり期待してたのはここだけの話。 5スレ目 622-623 「最近、胸が苦しいんですよ」 薬品棚の整理をする俺と鈴仙。 ここは永遠亭。 いつの間にか幻想郷に入り込んでしまった俺を、保護してくれた所。 カバンの中に化学Ⅰ・Ⅱなんて物が入っていたせいで、 俺は今、ここで八意永琳という人の、助手No.2として働いている。 「太ったんじゃないか?」 「ああっ、ひどいですね。 太ったんだったら、絶対幸せ太りですから、責任とって下さいよ?」 「もちろん。地獄の底まで責任とってやるよ」 そしてこの娘が鈴仙。 助手No.1にして、俺の恋人。 俺としても、まさか幻想郷で恋人ができるとは思っていなかったけれど、 この娘の熱烈なアタックに、めでたく恋人になった。 グラッ 突如、大地が揺れた。 地震だ! そう思う間もなく、俺と鈴仙は、薬品棚の下敷きになっていた。 う……。 服に付いた薬品の冷たさで目が覚める。 どのくらい経ったのか。 そうだ、俺たちは地震で下敷きになって……。 はっ! 「鈴仙? れいせーん!?」 「こ、ここです……」 見れば。 向かいの薬品棚に、下敷きになっている鈴仙が見えた。 「待ってろ! 今助けるから!」 薬品棚から這い出す。 俺は幸い、怪我はないようだ。 すぐに鈴仙に駆け寄り、薬品棚を押しのけて抱き起こす。 「大丈夫か?」 「大丈夫、と言いたい所ですが……。 少し、右の足首をやってしまったようです。 部屋まで、連れて行っていただけませんか?」 「よし、このまま連れて行くから」 その状態のまま、お姫様抱っこのように抱き上げる。 鈴仙は痛みのせいなのか、はたまたこの状態が恥ずかしいのか、 顔を赤くしながら、俺の首に手を回す。 「よし、行くぞ!」 そういった瞬間。 プツッ、と ブレザーのボタンが、弾け飛んだ。 「んっっ!」 右手で、恥ずかしそうに胸を押さえる鈴仙。 しかし、片手で押さえきれるはずもなく。 指の隙間から、慎ましやかな胸の谷間が顔を出している。 それでも、左手はそのままなのは、 俺を気遣っているのか、自分を重く見せたくないのか。 「は、早く行って下さい!」 「イエス、サー!」 そして。 ボタンを撒き散らしながら。 俺は、鈴仙の部屋までひた走った。 鈴仙の部屋。 そこは、惨状だった。 ぬいぐるみや薬品が辺りに散乱し、そこに本が折り重なって足の踏み場もない。 それは、もちろんベッドも例外ではなく。 「これは……、ひどいな」 「そうですね……。こんなときに限って師匠もてゐも姫様もいませんし、 どうしましょう……?」 そう。 俺たちが恋人になってから、 やたらと構ってくるのがここの人たち。 今日も、 「2人っきりにしてあげるわ」 と言って、イナバたちを連れてみんなでピクニックへ行ってしまったのだ。 「とりあえず、俺の部屋に行こう。 まだ俺はここに来て日が浅いから、物がほとんどない。 ベッドも、無事なはずだ」 そう言って、鈴仙を抱きかかえたまま、俺に与えられた部屋へと向かう。 思ったとおり、俺の部屋は大丈夫だった。 ベッド以外に物がほとんどないのは考え物だが。 「ほれ、鈴仙、大丈夫か」 「はい……」 鈴仙をベッドに寝かせる。 そして、水を汲んできて、濡らしたタオルを足首に巻いた。 少しは冷えるはずだ。 「すみません……」 いつにも増して、弱々しい鈴仙。 「気にするな。お互い様だ。 俺たちは、恋人だろう?」 「ありがとう、ございます……。 あの、手を握っていて、もらえませんか? あなたに触れていると、凄く安心するので……」 「お安い御用だ」 鈴仙の手を握る。 その鈴仙は、笑顔を浮かべると、 ほどなくして、規則正しい寝息を立てはじめた。 「寝られるのなら、痛みはひどくないんだな。 早く元気になれよ、鈴仙」 頭を撫でる。 立ち上がって、さっきの薬品室でも整理してこようと思った時、 クラッ 眩暈がした。 「……え?」 床がスローモーに迫ってくる。 そう言えば、動悸も激しい。 もしかしたら、さっき薬品をかぶった時に、風邪でもひいたか? そう思いつつも、 俺の頭が、大地に着くと同時に、 意識も、闇へと沈んだ。 「う……」 そう言えば、今日は気絶してばかりだな。 そう思いながら目を開くと、 「良かった……。 本当に、良かったです……っ」 眼の前に、泣きじゃくる鈴仙の顔があった。 そう言えば、いつの間にか自分のベッドに寝ている。 「あー、鈴仙?」 「3日間――、3日間も意識不明だったんですよ。 あんまり心配させないで下さい!」 「俺、どうしたんだ?」 「あなたのかぶった薬品、致死性の薬品だったんですよ! 皮膚からだから、死ぬことはないだろうと師匠は言ってましたけど、 もう、心配で心配で……。 解毒薬を作るには時間もかかりますし、 その間に何か起こらないか、気が気じゃなかったんですから!」 「悪かった。 それにお前もネグリジェだし、治りきってないのに看病してくれたんだな」 「え、べ、別にこれは……」 腕を振る鈴仙。 落ち着いて観察してみると、鈴仙の服はネグリジェにカーディガンを羽織っただけの簡単なもの。 ただ、ネグリジェはシルク製の物凄く高そうなものだが。 そこに現れる永琳。 手にはお盆を持ち、その上にはお粥と薬が何錠か乗っているのが見てとれる。 「お邪魔だったかしら」 「いえ、大丈夫ですよ」 「ごめんなさいね。地震が起きるなんて思わなかったから」 「まあ、俺の体も今のところ大丈夫そうですし、いいですよ」 「ふふふ、それにしてもうどんげったら凄かったわー」 テーブルにお盆を置くと、悪戯っぽい口調になる永琳。 止めようとする鈴仙。 だが、永琳の口は止まらない。 「うどんげったら、あなたが致死性の薬品をかぶったのを聞いて、 『○○、死にませんよね! もし死んだら、師匠を刺して私も死にますから!』 って。凄いでしょう?」 「うう……師匠……ごめんなさい」 「愛されてるわね。嫉妬しちゃうわ」 「ははは。自慢の恋人ですから」 「あら、妬けちゃうわね。では、邪魔者はこの辺で退散しようかしら」 音もなく部屋を出て行く永琳。 あとには、ばつが悪そうな鈴仙。 「嫌な女だと思ったでしょう?」 「いや、嬉しいよ。そこまで思ってくれているんだから」 「本当?」 俺の顔を覗き込む鈴仙。 「ああ、本当だ。 それより、腹が減った。そのお粥を食べさせてくれないか?」 「はい!」 途端に元気になる。 そして。 「はい、あーん」 「いや、自分で食べれるって」 「『食べさせてくれないか』って言いましたよね。 男らしくないですよ」 「いや、あれはそういう意味じゃ――」 「あーん」 どうやらやめる気はないらしい。 覚悟を決めて、俺も口を開く。 「あーん。 もぐもぐ。うん、旨いぞ」 「では、もう一口。 あーん」 「あーん」 こうして、鈴仙がお粥がなくなるまで食べさせてもらった。 だが、錠剤まで飲み終わっても、鈴仙が部屋を出て行く気配がない。 それどころか、衣擦れの音とともに、カーディガンを脱ぎ始めた。 「鈴仙?」 「あなたの症状を早く治すには、添い寝が良いと師匠が言っていたんです。 本当は全裸のほうが効果あると言っていたんですが、 それはさすがに恥ずかしいので、ネグリジェで我慢してください」 「ちょ、ちょっと待て! おおおお前、いつもパジャマ派だろう!?」 指摘箇所が違うだろう。 落ち着け、俺。 「ええ、でも薄絹の方が効果があると師匠が――」 そう言いながら、一歩一歩ベッドに近づく鈴仙。 胸がふるふると揺れているのが、ここからでもわかる。 そしてその頬は、恥ずかしそうに朱に染まっている。 「いやいやいやいや、それ絶対騙されてるから。 っていうか胸がなんでそんなに揺れてんねん」 やばい。 相当俺もテンパってきている。 「胸、大きくなったんです」 「え?」 いきなりの方向転換についていけない俺。 「苦しくなったの、大きくなってたんです。 胸に合うブラジャーがないのでノーブラですけど、失望しないで下さいね」 そう言いながら、俺のベッドに入ってくる鈴仙。 「それから。 騙されていても良いんです」 「は?」 「騙されているから、こうして、あなたと一緒にいられるんですから。 私と一緒は、いや、ですか?」 そんなことを言われて。 いやだと言える恋人がいるはずもなく。 「そうだな。2人で騙されようか」 「ええ。なるべく長く騙されましょう」 「それもなんだか変だけどな」 「ふふふ、そうですね」 そして。 俺と鈴仙は。 1つの枕で抱き合いながら眠りについた。 後日、てゐの写真により、75日ほどからかわれ続けたけど。 5スレ目 940 この前製薬の材料集めだとかで困ってたうどんげ助けたら、 お礼に永遠邸ですき焼きやるんでどう? ってうどんげに誘われたんだ。 うどんげの手料理を食せるとはまさに至福。 これはアレですね? そろそろ俺の想いも成就してOKってことですよね期待しますよ!? 「おじゃましまーす」 「いらっしゃーい、遅かったですね、もう大体できてますよ」 部屋の真ん中に鎮座する鉄板の中にはくつくつにゃーにゃーと色とりどりの食材が踊っている。 おおこれは美味そう……って、なんか赤いの多いんですけど。 「……すき焼きににんじん入れるか?」 「へ?入れないの? うちではたいてい入ってるけど?」 「(そりゃウサギのためだろ、うどんげはウサギなのかよくわかんないけど) うちは入れないなぁ。肉、ネギ、白菜、焼き豆腐、しらたきぐらいで。 あとはラストにうどん食うぐらいか」 ボッ 「え……わ、わたしっ!?」 「え、いや、俺そんなこと言ってな 「え、えとえと、悪くないですけどもうちょっと雰囲気良い場所でって私は何を言って ぷすっ ? 今の何の音? なんか首筋が チク ッ て し た け 「あらあら、私の可愛いオモchじゃなかった弟子に手を出そうなんて1200年くらい早いわ」 っていう声と共にブラックアウトせめてうどんげの手料理食わせてほしかった △ (・∀・) ってとこまで幻視した (νν …………アレ? 幻視だったんだよねヤゴコロ先生? )ノ 5スレ目 945 自分はこういうのを幻視した。 あー、でも文章長いし、幻視力足んないな……。 口調が変なのは、酔っているからということでご勘弁。 ちなみにうちはにんじん時々入ってました。 ====== 永遠亭で留守番を頼まれた。 なんでも、うどんげ以外は泊まりでピクニックに行くらしい。 家事を2人で分担して1日を過ごし、夕食の時間。 「夕食できたわよー」 食堂の方から声がする。 「おおっ、今日はすき焼きか」 食堂へと行くと。 テーブルの上に鎮座ましましているのは、紛れもなき鉄鍋。 肉の焼ける香ばしい匂いが伝わってくる。 「それだけじゃないのよ、じゃーん!」 そう言ってうどんげが取り出したのは、 「ああっ、それは月世界!?」 「そ。師匠の秘蔵のお酒。しかも純米大吟醸古酒千年物。 今日は飲むわよー!」 「って、良いのか?」 「いいのよ。大体、私を置いてくなんて、やってらんないわー!」 俺が横に座ると、 コップで酒をくいくい飲みだすうどんげ。 俺もご相伴に預かりつつ、すき焼きに目を移すが。 「にんじん多いな、おい」 「あ、ごめん。 ついつい兎用に作っちゃった、えへ」 すでに相当顔が赤いうどんげ。 これは、かなり酔ってるな。 「まあ、いいけど」 桜形に切られたにんじんを1つつまみ、口に運ぶ。 うん、柔らかく煮えてる。 「あー、にんじんは私が食べるのー!」 俺がにんじんを口にしたことに、不満を表される。 いや、そんなこと言われても。 「あー、今から食べればいいのかー」 「え?」 そう言うと、俺の唇に唇を合わせて。 舌を俺の口に割り入れて。 にんじんを奪い去るうどんげ。 「んー、おいしー」 「お、おい」 「このほうがいつも食べるよりおいしーなー。 ねえ、今から全部口移しで食べさせてー」 とろんとした目でおねだりがくる。 やばい。 ちょっと幼児退行気味のうどんげ、可愛い。 ほんのりと赤くなった肌が、それに拍車をかけている。 「なら、それに見合うだけのことをうどんげがしてくれたらいいぜ」 こんな言葉が出てくる辺り、俺も相当酔ってる。 俺も強い方じゃないもんな。 そんな俺を、うどんげは見つめると、 「うーん、わかったわ……。 あーん、で食べさせてあげるのと、 口移しで食べさせてあげるのと、 私ごと食べるの、どれがいい?」 爆弾発言をかましてくれました。 「え、いや、あの」 「んー、でも、私を食べるときは私だけを見てて欲しいし、 口移しでいいわよねー」 そう言うと、焼き豆腐を咥えて、俺にキスをせがむうどんげ。 そうして、2人で食べさせあったすき焼きは、 いつもの3倍の時間がかかったけど、 大変おいしゅうございました。 そして、夜も更けて。 鍋の中も総ざらいしたところ。 「ねえ、このおつゆどうしてる?」 「うちか? 大体うどん食べてるな」 「ええっ、私食べられちゃうの!」 「違うわー!」 おでこに、こつん。 悪戯がばれたような笑顔のうどんげ。 2人とも、酔いはまだ醒めない。 「えへへ~」 「ここはどうしてるんだ?」 「兎たちはそんなに食べられないから、いつもこれで終わり」 「そっか。勿体ないな」 「でも、そっか、うどんなのね。 ちょっと持ってくるね」 そう言って、席を立つうどんげ。 だが。 まだ酔いが醒めてない状態で動き出せば。 「きゃっ」 ガタッ 案の定。 うどんげはテーブルの足につまづき、転んでしまった。 しかも、その衝撃で鍋が大きく揺れ、汁が飛び出してしまっている。 「大丈夫か!」 「うん、大丈夫。でも――」 俺に抱きかかえられたまま、テーブルの上を見やるうどんげ。 「おつゆ、こぼれちゃった……」 確かに、つゆがこぼれて、うどんげといわず、俺といわず、あちこちに飛び散っている。 「ごめんなさい……」 しゅん、と俯かれる。 そんなうどんげが可愛くて、 「こうすれば、大丈夫だ」 うどんげの首筋にかかったつゆを一舐め。 「ひゃっ! ……え?」 「うどんは食べられなかったから、代わりにうどんげをいただくとするさ」 「やっぱり私、食べられちゃうんですねー。 でも、1人だけ食べるのはずるいですから、 私もあなたをいただきますよー」 そう言って、俺の頬をすっと舌が撫でる。 その夜は、2人でずっとあちこち舐めあっていたのだった。 次の日、永琳に酒を飲んだのがばれて、しこたま怒られたけど。 5スレ目 946 945これしか思いつかなかった 永遠亭で留守番を頼まれた。 なんでも、うどんげ以外は泊まりでピクニックに行くらしい。 家事を2人で分担して1日を過ごし、夕食の時間。 「夕食できたわよー」 食堂の方から声がする。 「おおっ、今日はすき焼きか」 食堂へと行くと。 テーブルの上に鎮座ましましているのは、紛れもなき鉄鍋。 肉の焼ける香ばしい匂いが伝わってくる。 「それだけじゃないのよ、じゃーん!」 そう言ってうどんげが取り出したのは、 「ああっ、それは月世界!?」 「そ。師匠の秘蔵のお酒。しかも純米大吟醸古酒千年物。 今日は飲むわよー!」 「って、良いのか?」 「いいのよ。大体、私を置いてくなんて、やってらんないわー!」 俺が横に座ると、 コップで酒をくいくい飲みだすうどんげ。 俺もご相伴に預かりつつ、すき焼きに目を移すが。 「にんじん多いな、おい」 「あ、ごめん。 ついつい兎用に作っちゃった、えへ」 「箸置けぇーー!」 「え?え?」 「加藤家、家訓!!」 以下略 6スレ目 255 「はぁはぁはぁ……」 俺は逃げている。 理由は簡単、妖怪に追われている。 遊んでいた因幡の子達がいた。 そしてその子達を狙う妖怪がいたので、少し挑発して俺を追うように仕向けたから。 まあ、その隙に因幡の子達は逃げてくれたので良しとしよう。 「しまった……がぁ!」 走っている途中、石に躓き転けてしまった。 そして後ろから妖怪にその大きな爪で切られる。 かなり深い傷みたいだ。 血が面白いように流れている。 これはやばいかなぁ。などと思う。 まあ、最後に因幡の子達を助けられたから良いか…… そう思った時だった…… 「大丈夫ですか! ○○さん!!」 「れい、せん?」 彼女が来てくれたのは。 彼女が来てからは、あっと言う間だった。 俺が必死に逃げていた相手がものの数秒で倒される。 なんか複雑だ…… 「○○さん!! 大丈夫ですか!?」 鈴仙が俺に呼びかける…… 「あーなんかもう無理っぽい」 背中からかなりの量の血が出ている。 それでも俺は答える。 「そんな……なら今すぐ治療しますから頑張ってください!」 彼女は泣きそうな顔で言う。 「たぶん、無駄だと思うよ」 俺はそう言う。 彼女も解っているはずだ、俺がもう助からない事は…… 彼女の師匠の永琳さんが居れば話は別だと思うが居なものはしょうがない。 「最後だと思うから言っておくよ……」 「最後なんて言わないでください!」 彼女が俺の言葉に反応する。 でも、それを無視して俺は自分の想いを告げることにした。 「鈴仙、俺は君のことが好きだ。初めて出会ったときから好きだった。」 「えっ?」 彼女は目を見開く。 「わ、わたしは「いや言わなくていい」え?」 そして泣きながら言葉を発しようとしたのを俺はさえぎる。 答えは解っている。断られる、きっとそうだから。 そんな最後は惨めすぎるから、だから俺は返事を聞かない。 「結果は解っているから。だからいい。」 彼女はそれでも何か言おうとしてくれる。 「でも!」 そんな優しい彼女がたまらなく愛しく感じる。 だから彼女に向けて精一杯優しく微笑む。 そして最後に告げる…… 「ただ覚えていて欲しいんだ。こんな奴が居たって事を……」 その一言を最後に俺の意識は途絶えたのだった…… 6スレ目 312 「月には兎がいるって、小さいころ教えられてさ。 信じてたんだよなぁ。 だから月で一人餅をつく兎が可哀想で、小さいころからよく月眺めてたんだ。 その習慣かね。今でもこうして月の綺麗な夜には、一人で酒を飲みながら眺めるのさ。 なんでかって? なんでだったかな……まぁ、たぶんそうしてやれば月の兎も寂しくないと思ったんじゃないかな。 何しろ子供の考えることだからな。 ま、なんにせよ、これからはお前と二人で呑みたいね、月のウサギさん。 ………… あぁ、伝わりにくかったか? 一世一代の愛の告白のつもりだったんだけどな。 じゃあ改めて。 好きだ鈴仙」
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■鈴仙1 「大勢の仲間を見捨てて逃げ出した私に幸せになる資格なんてあるわけない!!」 夜の竹林に響き渡る声。普段の鈴仙からは考えられない迫力だった。 アポロ13の到達を発端とする月の探索により、月の兎は幻想となった。この間永遠亭を襲撃してきた賊は、つまり、幻想郷に迷い込んだ月の民だったのだろう。 彼らが現れたことによって、長年の間鈴仙の心の中に閉じ込められていた罪悪感が蘇り、重い枷となって鈴仙を縛り付ける。 そうしてそれは、単純な拒絶となって俺の前に立ちはだかった。 「どんな過去を歩んできても、それが幸せになれない理由になんてなるわけないだろっ……」 体は自然と動いていた。両の腕を鈴仙の背に回して、強く抱きしめた。 驚いて一瞬体を硬くするが、それ以上の抵抗はない。 俺は自分の決意を固め、揺るぎない物にするために、続けた。 「お前にどんな過去があっても関係ない。それがお前を苦しめるというなら、俺が全部取り除くから」 「……私は卑怯な女なんだよ? 私と一緒にいたら、貴方まで不幸になる」 鈴仙の声は既に涙交じりだった。 「それでも構わない。お前といられるなら、月だって敵に回してやる」 小さな嗚咽と、笹が擦れる音だけが静かな竹林にいつまでも響いていた。 最初の台詞が何を言っているのか意味が解らんと言うやつは永夜抄のおまけ.txtを読んでくれ。 今回のNG 「それでも構わない。お前といられるなら、月の頭脳だって敵に回してやる」 ピチューン 1スレ目 55 ─────────────────────────────────────────────────────────── うどんげ、月兎してもいいかな? 1スレ目 57 備考:多分「げっと」って読むんだよね? ─────────────────────────────────────────────────────────── 俺「さあ、鈴仙。ちゃんと俺の目を見て言ってくれ。俺を好きだと」 優曇華「う……あう……そ、その……」 (少女幻視中…) 俺「ぐぁぁぁぁあぁぁっっ!目が!目がぁあぁぁぁあああっ!」 BAD ENDING(ありきたり) 1スレ目 64 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「…全く、永琳さんも無茶な事言うよ…」 永琳さんに薬学を教えてもらう事になり、僕は材料を集めに山奥まで来ていた。 「まだ着かないの、その場所に?」 「…飛べれば早いんだけどね」 隣を歩いている少女――鈴仙・優曇華院・イナバもその手伝いとして着いて来て貰った。 この山って飛ぶことが出来れば、それほどの距離にはならないんだろうけど、 飛べない僕には難所でしかない。 「そう言えば優曇華も飛べるんでしょ? だったら先に行ったら?」 「ダメ、師匠にちゃんとあなたを連れて帰るように言ったから、一緒に行くの」 そう言って、一応僕にペースを合わせてくれるのは嬉しいんだけど やっぱり、効率とか考えれば飛んでいってもらうのが早いんだけどな… 「てゐみたく飛べるんだから、先に行ってとってきたほうが早いよ」 「…だめ」 それでも譲らない優曇華。 「…だから、優曇華」 「鈴仙」 突然、自分の名前をハッキリと言う優曇華。 「あなたって、私以外の人にはちゃんと名前で呼ぶよね。 てゐ、永琳師匠、輝夜さま …でも私だけ、名前で呼ばれてない」 「いや、それは…みんなそう呼んでるから――」 「鈴仙!」 …どうやら、僕が名前で呼ぶまでこの口論は続きそうだ。 「だから、優曇華?」 「鈴仙!」 「…うど――」 「鈴仙!」 目が赤い、いや…いつもの事だけど、この表情は…泣きそうだ。 やっぱり、そう呼ぶしかないのか… 「…鈴仙」 「…何?」 「…行こうか、日が暮れちゃうよ」 「…うん」 既に妖怪とかが出そうな時間の空だった。 「…これで、一応揃ったのかな?」 僕にとっては見知らぬ草花とかばっかりだ。 でも、鈴仙のおかげもあってか、永琳さんの指示した材料は、全部集まった。 「ねえ」 「…うん?何、鈴仙?」 集めた物をまとめながら僕は彼女の方を向く。 既に日の暮れているこの場所は、暗いながらも月の光で鈴仙の姿を映していた。 「私が、月から逃げてきたって言ったよね?」 「…それは、一応聞いたけどさ」 鈴仙の重い過去のお話だ。 この話は、彼女の口からではなく、永琳さんの口から聞いた事だが。 「私は、今でもちょっとだけ後悔してるの」 「そりゃ、そうだろうね」 きっと家族とかも居ただろうし、友達だって居たはずだ。 それを置いて逃げてきたら、僕ならきっと耐えられない。 「でも、嬉しい事もあったんだ」 「うん、永琳さんやてゐ、輝夜さまに会えたからだろう?」 「それもあるけど…」 そこで一瞬、息を吸う。そして、僕の方を真っ直ぐに向き 「あなたに、会えたから」 笑顔でそう言った。 それに対して僕はどう返すべきなのか、頭が真っ白になりながら考えた。 「…ぼ、僕も…鈴仙と、会えて…嬉しい、よ?」 「――さ、帰りましょう? 師匠も心配してるだろうし」 そう言って顔を真っ赤にしながら、背を向ける。 「鈴仙!」 ビクッと、一瞬彼女の体が硬直する。 「…僕は、鈴仙の事が好きだから」 「――!」 暗がりでも照らす光が、彼女が震えているということが分かった。 「…返事は、いらないけど」 「…――」 「え?」 蚊の鳴くような声で、何かを呟いた。 「私も、あなたが好き…大好き…!」 「うん…」 僕達は月の照らす中で、抱き合い…その後、山を後にした。 「とりあえず、ちゃんと材料は集めてきたみたいだけど…二人とも随分と遅かったわね」 永遠亭に辿り着いて早々に永琳さんに言われた言葉がそれだった。 「…探すのに手間取りまして」 とっさに口に出た言葉は、きっと通じはしないんだろう。何せでっち上げなのだから。 あからさまなため息をつきながらきつい目をして 「…何のためにウドンゲを付いていかせたと思ってるの?」と永琳さんは言う そりゃ、材料を探す為だけど… 「そうでした、師匠。 それで一体何を作るつもりなんですか?」 鈴仙の言葉で僕も思い出した。 確かにそれを聞いてない。 初心者にとって本当に初歩の初歩とは聞いていたけど…それが何なのかは分からない。 「あぁ、言ってなかったわね」と 永琳さんは言葉を切り…少し考えるようなふりをして、やがてこう言った。 「…秘密よ」 教えてはまずい事なのか、いやそれとも面白そうだから、ただ黙っているのか… 目が笑っている事から考えると、やっぱり後者なんだろうなぁ… 「さぁ早速、薬の製作に入りましょう。ウドンゲ、あなたはちょっと出て行きなさい」 その永琳さんの言葉に驚いたのか 「え、私も手伝いますよ?」 と、鈴仙は言った。 「ダメよ。これは彼の修行だから、でも、そうね…。 後でその薬の実験台になってもらおうかしら」 「え…」 実験台――そのあからさまな単語に鈴仙は一瞬で後ずさる。 そりゃ、誰だって実験台になんてなりたくないって… 「大丈夫よ。風邪薬みたいな物だから」 それは結局の所、風邪を引いた人じゃないの無意味なのでは? 「…そ、それじゃ、頑張ってね」 鈴仙はそう言いながら、さっさと部屋を出て行った。 残された永琳さんと僕の間に沈黙が包み込む。 「…まずは、調合の分量から言っておくわ。 これを間違えると薬は毒になるの 薬も度が過ぎれば毒とはよく言ったものね。大体、このくらいの分量ね」 「はい、えっと…こっちの分量はこれくらいでしょうか?」 「もうちょっと少な目ね。 分量をミスしたら、それだけあの子が苦しむわよ?」 「脅さないで下さいよ…」 いや、これはもう脅しじゃないけど 「脅しじゃないわよ?あなたがミスしなければいい話だから」 それもそうか。薬学を志す身として、ちゃんと最初の作業くらいは成功させないと! 僕は目の前の作業に取り掛かった。端で笑っている永琳さんの様子も気になるけど… 「…ふぅ」 外に出てから、私はゆっくりと溜め息をついた。 何を作っているのか気になる一方で、彼が大丈夫かという不安に襲われている。 「大丈夫…だよね」 いくら師匠でも、そんな事をするはずはないし…多分、大丈夫………のはず くいくい そんな考えが浮かんだ途端に私の服の袖が引っ張られた。 その方を向くと、二匹の妖怪兎が私の方を見ていた。 「えっと、どうかしたの?」 見下ろすような形をやめて視線を合わせて、その様子を見る 「れーせん…」 と一度私を指差して自らを指差す。 「――」 そしてもう一匹が、今、部屋の中に居るであろう人物の名前を舌っ足らずに言い その指を自分に指す 「う~」 と急に二人の妖怪兎が抱き合うような形になる。 「れーせん、だいすき」 「わたしも、すき」 …ボッといきなり顔が熱くなったような気がした。 いや、気がしたじゃない。現に熱くなっている。 「あ、あ、あ、あ…あなたたち…見てたの!?」 「う!」 首を縦に振る…という事は肯定の証らしい。 しかしあんな山奥に偶然に行くなんて事は考えられない。 つまり、誰かに頼まれていったという事だろう。 「…怒らないから正直に言ってみて。誰に頼まれたのかな?」 そう言って私は敢えて立ち上がった。 別に威圧するわけでもない。自然な行動だ。私は怒ってないし。立って見下ろす形に なるのは普通の事だ。うん、間違いない。 「てゐ!」 「てゐ!う~」 「そう…てゐなのね…」 自分でも頬が緩んでいる気がする。 自分でも不思議に落ち着いている。あまりにも怒りが過ぎてしまうと、 その頭は急速に冷却されて逆に落ち着くという事を、師匠の文献で見た気がする。 いや、そんな事は…どうでもいい。 「あの子ったら…少しお仕置きが必要みたいね…。ふふ、うふふふふ」 鈴仙…実験台なんて大丈夫なのかな? この薬、毒薬って事はないだろうけど…やっぱり飲ませる身としては 心配だ。 「ほら手が止まってるわよ」 「は、はい」 当の本人は全く教える気配すらないし… 「永琳さん…」 「何の薬を作っているかなんて質問は三十二回目だから却下するわよ」 「………」 バレてるよ。 「毒薬なんて作る気ないから安心しなさい。誰が好き好んで鈴仙を殺すもんですか」 それも、そうか。 「…そう、ですね」 家族同然なんだから、苦しめるような真似はするはずがないんだ… …僕が変な事をしない限りは。 「それじゃ次の作業ね」 そう言った時だった。 ガシャァァァン と、大きな何かガラスのような物が割れる音がした。もっともこの永遠亭にガラスなんて ないはずだから、きっと何かが暴れる音なんだろう。 「…何でしょうね?」 「さぁ?」 そう言いながらも含み笑いをする永琳さん。 …やっぱり見当はついてるって事かな。 「これで最後だから、やり方は紙に書いておくわ」 そう言って簡易なメモを残して、永琳さんは部屋から出て行った。 きっと、原因を調べに行くのだろう。絶対見当はついてるはずだろうけど… 「それで、出来たのね?」 「はい、出来ました」 僕の手元には確かに薬がある。 結局何の薬かは教えてもらってないけど。 「あの、本当に鈴仙に飲ませるんですか」 「そうじゃなきゃ、薬の成果が試せないでしょう?」 …風邪薬みたいなもんだとか言ってたような気がするんですが。 やっぱり、怪しいもんだ。 「てゐは…さっきボロボロだったし、他の誰かが連れてくるはずね」 「え、てゐがどうかしたんですか?」 「…少しね」 やっぱり目が笑っている。 もしかしたら、また何かあったのかもしれない。 「……遅くなりました」 ……静かに出てきたのは凶悪なオーラを漂わせてた月の兎だった。 満身創痍と言うか何というか…ともかく、疲れているということはハッキリと分かる。 「…とりあえず、これでも飲みなさい。疲労回復くらいはするかもよ?」 と、素早く僕の持っていた薬を奪い取って鈴仙に渡した 「じゃあ、遠慮なく…」 鈴仙は疑う事もなくその薬を放り込んだ。 「…あの、永琳さん、本当に飲ませて大丈夫だったんですか?」 数分経っても、飲んだ彼女に変化は見られない。 かと言って、永琳さんの言った事も信用できないんだよな… 「大丈夫でしょ。 あなたが変な失敗をしてない限りは」 「それこそ大丈夫です。だってずっと隣で分量とか細かく計算したじゃないですか」 「師匠、結局これは何の薬なんですか?」 「いや、だから秘密なんだけどね」 思ったように効果が出ていない…ってところかな? 表情から予想するには。でも、効果が出ない方がきっといい。 僕はそんな予感がしていた。 だが、観察をして更に数分が経ってから…それは起こった。 「う、ん…」 「…どうかしたの、鈴仙!?」 「効果が出てきたみたいね」 「効果って…もしかして、あの薬の!?」 どうやら心拍は上がってるようだし、顔も赤い。 風邪とはまた違った症状みたいだけど…汗をかいているみたいだ。 「と言うよりも、僕に何の薬を作らせたんですか!?」 「…その状態で気付かないの?」 「熱…いよ」 弱っていると言うよりも、どことなく色っぽい雰囲気を出している鈴仙。 やっぱり、これって… 「あの、薬ですか?」 「えぇ、あの薬よ」 悪い予感的中。僕の勘は当たるようだ。当たっても嬉しくないけど。 「熱…い。脱い…で、いい?」 「待て待て待て!鈴仙!落ち着いて!脱ぐな、いや、脱がないで!」 ここで何か起きたら、間違いなく僕のリミッターが外れるような気がする。 これは予感じゃない。確信だ。 「ちょっと、永琳さん! どうにかして…って居ないし!」 いつの間にか、永琳さんの姿はどこにもなかった。 いや、それどころか、永遠亭中の気配がない。 「…れ、鈴仙さん?そう引っ付かれると、大変身動きが取れないのですが」 「だぁめ…汗かいたら、ちょっと…寒くなったの…」 ダメだ。僕はこのままだと、終わってしまう。 何かが終わる。 でも……きっと、またこの世界に帰って来れるだろう。 きっと…そして、また鈴仙と会えるように―― 蛇足 いつもの永遠亭にいつもの日常が再び始まっていた。 あの日の僕の記憶はところどころ曖昧だが、 きっと、ロクな事になっていないのだろう。 鈴仙は花の異変を解決して戻ってきたばかりだ。 …まだ、季節外れの花が咲いているところを見ると、完全とは言えないみたいだけど。 「おはよう」 「…お疲れさま。昨日は鈴蘭を取りに行ったんだってね?」 「うん…おかげで色々疲れたわ」 まだ寝足りないのか、まぶたを擦る鈴仙。 「…眠ったら? まだ時間的には余裕があるでしょ?」 朝早くに永琳さんの持っている文献を読むのが、僕の日課である。 まぁ、鈴仙はこれにたまに付き合う程度だけど。 「……何かあったのかな?」 「え?」 自分じゃ気がついてないみたいだけど、目が赤い。 また泣いたのかな?あの時みたく。 「涙の線が残ってるしね」 「…っ!」 図星を指されたのか鈴仙は顔を隠すように僕の胸元に抱きついてきた。 多分、また泣いたんだろう。 「大丈夫、鈴仙は…優しいよ」 「私、自分勝手って言われたよ…?」 「…それでも、罪を認めて泣くことが出来るなら…僕は鈴仙と一緒にいたい」 「でも、でも…」 頭を撫でながら僕は出来る限り優しく言い聞かせる。 「幸せな時に罪は思い出さなくてもいいんだ。 勝手だけど…僕と一緒にいる間は、罪は忘れてくれないか?」 楽しく幸せに居たい、その想いだけを語りかける。 「私…あなたと一緒にいたい…居たいよ…!こんな罪、忘れたいよ…!」 「大丈夫だよ。僕が一生、鈴仙についてあげるから」 罪は裁かれなきゃならないなんて…そんな事はない。 どんな者でも幸福な時間を過ごす権利はあるはずだ。 だから、彼女を守っていきたい。この脆くて儚い少女を… 「ねえ」 「何だい?」 「…さっきのって、ぷ、プロポーズって事でいいのかな?」 「ぷ、プロポーズ!?」 「…違うの?」 「いや、そんなあからさまにがっかりしないでよ!いいって!プロポーズって事で! 嘘偽りないんだから!」 「本当?」 「うん、キミとなら、ずっと歩いていける…だから――」 蛇足の蛇足 「…れーせん!」 「あ、何?」 あの出来事から二日ほど経っていた。 また、あの妖怪兎の二匹が居たのだ。 あの時と同じようにひざまづく形で二匹を見る。 「…れーせん、――とずっと一緒?」 「いっしょ?」 またてゐ辺りに盗み見しろとでも言われたのか、 その妖怪兎は例の出来事を知っていた。 でも今度はあの時と違って、怒りなんてない。むしろ誇らしいくらいだ。 「うん、私にとって大事だし、一生懸命になってくれるのが…うれしいから」 「う?」 「彼とだったら、ずっと一緒に歩いていける…」 「きみとなら、ずっと歩いていける?」 あの時彼が言ってくれた言葉そのままだ。 その妖怪兎達の言葉に私は頷く。幸せになれるから。 「あなた達も、そういう人がいるんだよ?」 そう、私にとっての彼のように―― 1スレ目 119 121 126 128 130 133 150 153 ─────────────────────────────────────────────────────────── 長いSSやあまあま小話なんてかけないので 短くスパッとプロポーズしようと思う。 うどんげ! そのうさ耳僕にも貸してください(*ノノ) 1スレ目 322 ─────────────────────────────────────────────────────────── 微エロ注意……かな?言葉よりも行動で。鈴仙ファンの方許して。 がつん、と脳髄を直接殴られたかのような衝撃。 視神経を焼きながら、電流が頭の中を駆け巡っていく。 声を出すことさえ許さない激痛。 「くっ…………あっ…………ぐっ…………あああっ!?」 何だ? いったいなんでこんなことに? 疑問符が頭の中で暴れているだけで、とても形にならない。 苦しい。どうにもならないくらいに苦しい。 今すぐこの頭蓋骨を包丁で叩き割って、煙を上げている脳を両手で掻き出して視神経をそのままずるずると引きずり出したいくらいの痛みが走る。 俺は両目を押さえてうずくまった。目から激痛が頭に駆け上がってくる。 呼吸ができない。喉が痙攣している。 いったい、なんで………… 逗留していた永遠亭の主、蓬莱山輝夜に頼まれて廊下の奥の奥、薬品の材料倉庫にまで誰かを呼びに行ったその先で…………. 「ぐっッ!がはぁっ!」 唾液が飲み込めなくて俺は喉をかきむしって咳き込む。 このまま、死ぬかもしれないと本気で思った。 「――――!――――ってば!ねえ、しっかりして!」 俺の名前を呼ぶ声が、かすかに耳に入った。 肩に手らしきものが置かれて、上体をゆすぶられるのが分かる。 やめてくれ、かえって頭が痛くなる。 「――――!ねえ!ねえってば!お願いだからしっかりしてよぉ」 震えながら閉じていた目を開ける。シュールレアリズムが具現したような歪んだ視界。 「息を吸って。そして吐くの。ほら、深呼吸して」 何か考えることもできず、その声に人形のように従った。 息を吸って吐く。その単純な動作の繰り返しさえも忘れそうな激痛の中、ひたすらに同じ行為を反復していく。 ようやく、乱れた視界が形を取り戻していく。 俺の肩に手を置いて、こちらを心配そうに見つめているのは………… 「れ、鈴仙…………」 オモチャのような耳をした月の兎の少女。そのルビーよりも赤い瞳が、俺を見ていた。 ざくりと、目から心臓までその瞳の赤が貫いたよう。 「よかった……………………」 俺は……何を……考えている? 肩に置かれた手が、気になって仕方がない。 「鈴仙…………」 「なに?まだどこか痛むの?」 顔と顔が、額と額が触れ合わんばかりに鈴仙の顔が近づく。 「いや、もう……大丈夫だから……」 必死に顔を背ける。頭は割れんばかりに痛むのに、胸の内は冷たくも深い炎が熱を放ち始めてきた。 その白くてふかふかの兎の耳。 柔らかそうな血色のよい頬。 そして、長い髪から香る甘い香りが、 頭の誰かを、狂ワセテイク。 俺は……鈴仙を…… 今まで、こんなことは思いもしなかった。ただの月の兎だ。まだ少女だし、それに、人じゃない。 いや、違う。前から、俺を見る鈴仙の目は異なり始めていた。 俺と楽しそうに話していた鈴仙。風邪を引いたときは永琳さんを差し置いて看病してくれた鈴仙。俺にしか見せない顔で笑ってくれた鈴仙。 俺は……鈴仙を…… ははっ、なんて……馬鹿なことを。 「じっとしていて。すぐ、誰かを呼んでくるから」 肩から離れてしまう手。 行ってほしくないと、心の底から思った。 それと同時に、頭がこれ以上ないくらいに強く痛んで、 俺はせっかく取り戻した意識をまた手放していた。 手だけが勝手に動き、去ろうとする鈴仙の手首をつかんで 床に、押し倒していた。 俺は……鈴仙のことを…… コワシテシマイソウダッタ。 「きゃあっ!?」 床に背中を打ち付けて、痛みと驚きの混じった声を上げる鈴仙。 その声に、胸の中の暗い情念がさらに燃え盛っていく。 何が起こっているのかわからずに反射的にもがく体を押さえつけ、両手首をつかんで頭の上で一つにする。 「ひッ…………や、やめてっ!」 怯えたような声が、かえって耳に心地よい。 鈴仙の開いた脚の間に体を入れ、腹を押さえて動けないようにさせた。 じっくりと眺める。 これからこの玩具を、好きなようにできる。 陰惨な喜びが、口元に勝手に笑みを作らせる。 「やめてぇ、お願いだからやめて!正気に戻ってよ!」 いくら叫んでも、ここは倉庫の奥まった場所。助けなど誰も来ないさ。 さて、どうやって楽しもうか。 腹に置いた手を上にやり、鈴仙の上着のボタンをはずして広げさせる。 「こ…………こんなの、あなたは望んでない!こんなことするはずないもの。だから正気に戻って!」 耳元で叫ばれたような気がする。 必死に体をねじって抵抗しているが、力では俺のほうが上だ。 正気、ね。 たしかに、あの赤い瞳を見てから俺はこんな行為に及ぼうとしている。 だがそれは鈴仙、お前が原因だろう。お前のその、赤い瞳が。 ネクタイを首から無理やり取った。 隅に放り投げたその手で、ワイシャツのボタンに指をかける。 「い……やっ…………もう…………やめ……て…………」 涙目で哀願する様は、俺の心の征服欲を満たそうとする。 が、まだ満たされることはない。 ならば、もっとこの兎を堪能すれば、少しはましになるだろうか。 試してみるのも、悪くない。深くものが考えられず、自分の体のしていることが自分のしていることとは別のような気がする。 ボタンを立て続けに半分ほどはずして、鈴仙の反応を見る。 「もう…………お願い…………もどっ……て…………」 さっきまで全力でもがいていたせいで疲れたのか、抵抗は鈍い。 両手を頭の上で押さえられ、上着とワイシャツを半ば脱がされた姿。 スカートは片方の脚が膝を折っているせいでまくれて、太ももまで見えている。 そして、なおもこれ以上はやめて欲しいと懇願する顔。 その、赤い瞳。 鈴仙の瞳が、俺を狂わせていく。 「こんなの……こんなのって…………ひどいよぉ…………」 耳元で聞こえた声に、涙の気配が混じり始めていた。 けれども。 俺はそのまま、のしかかっていた全身を鈴仙に重ねた。 すすり泣く声で、目が覚めた。 赤にかすむ視界の中、左右を見回してその声の主を探す。 すぐ隣にいた。 鈴仙だった。 顔を覆って泣いている。 「俺は…………」 何てことを、してしまったんだ。 欲望のままに、俺は鈴仙に………… どんなに許しを願っても許されないことを、この女の子に。 絶望と自己嫌悪が、鏃となって心を抉る。 「鈴仙…………」 何と言えばいいのか、何と謝ったらいいのか分からず、俺は名を呼ぶことしかできない。 「ごめんなさい…………」 だが、謝ったのは鈴仙の方だった。 「どうして、君が謝るんだよ……」 「ごめんなさい…………ごめんなさいごめんなさい。悪いのは全部私。あなたは何も悪くないから。全部、私の瞳のせい」 「そんなことあるか。俺は確かに鈴仙の赤い目を見た。そのせいでおかしくはなった。でも、欲望を抑えられないで、鈴仙をはけ口にしたのは俺自身だ。俺は、俺を許せない…………」 「違うの。そうじゃないのよ」 鈴仙は泣きながらこっちを見る。 初めて、何かがおかしいことに気づいた。 鈴仙は服をきちんと着ている。ネクタイも歪んでいないし、上着にもしわはない。あれだけ無理やりひどいことをしたのに、長い髪にも白い肌にも乱れや傷はなかった。 俺は、夢を見ていたんだろうか。だとしたら、どんなによかったか。 でも、そんな希望に逃避することも許されない。目の前の鈴仙の涙が、俺の行為を現実のものだと告げている。 なら、何が違うんだ。 「お願い……怒らないで聞いて欲しいの。あなたは私の目をまともに見てしまって狂気に駆られた。衝動が現実化して、それで……その……こんなことに」 「ああ…………全部、俺が悪い。鈴仙、もし何かあったらそのときは責任を……」 「それが、その…………あなたが、ええと、その、色々した相手は私じゃないの」 「はぁ?」 「だから、あなたは私だと思ったみたいだけど、それは幻視。本当は私じゃなくて別の人なのよ。ここにいた」 それで全てが繋がった。なぜ鈴仙が謝るのか。そして彼女が無事なこと。よかった、もう少しで俺は鈴仙に取り返しのつかないことをしてしまうところだった。 イヤ、チョットマテ。 ってことは、これはここにいた誰かを鈴仙と勘違いして襲いかかったのか?それは誰?誰なの? Aてゐ B永琳さん C輝夜様 あああああ!!全員駄目だ!助けてめーりん――――(゚∀゚)――――! Aてゐの場合~「ね~ね~、私赤ちゃんができちゃったみたい。責任とってくれるよね?」←妊娠詐欺で一生強請られる B永琳さんの場合~「私がどれだけ痛い思いをしたか、分からせてあげるわ」←直径が俺の頭くらいある座薬挿入の刑。ひぎぃ! C輝夜様の場合~「死ね」←生身で大気圏突入の刑。灰も残らない OH MY GOD!どのルートでもBADENDは暴走特急。スティーブン・セガールでも止められない沈黙の要塞。アホ毛の神綺様でもヤマザナドゥ様もハード・トゥ・キル! 俺は自分でも蒼白となっていると分かる顔を、泣いたせいでさらに赤くなってしまった瞳の鈴仙に向ける。 もう耐性がついたのか、瞳を見てもなんともない。俺の根性は中古のヒューズか。いっそホムンクルスに殺されてしまえ。 「俺…………誰に不埒なことをしちゃったわけ…………」 鈴仙はあからさまなまでに視線をそらしつつ、指で俺の後ろを指す。 それはあたかも呪いのように。 見たくないと必死に頭の中に住んでいる俺の良心たん(推定7歳。好物はお好み焼き。ラッキーカラーはすみれ色)が叫んでも、脊髄はその絶叫を無視し体ごと振り返る。 そこで、半裸で俺を待ち受けていたものは………… 「彼、ここの薬品倉庫に資材を卸しに来ていたの。……あなたは彼を呼びに来たんでしょ?」 そこにいたのは、満足げな色をメガネの奥の瞳に輝かせてこちらを熱く見つめる香霖堂の店主(♂)だった。 ウホッ!いい店主! 「(もう一回)やらないか……」 (フラグが立ちました。香霖ルートに移行します。もう変更できません。強制です。逃げても無駄です。追いかけます。諦めてください) 1スレ目 370-372 【てゐに派生】 381 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/09/06(火) 20 13 11 [ Ji26yZ5. ] 373 Aの展開ならまんざらでもないなと 思ってニヘラッとしてしまった俺、新しい自分発見みなさん初めまして。 382 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/09/07(水) 00 19 04 [ j0DXaKsA ] そのうち本当にてゐが妊娠してしまい、大きくなったお腹を撫でながら 「赤ちゃんは男の子と女の子とどっちがいい?」 なんて幸せそうに尋ねられる展開に。 あれ?なんかてゐって一児のお母さんが似合いそう? 391 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/09/07(水) 22 19 13 [ 1cUaqMQQ ] 382 興味津々で「あ……今動いた」とてゐから離れない鈴仙 「子供の名前は私が付けるのよ。いいわね」と譲らないてるよ 「胎教には音楽がいいって聞いているわ」と虹川姉妹を呼び寄せる永琳 産まれようとする一つの命にてんやわんやの永遠亭。いつの間にかほのぼの 392 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/09/07(水) 22 49 41 [ yS0WS5iU ] 391 何かしたいけど何もできずにウロウロして、てるよに邪魔物扱いされる俺。 とりあえず、ミルクとかオモチャとか絵本とか幼児服を用意するものの まだ気が早いわよ、とてゐに優しく笑われがっくりする俺。 気持ちは分かるわ、落ち込まないで と妖怪ウサギに肩をたたかれ慰められる俺。 393 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/09/08(木) 13 44 22 [ evsv0.zc ] 392 がんばれお父さん! ─────────────────────────────────────────────────────────── 真夜中の永遠亭。 僕は竹林で倒れている所を、拾われて介抱してもらった。 幸いにも拾われた場所は人の住む場所だった。いや、妖怪なんかも住んでいたけど。 数日後には、すっかりと調子も良くなり僕はこの永遠亭で色々と手伝いをしていた。 一宿一飯の恩義…どころじゃなくて、すでに五宿十五飯もなっていれば手伝う気にもなる。 「永琳さん。これは何処に置けばいいですか?」 「あぁ、それはそっちの大き目の棚の方に入れておいて」 「はい」 と、まぁ…こんな感じで適当に日々を過ごしている。 永遠亭の人…妖怪達は普通に話すことは出来るんだけど、一人だけ僕と 全く会話をしない者がいた。 「あら、ウドンゲ…」 「あ、鈴仙」 「……」 そう、月の兎(らしい)である鈴仙=優曇華院=イナバだ。 彼女が率先して、僕を介抱してくれたらしいけど…。 僕が起きてからお礼を言ったきり、それだけしか会話がなかった。 『あ、キミが僕を…ありがとう』 『どういたしまして』 そんな感じだった。 事務的と言うか何と言うか…僕に警戒しているのかどうも刺々しい態度だった。 「…師匠、例の花の毒性についてなんですけど」 「あぁ、アレの事ね。アレは――」 見れば見るほど、不思議な感じだ。 見た目は僕みたいな人間と変わらない。でもその耳だけは兎の耳。 狂気を操るらしいけど…見たことはない。 「それじゃ、掃除に戻りますね」 永琳さんにそう言っておき、外に出て行く。 ちらりと鈴仙が僕の方を向いたけど、特に感情を持って僕を見ていると言うわけではない。 ただ淡々と僕を見る。 目が合うと…軽い立ち眩みがした。 そんな日々が続き、既に僕は居候扱いになっていた。 さすがの僕も掃除くらいは出来るし、ここについて色々学ぶのも意外に楽しくて 人間界になかった充実した日々を送っていた。 「ふぅ、あとは…風呂掃除か…」 相変わらず、ここを掃除するのが大変だ。 無意味に廊下は長いし他の妖怪兎が手伝ってくれなかったら 一日かかるだろうし、大浴場に近いこの風呂を掃除するのに 一時間はかかる事が容易に想像できる。 とりあえず必死になりながら風呂場をタワシで擦り始める。 洗剤なんてものがあるわけもなく、全てタワシだ。 「…何であの娘は、僕を避けるんだろう」 もちろん鈴仙の事だ。 鈴仙のことを考えると妙に気が高揚する。 多分、彼女の瞳を目が合うたびに見ているからだろう。 それよりもどうして僕は彼女の事ばかり考えるのか? 「まぁ、いいか…」 考え事をしている内に風呂掃除は既に大体終わっていた。 今日は永琳さんから借りた本を少し読もう。そうすればちょっとは 考えることもなくなるだろう。そう思い戸を開ける。 ガラガラ 「……あ」 「……」 戸を開くと、目の前に居たのは僕が悩んでいる張本人だった。 それだけなら特に問題はないんだろうけど、その張本人―― 鈴仙は妙に露出度が高い服を着て…いや、彼女は脱衣所で服を 脱いでいたのだ。 つまり、僕が見ているものは…… 思考がフリーズする前に、鈴仙の顔が真っ赤になっているのに気付いた。 口を金魚のようにパクパクさせて、『どうしてここに?』といった瞳で見ている。 「きっ…!」 叫ばれる! そう感覚的に悟った僕は一瞬で鈴仙の口元を押さえた。 まるで犯罪者になった気分だった。 「…ごめん」 鈴仙の耳元で、僕はそう呟いた。 悪気があったわけじゃない…。謝って済む話じゃないのも分かっている。 「…本当に、ごめん」 口元の手を外して、僕はすぐさま浴場から出て行った。 「僕は…最低だな」 好かれるどころか、普通に嫌われた気がする。 …このままだと自己嫌悪に陥りそうだ。 今日は本も読まずに寝るとしよう。 それにしても、綺麗な肌だったなぁ… とりあえず、明日は… (選択肢) (土下座するくらいの勢いで謝る) (開き直る) ーーーーーーーーー少女選択中...ーーーーーーーーー 上・(脳内設定の一般的な)鈴仙ルート 下・ツンデレの鈴仙ルート お好きな方をどうぞ。 532 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/13(木) 23 36 42 [ 5RZyxk9Q ] 下下下下下下下下下下 つんでれ厨の俺様がきましたよっと 533 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/13(木) 23 47 59 [ 0oSjwOfg ] 下 ツンデレの鈴仙…新たな領域に踏み込めそうだ 534 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/14(金) 00 16 48 [ 9TnTTxI6 ] 上 普通に甘い話が見たい気分です。 535 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/14(金) 01 22 45 [ WMgVknzM ] 上上 536 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/14(金) 07 03 09 [ 7nEZ9zZQ ] 右左右左BA 537 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/14(金) 10 24 04 [ bdjfXqks ] 無敵コマンド吹いた。 じゃなくて…下で。普通の鈴仙は見飽きたし、 530の文章力に期待…とかプレッシャーかけてみる。 538 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/14(金) 16 37 09 [ 1TJ/RbRw ] 上で。 俺も甘い話が読みたい 539 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/14(金) 17 07 53 [ 6K9Ah8JE ] 両方 ってのは無しか?w どっちもかけるならぜひみたいが どちらかと言われると上。 最悪ノ場合下は俺が書く(ぉ 540 名前: 530 投稿日: 2005/10/14(金) 19 07 41 [ Wz8/hOwM ] 下:十二票 上:五票 右左右左BA :一票 何か思いのほか下が多かったけど、一応全部書くつもりです。 539 その作品がかなり見たいけど…出来る限り自分で書いてみます。 541 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/14(金) 20 14 54 [ 6K9Ah8JE ] 超期待。 俺のは別な形でいつか格差。 つか、そういう数え方かよw 全部ってことは右左右左BAもかくのかw 542 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/14(金) 23 20 33 [ 1TJ/RbRw ] 十二票吹いたw 無理せんと頑張れよ ーーーーーーーーー少女選択中...ーーーーーーーーー →(開き直る) ピッ 結局、僕はあの記憶を無かったことにして、次の日を迎えることにした。 やっぱり女の子の柔肌を見るのも滅多にない経験だったから、妙な緊張が 残っていた。 「…よし、忘れた」 そう言う事にした。 僕は何も覚えていなくて、昨日の風呂場では何も起こらなかった。 と記憶を模造した。 「あぁ、ちょうど良かった」 朝一番、無意味に長い廊下で永琳さんに会った。 「ウドンゲがちょっと体調崩しちゃって…ちょっとお見舞いに行ってくれないかしら?」 「えーっと、何でですか?」 せっかく忘れようとしたことを、一瞬にして思い出してしまった。 柔らかそうな肌と…兎の耳、そして見る者を狂気に陥れるその瞳。 思い出したらまた軽い眩暈が起きる。 「…ウドンゲもそうだけど、貴方も大丈夫?」 「まぁ…一応、それで鈴仙はどうしたんですか?酷い病気か何か?」 「湯冷めしたみたいで、ちょっと風邪を拗らせてしまったみたいなの」 …多分、僕の所為だろう。 「貴方って、前からウドンゲの事を気にかけてたでしょ?だから頼もうと思って」 そう言って永琳さんは僕に風邪薬を差し出した。 「いや、僕じゃなくててゐにでも頼めば…」 「てゐは私の指示で栄養のあるものを取りに行かせたわ。私も薬の調合とかで忙しいし よろしく頼むわ」 と一方的に決め付けると、永琳さんは僕の反論も聞かずに、さっさと廊下の奥に 消えていった。 「どうしよう…」 僕の手には永琳さんの風邪薬が握られたままだった。 僕は今、鈴仙の部屋の目の前に居る。 別に疚しい気持ちなんて…少しはあるけど…。とりあえず、部屋の前から 進めないでいた。 こんな時に足が震えて動けないから、逆に笑える。 それでも、この薬を渡さないとならないのも事実で…深呼吸をして、手に人という字を 書いて、飲み込む。 これで緊張は気休め程度になくなった…と思う。 戸の前に立ち、意を決してノックしようとした。 『さっきから居るんでしょ?入ったら?』 いきなり先制を取られた。 心臓はバクバクいっているが、一刻も早く薬を渡して去ろうと戸を開けた。 「やっぱり貴方だったの?」 呆れた様子で言う鈴仙。今度は下着姿じゃなかったけど…あの時の姿がフラッシュバックした。 ダメだ。平常心、平常心。 「それで、何の用?」 前よりは刺々しくなかったけど、それでも微妙な壁を感じた。 「永琳さんに頼まれて…風邪薬」 薬は普通の粉薬だった。僕が今まで見てきたのとは違って、それは漢方薬みたいなものだ。 それを受け取ると、薄く笑って 「ありがとう」 と言った。 「それじゃ…」 予定通り、僕は部屋を去ろうとした。 腕力でも頭脳でも勝つ自信はないけど、このままこの場所に居たら 頭がおかしくなりそうだった。 彼女があまりにも儚くて、抱きしめたい衝動に駆られるが…我慢する。 「待って」 「…何?」 まさか、彼女に止められるとは思わなかった。 「少し…話さない?」 そっぽを向いて、顔を赤らめながら彼女は言った。 「あ…うん」 僕はその誘惑には勝てなかった。 「それで、わたしは兎角同盟を作ろうと思ったの」 「そうなんだ」 こんな風に二人っきりで話すって事は考えられなかった。 むしろ、今まで淡白な反応ばかりだったので、普通に話すこっちの方が彼女の 素面なのかもしれない。 「それじゃ、僕も手伝うよ」 「うん、ありがとう」 この可憐な笑顔を見ると、庇護欲というものが出てくる。彼女を守りたい。 そんな考えも出てくる。 「あのね、わたしは――」 「鈴仙~居るー?」 鈴仙が何か言いかけたとき、戸の前から声が聞こえた。 この声…どうやら、てゐのようだ。どうやら、やっと戻ってきたらしい。 「あれ、貴方も居たんだ?」 「居ちゃ悪い?」 「いや、そんな事はないんだけど」 大体、てゐと一緒に行動すると大抵、騙されるし…あんまり一緒に居たくないんだよなぁ…。 色んな意味で、いい子なのは分かるけど。 「で、何を取ってきたんだ?」 「栄養のあるもの。とりあえず、そこら辺から取ってきたの」 「…騙し取って、とかじゃなくて?」 「あ、あはは」 この笑い方だと、間違いなく騙し取ったようだ。 「それじゃ、鈴仙。僕は部屋に戻るから」 「あ…うん」 とりあえず、僕は出て行くことにした。 『あれ、どうしたの鈴仙?そんな青筋立てて』 『どうしてだか分かるかしら?』 『え、ちょっ…待ってぐりぐりが!痛い痛い!』 僕が部屋から出て行くと、そんな会話が聞こえた。 …とりあえず、気にせずに逃げることにした。 それからと言うもの、誰かと居ると妙に視線を感じるようになった。 てゐと適当に雑談をしてても、永琳さんに本を借りたりしても、輝夜さんと 話しても、何処かしらでほぼ必ず、視線を感じるようになってしまった。 そんな折、僕と鈴仙は永琳さんの元に呼ばれた。 「…何の用なんだろう?」 「さぁ、師匠のことだし…分からないわ」 どうも鈴仙の機嫌も悪かった。 「あぁ二人とも、よく来たわね」 扉の外で永琳さんは待っていた。 「とりあえず、何の用ですか師匠?」 鈴仙の言葉に困ったような笑顔を浮かべる永琳さん。 「これから、出かけなきゃならないんだけど…薬に使える花が 今の季節じゃないと咲かないの。だから出来たら、二人で手分けして 探してくれないかしら?」 その言葉に鈴仙はちらりと僕の方を向く。 どうやら鈴仙の方は行くつもりらしいが、僕は…。 考えてみれば僕に拒否権なんてない。 そもそも居候の身だし。 「分かりました。それで、何を取ってくればいいんですか?」 「えぇ、簡単な絵を書いたメモがあるから、これを使って探してね」 そのメモを僕と鈴仙に渡すと、永琳さんは忙しそうに駆け出していった。 「それじゃ、気をつけてね」 「心配してくれるんだ」 「わたしはあなたの心配なんてしてないわよ!し、心配なんて…するわけないじゃない…」 最後の方は真っ赤になりながら小さい声でほとんど聞こえなかった。 僕が歩き出そうとすると、腕を引っ張ってそれを止め 「死なないでよ」 「死なないよ。…やっぱり、心配してくれてるじゃないか」 「か、勘違いしないの!わたしはあなたに死なれたら迷惑だし… ほら…ほ、他の子も悲しむでしょ!」 確かに掃除とかは手伝ってくれるけど…あんまり好かれてる気がしないんだよなぁ。 悪い子はいないんだけど…。 僕と鈴仙はそんな他愛のない会話をしながら。入り口に着いた。 「それじゃ、鈴仙…後でね」 「うん。また」 鈴仙は空に飛んでいった。 僕に至っては歩くしか能がないので歩き始める。 紳士として、鈴仙が飛んでいる状態から上を見上げるなんて真似はしない。 上を見ないように…僕は素数を数えて落ち着いた。 そう、僕は鈴仙と分かれたことが文字通り命取りだった。 永琳さんに頼まれた目的の植物は手に入れたんだけど…。 目の前には、僕の体の三、四倍はあるであろう巨大な妖怪が居た。 僕を天然の人間と見るや否や、いきなり襲い掛かってきたのだ。 「…どうしようか」 相手の方は嗅覚が利きそうで、隠れても無駄だということが良く分かる。 だからと言って、戦うなんていうデンジャラスな選択肢は僕の中に存在しない。 やっぱり、二人できた方が良かったのかな。 鈴仙が居れば、狂気の瞳で逃げるチャンスくらいは出来たかもしれないのに… それでも、多分…彼女はここに来るだろう。 何故か分からないけど、僕はそう確信していた。 お互いに動く事はない。 僕が動いたら、相手は即座に僕を食らおうとするだろう。 「鈴仙…」 口元から思わず、彼女の名前が出てきた。 自分から永遠亭の方に動く事で、鈴仙に会える可能性も増えるはずだ。 …傷を負ったとしても、鈴仙なら…何とかできると信じよう。 ポケットには野球ボールよりも小さい石が入っていた。 それを握り締めて、狙いすまして妖怪の鼻に当てた。 「ぐぎゃ!」 これでしばらくは眩暈くらいはするはずだ。 今が好機だろう、と僕は駆け出した。 それが、思えば間違いだったのかもしれない。 妖怪は意外に機敏な動きで、僕を追ってきた。鼻を打ってスピードが落ちているとは思えなかった。 それでも僕は必死に走る。 ザク 足が縺れた。背中に鈍痛が走った。 血を流しながら…僕は倒れた。倒れた拍子に木の根元に頭を打った。 それでもまだ、意識はある。 「ニンゲン…」 相手が近付いて来る。僕はこのまま食べられるんだろうか? 『死なないでよ』 …ゴメン、鈴仙。 謝れなくてゴメン。約束が守れそうもない… 「――波符『月面波紋(ルナウェーブ)』」 一瞬で視界が真っ赤に染まった。 そして、その聞き慣れ始めた声に、僕は少しだけ安心した。 「ボロボロじゃない。一体どうしたの?」 「…見ての通り、そこの妖怪さんにやられた」 プライドなんて欠片もない。我ながら情けないな。 「…お仕置き!」 その妖怪に次々に打ち込まれていく鈴仙の弾。 はっきり言って、蜂の巣だった。 「ぎゃぁぁぁぁ!」 その断末魔を聞きながら、僕は頭がボーっとし始めた。 ちょっと血が出すぎたみたいだ。 「ふぅ…って、何で死にそうになってるのよ!」 「…ゴメン、血が出すぎた。眠い…」 実際、意識を保つのも辛い。 「寝ないでよ!今、寝ちゃったら死んじゃうのよ!起きて…起きてよぉ…!」 ゆっさゆっさ、揺り篭のように僕の身体は揺すられた。 泣きそうな鈴仙の声を聞きながら、僕は徐々に意識を失った。 エピローグ 目が覚めると、そこは永遠亭の僕の自室だった。 どうやら生きてはいるようだが…傷が痛む事には変わりない。 「目が覚めたようね」 すぐ傍にいたのか永琳さんが目覚め早々に僕に声をかけた。 「僕は…?」 「ウドンゲに感謝しなさい。生死の境を彷徨っていたあなたを ずっと見ていたんだから」 「…やっぱり、死にかけたんだ」 「容態が安定してからも、ずっと看病を続けて、今はこうなってるけどね」 と、僕の横を指し示す。 そこには疲弊して眠る月の兎の姿があった。 「そうそう、貴方、ウドンゲの下着姿を見たそうね?」 「あ、あはは…」 バレてるよ。まぁ大方、鈴仙が話したんだろうけど。 「月の兎には面白い風習があってね…。それについてはウドンゲから聞くといいわ」 「…一体何なんですか?」 「秘密よ。とりあえず、痛み止めは置いておくわね」 錠剤を机の上に置かれる。 「お大事に」 軽く笑うと、永琳さんは外に出て行った。 「で、鈴仙、起きてるんだろ?」 「…起きてない」 狸寝入りかどうかは大体分かる。眠るのを偽ると不自然に感じるものだから。 「とりあえず、ありがとう鈴仙」 「…~っ、別に貴方を助ける為にあの場所にいたんじゃなくて!」 「それでも、だよ」 「…言っておくけど、ただ通りすがっただけだからね!」 「分かったよ」 彼女の耳は人よりも遥かに優れている。あの時の呟きがきっと聞こえていたのだろう。 「あ、ところで…永琳さんが言ってた事なんだけど…月の兎の風習って?」 その言葉を出すと、鈴仙は真っ赤になりながら俯いてしまった。 僕、何か悪いことでも言ったのかな? 「つ、月の兎は…」 「月の兎は?」 「は、初めて肌を晒した家族以外の異性に求婚をしなければならない」 …思考がフリーズした。 あの時の行動が…まさか、こんなに事になっていたなんて。 「あ…えっと、まぁ、わたしは別にいいの。しょ、正直…他の人よりもあなたなら まだ…十分って言うか…」 「うん」 「ちょっ…」 鈴仙の華奢な身体をそっと抱きしめる。 これから守ろう。この素直じゃない兎の少女を―― ーーーーーーーーー少女選択中...ーーーーーーーーー →(土下座するくらいの勢いで謝る) ピッ うん、やっぱり僕が悪いんだから、明日一番に謝ろう。 それにしても… 「やっぱり、女の子の肌って白いものなんだな…」 と改めて実感した。 まるっきり反省の色がない僕だった。 とにかく、明日は謝らないと…僕の気がすまない。 彼女を傷つけたのもあるけど…やっぱり、嫌われたくはないし。 朝の永遠亭。 目覚めは別段普通だった。 別に『新しいパンツを正月元旦の朝に穿いたような気分』でもない。 結局、普通の目覚め。気分は微妙に沈んでいる。 トントン 戸をノックする音が聞こえた。 こんな事をするのは永琳さんだろうか? まず間違いなくてゐという意見は外れる。彼女の場合、居ようが居まいが勝手に入って 勝手に物を取っていくから。 輝夜さんという事もないだろう。第一、ここに来るような理由がない。 とりあえず、永琳さんということを仮定しておいて、戸に向かう。 「はいはい、何方ですか?」 と、戸を開くと、そこに立っていたのは一匹の月の兎だった。 ここの永遠亭には一匹しか月の兎はいないけど…。 「鈴仙…?」 「お、おはよう」 「えっと、何の用?」 思わぬお客の来訪に、僕は戸惑っていた。 こちらから出向こうと思っていたのに、まさかそっちから来るとは思っていなかった。 「し、師匠が貴方を呼んで来いって言ってて…その、迎えに」 「あ、うん…分かった。ちょっと、待ってて」 鈴仙の顔が赤い。きっと僕の顔も赤い。 やっぱり昨日のことを覚えているからだろう。 「あー、それじゃ…行こうか」 一応、着替え終わり僕は鈴仙と一緒に無駄に長い廊下を歩く。 歩いている間は互いに無言だった。 「えっと、鈴仙」 「は、はい?」 急に声をかけられて、驚いたように鈴仙はこちらを向いた。 すーっと息を吸い込む。 よし、準備オーケー覚悟完了! 嫌われる覚悟は出来てないけど、叩かれるくらいの覚悟は既に出来ているッ! 「昨日はごめんっ!」 「え、え、え?」 「本当に悪かった。今も反省している。殴っても構わない」 本気で土下座するくらいの勢いで謝った。 と言うか、土下座をした。 「えっと、別にいいんだけど」 顔を上げると、鈴仙がスカートを押さえながら、僕を見下ろしていた。 若干恥ずかしがっているのは分かるけど、何でスカートを押さえているんだろう? 「あ、後、早く立って…」 「いや、そうしないと謝れないんだけど」 「…その位置からだと…その、スカート…」 あぁ、そういう事か。この位置から普通に見るとスカートの中が見えるから 早く立ってくれと、言ってるのか。 「ともかく、ゴメン」 「もういいってば、別に減るものでも…ないし」 いや、色々と減ると思う。 気にしなくなったら、少なくとも羞恥心が消える。 「…別に、今のあなたなら見られても…その…」 最後の方はあまりにも小さな声だったので聞き取れなかった。 「あぁ、二人とも来たわね」 「えぇ、結局何の用なんですか?」 永琳さんの部屋(永遠亭住人曰く『八意研究室』)に入ると 明らかに生命に関わるような匂いと、その中で平然と立っている永琳さんが居た。 「えぇ、今日貴方達にここに来てもらったのは他でもないわ。 ちょっと私の作った新薬の実験を――」 『謹んでお断りします』 僕と鈴仙の声が見事に重なった。 永琳さんが新薬を作る、人を実験に使うイコール、死亡確認! の方程式が簡単に頭を過ぎる。 多分鈴仙も同じ方程式が出たんだろう。 「残念ね。じゃあ、別の用件を話しましょう」 「…むしろそっちが本当の用件じゃ?」 「新薬はてゐにでも頼む事にするわ」 心の中でてゐに合掌する。 ごめん、僕達にはどうすることも出来なかった。 「鈴蘭畑に行って鈴蘭を取ってきてくれないかしら?」 「鈴蘭畑って…何処に?」 「それについては、ウドンゲが知っているから案内してくれるわよ、ね」 「あ、はい…鈴蘭畑かぁ…」 何か思うところがあるのか、考え事を始めた。 永琳さんの用件はそれだけだった。 僕達は早速、支度をして昼頃に鈴蘭畑に向かった。 「コンパロ、コンパロ、毒よ集まれー」 鈴蘭畑に着いて早々、僕たちが見たのは一体の人形だった。 鈴仙曰く、ここに住んでから毒を浴びて心を持った人形らしい。 「あ、お久し振りー」 「久し振りね」 一応顔馴染らしく、その人形と鈴仙は話を始めた。 僕はその間、鈴蘭畑をずっと見る。 こうまで同じ花があると、逆に気味の悪くなりそうな光景だった。 毒もあるらしいし… 「話は終わったわよ。さぁ取っていきましょう」 「またね」 「ありがとうございます」 とりあえず、その人形に礼を言って鈴蘭を摘みはじめる。 その人形も手伝ってくれたおかげで、それほど時間がかからず 話しながら一時間ほどで、持ち帰れる程度の量を手に入れた。 「それじゃ、帰ろうか、鈴仙」 「えぇ、行きましょう」 両手いっぱいの鈴蘭の花束。 これではどこかへ、お見舞いに行くような感じだ。 それにしても、鈴蘭畑に居た所為かどうか分からないが、 頭が痛い。ボーっとする。 「鈴仙はよくここに来るの?」 「うーん、来る時と来ない時があるんだけど…最近はあんまり来てなかったから」 人形の彼女とは、何でも花の異変の時で出会ったらしい。 季節を無視した花の一斉開花。 僕は見ていないけど、それは凄まじい異変だったらしい。 そんな異変なら、僕も一度見てみたいと思う。 「うん、これでいいわ。二人ともご苦労様」 夕暮れに永遠亭に戻り、永琳さんの労いの言葉を受けて、僕達は 部屋に戻ろうとした。 戻る時に庭先で倒れていたてゐが妙に印象的だった。 「ねえ、ちょっと外に出ない?」 「あ、うん…別にいいけど」 鈴仙が僕を外に誘ってきた。 今日は色々な鈴仙を見れた気がする。 それでも、真っ赤になった鈴仙が一番印象的で、一番可愛く思えた。 「今日は、いっぱい話せたね」 「まぁ、ね。…今まで鈴仙が話してくれなかったんだけどね」 「わたしは…貴方と話せなかったの」 「…話せなかった?何で?」 「貴方が、男の人って事もあったし…そう、恐かった」 鈴仙の言うことを黙って聞くことにした。 夕日に照らされる彼女は今まで以上に儚く感じた。 「今はそうでもないんだけど…恐かったの」 「だったら、聞きたいんだ…」 「えっと、何を?」 僕は、後ろから鈴仙を抱きしめた。 背中越しに明らかに戸惑っている事は分かる。 僕の顔が赤いのも何となく分かる。 「鈴仙は…僕が好き?」 「……」 鈴仙は答えない。 突然の告白に驚いているのか、彼女の動きでしか分からない。 「わたしは――」 僕は腕の力を抜いて、彼女を離した。 たとえ、どんな言葉を言われても僕の思いは伝えた。 …これで十分だった。 ぎゅっ 唇に柔らかい感触とともに、鈴仙は僕に抱きついた。 「わたしは――あなたが…好き。好きだよ」 時は夕闇に染まっていった。 「鈴仙」 「はい?」 「…幸せってこういう事を言うのかな?」 「少なくとも…わたしは幸せよ」 「そうか…。僕も幸せだ」 僕は鈴仙に口付けた。 その後、僕と鈴仙はてゐや永琳さんによって散々茶化されたりした。 ーーーーーーーーー少女選択中...ーーーーーーーーー 右左右左BA ピッ 無敵コマンドを入力した。 これで何が起きるか僕にも分からない。 ついさっきあった二つの選択もしていないから、適当に行動するべきなのだろう。 誰が入力したのか分からないけど…。 僕にはそれは何かの導きのように感じた。 「…無敵コマンドの導きがあらん事を――」 電波的な言葉を言いながら、僕は瞳を閉じる。 どうか夢の中だけは幸せが見られますように… 翌朝の永遠亭。 いつもと同じように、食事を摂る。 目覚めは普通すぎるくらい普通。 それでも不思議な体の軽さと、朝から感じる違和感だけは、ここ――永遠亭に来てからも 感じた事が無かった。 鈴仙はご飯を食べている。 てゐも普通にご飯を食べている。 永琳さんは他のウサギ達と違って豪華な食事を食べている。 うん、いつもの光景だ。 そう、三人とも僕の方をちらちら見ながら、赤い顔をしていなければ。 「あ、あの…三人ともどうかしたの?」 『べ、別にっ』 目線があった途端、全員が全員顔を背ける。 …? よく見ると、他の妖怪兎なんかも僕を見ていた。 別に朝に鏡を見たときは、何も無かった。 額に『肉』とも『骨』とも書かれていなかったし。 ズボンのチャックが開いているわけでもない。 顔が赤いのも気になる。 まさか全員が風邪を引いたとかそういう感じなのだろうか? …それだとしても、おかしい。 鈴仙やてゐ、他の妖怪兎はともかくとしても、 一応、不老不死…病にかからない永琳さんが風邪を引くなんてありえない。 「それだと…僕だけが何もなっていないって事だよなぁ…」 まぁ、おかしいのは最初だけだろうと思っていた。 流石に二、三日経ってみるとその様子がおかしいと言う事に気付いた。 鈴仙には、念のために例の事故を謝った。 僕のその言葉には驚いたみたいだけど、ちゃんと許してくれた。 とりあえずその日の、日の高い内に、やっぱり永琳さんに呼び出された。 「よく来たわね」 「…永琳さんが呼び出したんでしょう」 やっぱり、顔が赤いのは治っていなかった。 「ここに呼んだのは他でもないわ」 そう言うと、永琳さんは扉に向かって閂を仕掛けた。 これで外からは誰も入って来れない。 あれ? 「そんなに重要な用事なんですか?」 「えぇ、重要な用事よ。まぁ、そこに腰掛けて」 何故かイスは無く、永琳さんはベッドを手で示した。 何となく変だという違和感に駆られながら、僕はベッドに腰掛けた。 その時、たった一瞬だけ体が自分のものでないような感覚に駆られた。 ドン 「え?」 気付いたら、永琳さんに押し倒されていた。 両手首を片手で押さえられて、永琳さんの顔が近かった。 「どうかしら?」 何でこんな状態になっているか、それを考えるのに十数秒要した。 「…永琳さん、病気か何かですか?」 「あら、どうして?」 「…貴女が、こんな事をするなんて考えられない」 「そう、もしかしたら病かもしれないわね」 艶っぽい表情を浮かべて、永琳さんは両手首を押さえながら 馬乗りになった。 「恋の病って言ったら信じるかしら?」 「…冗談じゃ――」 「冗談だったら、こんな事を言わないわ」 もがこうにも、手首は塞がれていて、暴れる事も出来はしない。 動く事が出来ないし、今の永琳さんには恐怖すら感じる。 「ふふっ」 妖艶な笑み。 僕はその表情に吸い込まれそうになる…。 その時だ。 ドカン!とまるで、何かが粉砕するかのような音が聞こえた。 あまりにも大きな音が戸の方から響いた。 そこに居たのは―― 二匹の兎…いや、それはまるで兎の皮を被った鬼だった。 一匹の兎は手に木槌を持っており、恐らくそれによって閂があった扉を 粉砕したのだろう。 もう一匹の兎は、手に何故かリボルバーを持っていた。 言うまでも無い、鈴仙とてゐだった。 「師匠、その手を離してください!」 「あらあら、いけない弟子ね。こんな時に私の邪魔をしようだなんて」 そう言いながら近くにあった弓を手に取る。 拙い…この雰囲気は…互いに殺る気だ! 「六発です!六発以上生きていられた人はいません!」 そう言いながら鈴仙は引き金を絞った。 軽い音が響きながら、その弾は真っ直ぐ、何故か僕の方へ向かってくる。 ――違う その弾はまるで意志があるかのように、途中で曲がり永琳さんに向かって飛ぶ。 いや、そう感じさせる事すらトラップ、本当は最初から永琳さんに銃弾が飛んでいた。 ただ、惑わして僕に向かうように見せただけだ。 「くっ、その程度!」 すぐにバックステップで、永琳さんは距離を取って、その銃弾をかわした。 「もらったー!」 飛んだ先には木槌を構えたてゐが居た。 その木槌が振り下ろされる! しかし、彼女もそれを予想していたのか、既に回避行動に移っていた。 それでも頬を掠って軽く血が飛ぶ。 「こっちへ、早く!」 鈴仙に導かれて、僕は急いでその部屋から出て行った。 何が起こっているんだろう? 「ここまで来れば…大丈夫よね」 永遠亭の外に出て、僕と鈴仙は深呼吸をした。 「鈴仙、一体…何があったんだ?何か…おかしいよ」 いつの間にか感じていた違和感。 それは一体何なのか、僕は鈴仙にそれを聞いていた。 「あなた、自分で気付いていないの?」 「…何を?」 「雰囲気が、その…」 「雰囲気…?」 言いにくそうにしている鈴仙の顔は真っ赤だった。 「その、格好良くなりすぎてる…って言うか」 「いや…意味が分からないよ」 「それで永琳師匠も、てゐも…皆も今のあなたが気に入っちゃったみたいで」 …まさか。 あの時選んだ。妙なコマンド? 「どうかしたの?」 「い、いや…何でも無い」 アレが本当に効いたとしたら、いや…今の状態から考えるとすると それしかありえない。 「…とりあえず、今のあなたがどのくらい続くか分からないけど…守ってあげる」 「そう言えば、鈴仙は…みんなが受けてるような効果が無いみたいだけど?」 「わ、わたしは…その」 真っ赤になりながら、そっぽを向いた。 どうやら、聞いてほしくはないらしい。 「…それで、逃げ切ればいいのか?」 「命をかけた鬼ごっこね」 嫌な響きだ。 命までは取られないだろうけど…永琳さんの態度を見ると捕まったら 色々なものがなくなりそうだ。 「とにかく、竹林を越えて…里でもいいから逃げ込んで!」 そう言いながら、リボルバーを構える鈴仙。 「ところで…鈴仙、その銃は?」 「山猫って呼ばれてた人から貰ったの」 …どうやら、違う次元の人が紛れていたようだ。 その人はきっと『リロードがレボリューション』らしい。 「…鈴仙、頑張って。あと怪我させないようにね」 僕は、竹林に向かって走り出した。 「頑張れ、か…。うん、頑張ろう」 竹林には既に敵の兎部隊が、たくさん来ていた。 けど、突破できない程度ではない! 鈴仙のためにも…突破する! 「うわぁぁぁぁ!」 後ろを見ずに必死に走る。 敵の方が圧倒的に早い。さすがは鍛えられた兎だ。 「うさうさー!」 「うさー!」 数十、数百…これだけに追われている状態なんて人生史上にない経験だろう。 しかし、そんな事は考えてられない。 今は逃げ切らないとならない。 「うさー!」 僕は背後に、気配を感じながら必死に竹林を駆け抜けた。 竹林を抜けた頃には、僕の足はとっくに笑っていた。 動く事すらままならない。 二度と走りたいとも思わない。 木の根元で倒れていると、人の気配があった。 また妖怪兎か? と警戒したところ、現れたのは見知った月の兎だった。 「大丈夫?」 「…鈴仙、まぁ大丈夫だよ」 よく見ると、彼女の服なんかも所々破れていた。 幸いにも肌に傷はないようだけど。 「…あのね。わたしは、あなたに言わないとならない事があるの」 「何?」 「…貴方がおかしくなった原因、わたしなの」 「え?」 「…前から、貴方はわたしの瞳を見ていたでしょ?あの時に、 簡単な幻惑――言うなれば狂気をかけたの」 「…どんな効果?」 「自分から、格好良くなろうとするような効果」 そんなのが掛けられていたのか? いや、思い当たる節は結構あった。考えてみれば、いつも僕は彼女の 瞳を見ていた。それでは、そんな幻惑もかかるだろう。 自分から格好良くなる気はなかったけど…どこかしら、なっていたのかもしれない。 「それが、こんな結果か」 「…ごめんなさい」 「別にいいよ。ところで、どうしてそんな事を?」 「…から」 あまりにも小さな声だった。 「あなたが…好きだったから。もっと格好いい貴方が見たかったの」 でも結果は永遠亭の者がちょっと変になってしまった。 もしかしたら、あのコマンドを選んだのも鈴仙の影響だったのかもしれない。 「…格好いいか分からないけどさ…。僕は――」 「……」 「僕は、鈴仙が好きだ」 何だ。結構簡単に言えるじゃないか。 走った所為もあって、心臓がドキドキ言っているけど。 『永琳さま、突撃しますか?』 「いえ、もう終わりみたいね」 『どう言う事ですか?』 「彼は――ウドンゲとくっついたわね」 落胆と諦めの声が妖怪兎の方から聞こえた。 「これで、久し振りの恋も終わり、か」 永琳も気付いてはいない。 その恋の病というものは二つの狂気のようなものから成り立っているという事に。 一つの狂気は恋する『月の兎』の狂気。 もう一つは恋をしたかった『普通の人間』の狂気。 人の想いとは具現するようだ。それこそが彼の選んだ『コマンド』なのだ。 ちなみに数日後、その『コマンド』の狂気はあっという間に消えてしまっていた。 月の兎の恋と、恋をしたかった普通の人間の願いが叶ったかもしれない。 後書き。 ごめんなさい。 色々やりすぎました。ごめんなさい。 …こんな風に自分で首をしめてどうするんだろう? とにかく、ごめんなさい。 補足。 コマンド入力=好感度がマックスになる。 鈴仙が(半分くらい)みんなの狂気を促しました。 てゐ。漁夫の利を狙っていたけど主人公を鈴仙に取られて失敗。 師匠。今回の多分一番の被害者。狂気に晒されてちょっとだけ、変になった。 注意点。 おかしい事が起こるので、出来る限りコマンドをあまり使わないようにしましょう。 何事もほどほどに(暴走すると手がつけられません)。 最後に、ごめんなさい。 とりあえず首吊ります。 1スレ目 530-543 550 557 ─────────────────────────────────────────────────────────── 603 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/22(土) 01 42 06 [ S8SIfbtc ] ここでちょっと無意味な質問。 自分が風邪を引いたとして、東方キャラに看病してもらうとしたら誰がいい? そんな告白じゃないけどほのぼのなSS書いてみようかな……って思って。 610 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/22(土) 17 06 05 [ OCbEik9U ] 603 鈴仙。 風邪で伏せってる男の看病を買って出るも、 師匠から処方された座薬を入れる段になってから 二人して顔真っ赤にしているという… しまった、ほのぼのどころかとんだ恥辱プレイじゃないか。 611 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/22(土) 17 14 12 [ ZlkrqM1c ] 610 そこで決め台詞ですよ 「鈴仙、愛してる」 ─────────────────────────────────────────────────────────── 初めに、これはプロポーズスレ 530-531の話に僕が勝手に続きを書いたものです。 人様の作品に勝手にアナザーを書くのはどうかとも思いましたが。 ぶっちゃけ、鈴仙のこのシチュエーションじゃないと僕の力量じゃアイデアを生かしきれませんでした。 よいきっかけを下さった530様に感謝しつつ。 530-531から続く。 あれ以来、僕が鈴仙の裸を見てしまってから、 なんと! 前以上に鈴仙に声をかけてもらえるようになった!! 朝、廊下ですれ違う。 「おはよう、ヘンタイ」 乾いた笑顔がまぶしいぜィェァ! あれ? 永琳さんのお手伝いで鈴仙と一緒に薬草を探しに行った時も 一歩後ろを付いてくる鈴仙が突然つぶやいた。 「スケベ」 思わず振り返るとジト目で言われた。 「なに、盗み聞き? サイテー」 チキショウゥゥゥ 僕は涙を拭きながら駆け出した。 確かに悪いのは僕さ、でも、だからって、こんな扱いされるなんて…… 僕が他の人といるときは鈴仙も普通だった。 ウサギたちと一緒に長い廊下の掃除をしていたときは 「お掃除ご苦労様です。がんばってくださいね」 と最高の笑顔で言われた。 ウサギたちはそれぞれの持ち場へ掃除をしに行く。 僕は鈴仙の笑顔のギャップに見とれその場でポカーンとしていた。 鈴仙に睨まれてあわてて動き出すが、足元のバケツを引っ掛けてこぼしてしまった。 うあぁぁしまった、廊下が水浸しだ。 手持ちの雑巾だけじゃ拭ききれない、新しい雑巾はどこ…? 僕がおろおろしていると僕の視界が急に暗くなる。 後ろから顔を覆うように頭に雑巾を載せられた。 「バーカ」 そう言ってすぐに背を向け歩いていく鈴仙。 「まって! 鈴仙、わざわざ僕のために雑巾を持ってきてくれたの?」 「そんなわけないです。自意識過剰はキモチワルイ」 く……それ今迄で一番グサっときた。 でも、なんだろうこの気持ち……僕は内なる自らの新しい感情の芽生えを感じていた。 「ありがとう、鈴仙」 素直に礼を言ってみた。 「n……えと……な、なにまじめにお礼なんて言っちゃってるんですか? ヘンタイの癖に いまさら遅い。信じられない、アリエナイ、変人、サディスト、マッド、ひきこもり、存在感 薄、嘘つき、変な髪形、えーっと、あと、とにかく……エッチ!」 顔を真っ赤にして、耳をピンと立てて怒る鈴仙。 そしてそのまま行ってしまった。 「僕はMなのかもしれない」 そう思った、だって今の鈴仙がたまらなく可愛い…… 鈴仙に冷たくされて、嬉しくなって礼を言って、 鈴仙がよけい顔を赤くして取り乱すという僕的素敵ワールドが何度も繰り返された。 まぁ、鈴仙にとっては楽しいものではないだろうが 心なしか前よりもっと頻繁に鈴仙に声をかけられるようになった気がした。 そんなある日、永琳さんから話があると呼び出された。 永遠亭の奥の部屋に入ると永琳さんが座して僕を待っていた。 僕も永琳さんの目の前に座る。 永琳さんは微笑むと僕にお茶を出してくれた。 「お茶をどうぞ、ヘンタイさん」 !! 「これはこれでアリだ」 僕が親指を立てると永琳さんはあきれた表情で言った。 「あらあら、本当にヘンタイなのかしら。まぁいいわ。今日の話はそれとも関係があるのよ」 言いながらしぐさで僕に茶を促す。 素直に飲む。 うぇ、つーんて、辛くてしょっぱい、涙出る。 永琳さんはニコニコしている。 やっぱりこういうのは嫌かも……でももしこれが鈴仙なら…… 僕に塩わさび入り緑茶をだしてニコニコしている鈴仙を思い浮かべる。 うん、悪くない。 ということは僕はただのヘンタイではなく、鈴仙だから…なのか? 「最近、鈴仙と仲がいいみたいね」 「いえ、いじめられています。自業自得では在るのですが。」 「でも、その前はほとんど口聞いてもらえなかったんでしょう?」 「それは、確かにそうですが…」 永琳さんは少しまじめな顔をしていった。 「何が自業自得なのかは聞かないで置いてあげるけれど、ね。それよりも、あの娘の過去は聞いている?」 「月から逃げてきた、という話は噂で」 「そう。彼女は月につらい想い出がある。そして、あなたをみるとそれを思い出す。あなたが来たばかりの頃はそう言っていたわ」 「それは俺が…」 「外から来た人間だから、でしょうね」 「俺は知らない間に彼女に嫌な事を思い出させていたのか…」 「でもね」 そう言ってから一呼吸おくと、永琳さんは自分のお茶を飲んだ。 あ、顔をしかめた。 自分でも味が気になってたのか、チャレンジャーだなぁ。 「鈴仙が過去を思い出すのは何もあなたのせいだけではないわ。とくに、この間の花の異変から時々 難しい顔をしてふさぎこむ事もあったのよ。けれど最近は吹っ切れたみたい。それはきっと、あなたに関係がある」 永琳さんはそう言って俺の瞳を真っ直ぐに見つめてきた。 吸い込まれそうになる、俺の心を見透かされているようで。 そして永琳さんは微笑んだ。 「だから、あなたにお礼を言おうと思って。鈴仙を元気付けてくれてありがとう」 「でも、僕、嫌われるならまだしも……信じられません」 「ふむ」 永琳さんはあごに手を当て考えるしぐさをする。 「盗み聞きをしているてゐ、あなたはどう思うかしら?」 バタンと音がしてふすまが倒れ、アハハと愛想笑いをするてゐが現れた。 「そ、そうですね……確かに鈴仙は最近あなたの話ばかりしています」 え……俺の脈が速くなっていく。 「あ、そういえば昨日も……」 てゐは急に瞳を潤ませ、しなしなと壁にもたれかかった。 耳をパタッと倒し髪を指に絡ませながら真っ赤な顔で言った。 「私、あの人のことを思うと……ウサウサが止まらないのっ!!1!1 ……って鈴仙がいってましたよ?」 「ウサウサ!?」 ドキンと一つ僕の心臓が跳ねた。 我ながら分かりやすいと思った。 いつのまにか、僕は本気で鈴仙に惚れてしまっていたらしい。 「僕、鈴仙に会って来ます」 「そうね。いってらっしゃい、後悔のないように」 立ち上がり、永琳さんに礼をしてから部屋を出た。 「ところでてゐ、ウサウサって何?」 「嘘です、たきつけたら面白そうだったのでつい」 「……。私もウサウサがとm」 「やめてください(笑顔)」 永遠亭の外、竹林で鈴仙は竹の間から細切れに見える青い空を見ていた。 風が吹く、何かに耐えるように自らの両肩を抱く鈴仙。 冷たい風じゃない、ならばきっと耐えているのは感情の波だろう。 声をかけようとすると、彼女が何か独り言をつぶやいた ……。 それは僕の名前だった。なぜ? やっぱりてゐの言ったとおりなのだろうか。 声をかけるのがためらわれる。 もしこのまま彼女を放って置いたなら あがなえない内なる激情の渦に耐え切れなくなった彼女は ついうっかり僕が見ていることも知らずにウサウサするのだろうか見たい見たい見たい。 じゃなくて。 「鈴仙」 暴走したのは僕自身の心。それを抑えて声をかけた。 「な、なんのよう?」 一人で物思いにふけっていたところを見られたためなのか、鈴仙の反応はぎこちない。 いつものようにいろいろ言われる前に俺はすばやくその場に膝を付いて頭を下げた。 「この間はごめん! わざとじゃないんだ、って言っても鈴仙に嫌な思いをさせたのは事実だし、どんな罰でも受けます。 だから本当にごめんなさい!」 は? 馬鹿じゃないの? そんなんで許されるわけないじゃない。 罰を受ける? なら、今すぐ私の前で逆立ちしながらえーりんえーりんしてもらおうじゃないの! スッパで! 「お代官さまそいつぁ無茶だ」 「??」 あれ、予想した返事が来ない。 「御免忘れて」 もう一度頭を下げる。 「べつに……」 鈴仙はうつむいて、小声で答えた。 「べつにこないだの事はもういいの。あんなの、てゐとか師匠にはよくやられるし……、ただ、ちょっとドキドキしたって言うか…」 「え?」 予想外の答えに俺が顔を上げると、鈴仙と目が合った。 かぁぁぁぁっと鈴仙の顔が赤くなる。 「ああああやっぱりダメ。許さないヘンタイ、スケベ! あなたなんて大っ嫌いなんだから!!」 ぷいっと横を向く鈴仙。 その兎さ耳は中に「の」の字を書いていた。 だから僕は言った!! 「でも、僕は鈴仙が大好きだ!」 「!!」 鈴仙の耳がピンと伸びる。 「ほ…本気、なの? へンタイの癖に…」 「こんなの冗談じゃいえないよ、鈴仙、君が可愛すぎるから、どうしても君のことを考えないでいられない」 俺は一歩近づいた。 鈴仙は動かない。 「ア、アブナイ人?」 「うん、そうかもしれない。僕はもう君の瞳に魅入られてる」 もう一歩近づく。 鈴仙はその場で横を向いたまま緊張してカチカチになっている。 あぁ、今すぐ鈴仙を抱きしめたい、けれど僕はまだ許してもらっていない。 今そんな事をしたら鈴仙は逃げてしまうだろう。 僕は再び頭を下げ手を差し出した。 「もし許してくれるなら、僕を受け入れてくれるなら、どうかこの手をとってください」 そのまま、少しの時が流れた。 不意に、鈴仙の緊張が緩んだ。 はぁ、と何かを決心するため息を付く。 そしてまだ頭を下げている僕のほうを向いていった。 「やっぱりあなたは馬鹿です。あなたをみて過去の重罪を思い出してた私まで馬鹿みたい。でも」 そう言って彼女は僕の手をとってくれた。 「あのとき、あなたも必死で生きているんだなって思いました。些細な事で、私にとっては重大問題だけど、 一生懸命になったあなたがなんだか可愛くて…それで、えっと…その…ほら、よく言うじゃない。 好きになった子ほど苛めたくなる…って」 好きと、確かに鈴仙は言ってくれた。 「僕も、鈴仙にならもっと苛められたいかも」 俺は鈴仙の手を引っ張ってその小さな体を両腕で抱きしめた。 鈴仙は抵抗しなかった。 「ばか…」 鈴仙はただ、俺の腕の中で小さくつぶやいた。 白くて細い指がぎゅっと俺を掴んで話さない。 「大好きだ、鈴仙」 「私も、あなたの事好きになりました」 end どうしても直視できなくて一部ネタに走った。 鈴仙にバカって言われたかった。 1スレ目 624 ─────────────────────────────────────────────────────────── 唐突だが僕は今、窮地に瀕している。 いや、どういう状態かというと…一部の人なら喜びそうな状態なんだが…僕にはその気は無いので… まぁ、簡潔に言うと、兎にマウントポジションを取られている。 その兎の名前は鈴仙・優曇華院・イナバ。 何でこういう状況なのかというと… そもそも僕は人間界に住んでいた。 小、中、高と全然女性運が無く、恋愛とは無縁の暮らしをしていた。 趣味は散策でいろんな山、谷、海岸等を歩いたもんだ。 だが、ある神社から歩いて1時間ぐらいの竹林を歩いていたら…僕らしくも無く迷ってしまった。 軽い散策のつもりだったからもちろん地図、磁石なんてないし食物も軽い物しか無かった。 そして迷って三日、ついに食料も底をつき「もう死んでいいか…」なんてことを考えながら眠りについて… 気がついたらこの永遠亭の布団で寝ていたわけである。 僕を介抱してくれたのは薬草探しに来ていた鈴仙だった。 そして、そこの居住者である八意永琳さんに話を聞いてみたら、ここは幻想郷という世界で、 僕はどうやら行きがけに通った神社(博麗神社というらしい)の結界を破ってしまい、この幻想郷に来たらしい。 帰ることを促されたが、僕は人間界は散策してもあまり面白くないが、こちらなら面白そうだという理由で断った。 そしたらそこの家主である蓬莱山輝夜さんがある条件と引き換えにこの家に住まわせてくれると言ってくれた。 輝夜さんの提示した条件はというと…ネット回線が突然繋がらなくなったから直してほしいとのことだった。 …後でてゐから聞いた話によると、輝夜さんは人間界で言うヒッキーらしい… 僕はもともと通っていた学校が工業系だった為に容易くここに住まわせてもらえることになった。(ちなみに原因はLANケーブルの断線だった。ここにいる兎の中でもかなりのイタズラ好きの奴が齧ったらしい。ちなみにその夜、おかずに兎の肉のソテーが出て、鈴仙とてゐが食事を辞退したのは言うまでも無い) さて、前置きが長くなったが今のこの状況になるまでのプロセスを思い出すと… 事の発端は永琳さんが僕と鈴仙に薬草を取りに行かせたことだ。 「この薬を作るのにどうしても必要な薬草なんだけどこの辺にはあまり生えていない希少な植物なの。だから2人で手分けして探して頂戴」 といわれて、僕らは二手に分かれてその薬草を探し始めたのだが… しばらくして鈴仙が僕の探しているところにやってきた。 「あっち探してたんだけど生えてそうに無いの。だからこっちを手伝うわ」 と言って一緒に探し始めた。 「おいおい、これじゃあ永琳さんが2人に頼んだ意味無いんじゃあ…」 「いいの。貴方の場合見落としがあるかもしれないから。」 流石に少しカチンとくる言われ様だったが、実際鈴仙の方が薬草探しは慣れているので言い返せなかった。 そしてしばらく二人で探しているといきなり鈴仙が僕の正面に立ちはだかった。 「…おい、何のつもりだい…」 「貴方に…話したいことがあるの。」 話したいこと?なんなんだ?と思いつつ「なんだい?」と聞いてみるとその"話したいこと"はものすごいことだった。 「…あのね…わ、私は……あ、貴方のことが好き!…なの…」 「…はい?」 いきなりのことだった。まさか愛の告白をされるとは思わなかった… 「…い、いや…でも…その…」 うん、この時の僕ほどキョドってた奴はいないな 「その…何?」 鈴仙が顔を近づけてきた。 「そ、その…まず聞きたいことは…なんで僕なの?鈴仙みたいに…か、可愛い女の子には…僕みたいな輩は…不釣合い…」 「そんなことない!私なんて可愛くなんか無いし、それに…貴方は…そんなに自分を卑下すること無いわ。少なくとも私にはカッコいい」 「う…でも…僕は…そんなに君が言うほどアレじゃないし…その…その…」 「…結局貴方は私と付き合うのが嫌なの?」 「い、嫌だなんてそんなことは!」 「じゃあ、なんで答えてくれないの!」 「そ、それはその…」 うん、この時の僕ほどヘタレな奴はいないな… すると鈴仙が「ああ!もうじれったい!」と言いながら僕を押し倒してマウントポジションを取った。 「う、うわ!ち、ちょっと鈴仙?」 仰向けに倒れた状態で鈴仙の顔を見ると…な、泣いている? 「どうしてハッキリしてくれないの!私貴方のそんなところが嫌いなの!いつもいつもその場の雰囲気に流されて!自分の意見を押し通したことなんて一回も無い!」 「鈴仙…」 「もっとハッキリしてよ!私だって…私だってそんな貴方だけど大好きだから勇気を出して告白したのに…やっぱり貴方は自分の気持ちを出せなくて…私は…私は……」 「…ゴメン…ゴメンよ…鈴仙……僕は人間界にいたときもこんな感じだから何も出来ず、ただ意味の無い生活をしてたんだった…学生の時だって…好きな人はいたけれど…そのことを伝える勇気が僕には無くて…結局その人は僕の友人と付き合って…僕はそれを祝福してやることしか出来なかったんだ…自分の…自分の気持ちを結局無視して…」 「○○さん…?」 「自分の気持ちは…ハッキリと伝えなくては相手には伝わらない…鈴仙、僕は…僕は今から君に僕のキモチをぶつけるよ!」 「○○さん…」 「鈴仙、僕は…僕は君のことが好きだ!僕と…僕と付き合ってください!」 「…○○さん…その想い、確かに受け取りました…よろしくお願いします!」 「鈴仙…ありがとう……」 僕らはそのまま抱き合い、そしてキスをした。 今まで僕が伝えられなかったこと…これからならそれも取り戻せそうな気がする… 実はてゐの子分の兎がその情事を覗いていて、永遠亭に帰ったらてゐの手荒な祝福を受けたのはまた別の話… 1スレ目 940
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鈴仙9 うpろだ1281 姫は突然こう切り出した。 「ところで○○、貴方も因幡たちと同じように私のペットよね」 私は答える。 「申し上げるまでもなくそのとおりにございます、姫様」 姫は間髪いれずにこのように仰った。 「外の世界ではペットには首輪を着けるんでしょう?」 硬直している私を尻目に、姫の、その細く美しい手が、着物の懐に差し込まれ リールと錠前のついた赤い皮製の首輪を取り出したのであった。 「……」 私は言葉を失った。それはあまりにもあんまりな光景であった。 美しく、知的で、清潔で、私のような愚鈍な凡人には手が届かないような 高嶺の花を絵にかいたような輝夜様が、こともあろうにかくのごとき 変態的な意味でマニアックなアイテムを嬉しそうに見せ付けながら 期待に満ちたような眼で私を凝視なさる。 それはまるで『有無は言わせない』と無言で語っているかのようであった。 「わー。○○にドン引きされちゃったわ」 私が固まっていると姫様は目を細めて口を隠し、お茶目にもそう言われた。 私は、脂汗をかきながら絶望的な反論を試みる。 「姫様、そんなものを何処で入手されたかはともかく、廊下で他者の視線をはばからずに そういった行為に及ぶのはやめていただけませんか」 しかし当然ながら姫様はそんな私の意見に耳を貸すことはない。 「ねぇ○○、他人の性癖をとやかく言うのは許されざることだと思わない?」 姫は真紅のリールを人差し指にぐるぐる巻き、首輪の末端部を唇に近づける。 それはあまりに扇情的な光景で、私の中では、姫に抱いていた神聖なイメージが 一段と崩れると同時に、短絡的にも、姫と低俗な行為に及ぶ想像が脳裏をかすめた。 「それより、またそんなものばかり買って、八意先生に怒られますよ」 「大丈夫、永琳も首輪の○○を見たいと言ってはばからなかったわ」 なんと、この問題はすでに永遠亭のトップ二人のコンセンサスの得られたところであるようだ。 私の逃げ道は封じられた。カンナエ殲滅戦でのローマ軍のように、 私はじわじわと近寄ってくる姫を退けることかなわず、こんなことなら 姫のパソコンのセットアップのとき反対を押し切ってでも保護者機能をインストールして オンラインショッピングなど不可能ならしめるのだったと後悔したが、後の祭りだった。 「愉しいわ」 姫様の声は心底うれしそうだった。 「愉しいですか」 その時の自分の声色は、おそらく不機嫌を直に出したような そんなものであったはずだ。 姫は私がそんなとき、決まって、からかうように言うからだ。 「ええ、とても愉しいわ。貴方はそう思わないの?○○」 つまり、その言葉は私が心底滅入っているようなときに使われる。 例えば今、私の首には真新しい、赤い革製の首輪が装着されており 灯篭に照らされた銀色の金具の照り返しは、妙に妖しい雰囲気を醸し出し その首輪から伸びるリールが、姫様の手に握られているのだ。 場所は廊下、それも厨房と食卓を繋ぐ部分である。 姫様と私は、晩餐に出向くために歩みを進めているのだが、 よりにもよって、そんな時に、こんな場所を歩けばどうなるか 私も、おそらく姫様も、口に出しこそしないが、理解していたろう。 「私は不愉快です」 あまり姫様に、というよりも、女性に対して強くものを言うのが 得意な性分ではないのだが、そのとき私ははっきりと告げた。 「不愉快?」 姫様の歩行が停止した。その長く、美しい髪が揺れ、端正な御顔が こちらを向く。 私はこの時の姫様の表情をどう表現したものか迷う。 嘲っているようであり、同時に自らの不満に同意を求めるような そんな眼で、姫様は私を見つめていたのだ。 灯篭に照らされたその表情は妙に艶かしく、私は一瞬言葉を続けるのを 躊躇ったが、ようやく出た搾り出すような声に対して、姫様は 「……ええ、私が恥ずかしいのも勿論ですが、姫様が―」 「それは」 姫様の右の人差し指が私の唇を封じた。左手はリールを掴んでいるからだが その右人差し指は、まるで蛇か蝸牛が這いずるがのごとく 「なぞる」というよりはもはや「なじる」というべきような積極性でもって 私の顎を、喉を、胸を伝い、そしてそこで右に回り、来た時よりもやや 横にずれた軌跡をとりながら、私の頬に戻った。 「いいの」 姫の細い指が私の首筋を伝うだけで、私は反論する気力、勇気、使命感 それらをすべて奪われた気がした。 姫様の手は冷たく、その接触はくすぐったかったが、同時に私に 何か後ろめたい悦楽を与えもした。 よくわからないが私は既にその虜であり、ものを考えるのも困難だった。 「……いい……の、ですか?」 答えはすぐには返ってこない。姫様は私の頬で少しの間遊ばれていた。 あるいはそれだけであれば、死力を尽くして『もうおやめになってください』 の一言くらいはなんとかなったのかもしれない。 だが、腕一本の距離にある、姫様の、だが普段の姫様のものではない眼が 私を束縛していたのだ。 数分ほどもそうしていたように感じたころ、ようやく姫様の唇が開いた。 「そう。だから」 私の頬を撫でていた姫様の手は、あたかも名残惜しむかのようにゆっくりと 私の首筋、そして肩口を伝ってから、主の元へ帰っていった。 「○○、食事にいきましょう」 そしてその手が戻るのと時を同じくして、姫様の眼からも、あの不満の色は 消えうせ、からかうような、自分の玩具を弄り回すような、いつもの顔に 戻っていた。 私は姫様の曳くリールに抗うなど、もはや考えもしなかった。 姫の気まぐれで○○が首輪をつけられて半日、 真紅のレザーがまだ眩しい新品の首輪をつけたまま ○○は夕餉に向かわされた。 その様子に、永琳は目を丸くした後 変わった趣向ですね、とニヤニヤしながら 短く言っただけだった。 遅れてやってきたてゐは、○○にそっちのケが あったなんて……と、クスクス笑いながら いやらしい視線をこっちに向けてくるのであった。 そして最後にやってきた鈴仙が 「……○○、それ、何?」 襖を開けるやいなや、硬直し、口をぱくぱくさせてから 乾いた声でたどたどしく述べるのである。 ○○にはなんとなくわかった。ああ、ここに居る面子で 自分に首輪をかけると予め知っていないのは 鈴仙だけなのだな、と。 「何って、その、姫様が、ペットには首輪をつけるものだからと」 何かと『地上人の』自分を見下してくる鈴仙には、あまり 弱みを見せたくなかったので、シンプルに答える つもりだったが、やっぱり恥ずかしくて、視線をそらして うわずった声で答えるのが精一杯だった。 顔が熱っているのが嫌でも解る。真っ赤なのだろう。 「首輪……ち、地上人はよくわかんないことするのね……」 夕餉の間、自分と鈴仙の顔は真っ赤なままだった。 自分と鈴仙だけがちらちらと互いの顔を気にしていた。 両者とも食事がまともに口に入っていないのが明瞭だった。 そしてそれ以外の面子は、その他の因幡たちも皆が それを見て憎らしい笑みを浮かべ、押し殺した笑い声すら 発し、われわれ二人の様子を楽しんでいるようであった。 夕餉が終わり、デザートの人参シェイク白腐乳風味を どうにか半分ほど食べ終えたところで、何の前触れもなく 姫がこう切り出した。 「ねぇ、因幡。○○の首輪、どう思う?」 俯いていた鈴仙はその言葉にビクッと身体を痙攣させ、 その真っ赤な瞳を見開いてひきつった声でこう述べた。 「ぇ……ええ!姫が付けられたんですよね、センス いいです、○○によく似合ってますよ!」 姫は間髪入れずに切り返す。 「外の世界ではこうするらしいの。素敵よね」 鈴仙のぎくしゃくした愛想笑いから勢いが削がれていく。 「外の世界にも素敵な文化があるものよね」 そ、そうですね!鈴仙はそのように答えた。 ○○は鈴仙の受け答えがなにやら罠に嵌められていく 兎のそれに近く思ったが、どうにも、この状況から 話を切り替えるうまい思いつきが出ず、ただ傍観 するに任せていた。それがいけなかった。 「あら、月兎の貴女にもコレの良さが解るの?なら 話が早いわ。実はもうひとつ用意してあるんだけど」 姫が取り出したるはもう一セットの赤い首輪。 鈴仙の血の気が見る見る引いていくのがありありと 見て取れる。 ○○は、他の兎たちのニヤつきの意味を 理解し、そしてこれからどうなるのかもある程度 想像して、今しがた食べたものを戻さないように するのが精一杯であった。 「なんで」 鈴仙は問う。 「こんなことになってるのよ」 震える声で鈴仙は問う。 「いや、それはその、やはり輝夜様と八意先生の命令ですから」 ○○は慌てた声で応じる。 「やはり私としては逆らうわけには」 いつ爆発するかわからない鈴仙の怒気を刺激せぬよう下手に応じる。 「冗談じゃないわ」 鈴仙は震える声のまま、静かに言った。 ○○と鈴仙は○○の部屋にいた。 いや、この表現は適切でなく、○○は客間のひとつを間借りしているので ここは○○が寝起きする客間である。 廊下からは因幡たちが夕餉の後始末をしに往来する音が聞こえていたが しばらく前にそれも止んでいる。 二人は動こうとしない。動けないのだ。 ○○の首につながれた真紅にきらめく皮製の首輪。 それと同じものが鈴仙の首にも巻かれ、そしてその両の首輪から 伸びる紅いリールは互いを繋いでいる。 その長さは30センチくらいしかなかった。 これでは、どちらが動いても窮屈でしかたがない。 ゆえに、二人は背中を合わせて座り込んでいた。 「貴方を見ていると虫唾が走って狂気の眼を使いそう」 という鈴仙の脅迫にあわせた結果である。 ゆとりのない拘束がこの形態を完成させた。 しかし、背中同士が密着するのは、互いの姿が見えないこともあり 窮屈と同時に、二人に妙に官能的な感覚を与えもした。 ○○は鈴仙の身体が震えていることを知っており、長い髪の一部が 自分の肩を伝って自らの項にしな垂れかかっている感触がやけに心地よかった。 鈴仙は、○○の呼吸が浅くなっていることを知っており、その自分より 大きな背中に、身体を預けることが、自分の中の何かを満たしながら傷つけていると感じた。 そして、二人とも、その心音が相手に筒抜けだ。 部屋は暗くなっていく。日はとうに落ち、障子を通して伝わってくる やわらかい月の光が、部屋を照らしていた。 その部屋の中で、鈴仙がどんな姿なのか、○○にはわからない。 その光の中で、○○がどんな顔をしているのか、鈴仙にはわからない。 時間だけが過ぎてゆく。 最初にこの部屋に来たとき、因幡の一匹が 「お二人ではご用意できないでしょうから、敷いておきますね」 といって、二人分の布団を敷いていった。 もっとも、リールでつながれているので、別々の布団が敷いてあっても 実際はかなり近寄らなければ眠れないだろう。 リールの長さは、互いの肩が触れ合う程度に短い。 「○○」 鈴仙が唐突に口を開いた。 「なんでしょう」 ○○はなるべく冷静に応じる。 「姫に気に入ってもらいたくて、こんな首輪買ったの?」 声こそ、いつもの、鈴仙が怒った時聞かせる無感動なものに戻っていたが、 いまだに震える背中が、鈴仙の未だ動揺している心を○○に筒抜けにした。 「いえ、姫様がオンラインショッピングで、勝手に。私も抗議したのですが……」 後ろのほうは調子が弱くなって、鈴仙に聞こえたか疑問だった。 確かに、あの首輪を買ったのは姫様だ。 しかし、私は姫様の懐からまろび出たそれを見て、様々な下心を抱いてしまったし 姫様の挑発にも、むしろ快感を得てしまう、抗うことができなかった。 口は否定しても、脳では容認してしまったと言ってもいい。 「○○、嘘ついてる」 また、鈴仙の声がわなわなと震えだした。 「波読んだ。動揺してる。嘘つくときの波長。どこまで嘘か知らないけど」 しかし、その震えには、先程のような怒りはなく、むしろ、 「永遠亭の財布は全部師匠が握ってるのよ?姫様だけで買えるわけないじゃない」 何かを訴えているような、そんな声だった。 「師匠も私の首輪姿が見たかった、と姫は仰いました」 「……今度は本当のこと言ってる」 「実際のところ、私にもわかりません。私の首輪が見たいといったのに、鈴仙様にもつけたり、 客間に放置されたり、お二人が一体何を考えてらっしゃるのやら」 本音を打ち明けると、鈴仙は口をきかなくなった。これが本当だと解ったのだろう。 一体どれだけ時間が過ぎたろうか。 やがて遠くの部屋からも、因幡たちの声が聞こえなくなった。 永遠亭が眠りに付く時間に近づいている。 月は相変わらず、障子を優しく照らしていた。 鈴仙は不貞腐れた声だった。多分口をとがらせているだろう。 「○○」 「はい」 「今変なこと考えたでしょ」 「不可抗力です」 鈴仙は不機嫌な声だった。多分眉間に皺を寄せているだろう。 「○○」 「はい」 「姫様に興味があってここに来たの?」 「はい。大部分は」 鈴仙は確認するときの声だった。多分いつもの顔に戻ったろう。 「姫様にしか興味ないの?」 「そんなことはけして。八意先生、因幡の皆、みんな好きですよ」 鈴仙は不安げな声で短く言った。多分視線を泳がせているだろう。 「私は?」 「好きに決まっているじゃないですか」 鈴仙は少し苛立ったような声だった。多分いつも見せる困った時の顔だ。 「そうじゃなくて、永遠亭の仲間……じゃ、なくて、同じ姫のペットとして」 「綺麗で知的な先輩がいてくれるのは幸福ですよ」 鈴仙は不安気な声だった。多分……私はこんな声で喋る彼女を知らない。 「……仲間を見捨てて逃げるような妖怪兎の女でも?」 「私が同じ境遇で逃げないと言い切れませんから」 鈴仙は必死に隠しているが涙声だった。想像するだけで罪悪感で胸が一杯になる。 「地上人を見下す高慢ちきな月兎でも?」 「輝夜様や八意先生だって月人ではありませんか」 鈴仙はしゃくりあげながら言うた。もういいよ、もうやめてくれ。 「○○は、私あんなに○○を莫迦にして、苛めてるのに、なんでその言葉が嘘じゃないの?」 「貴方が好きだからですよ」 「好きなの?」 「好きですよ」 「姫は?」 「勿論、姫が大好きです」 「っ……じゃあっ」 「貴方も同じくらい愛しいですね。困ったことに」 二人はリールで繋がったまま、ひとつの布団で一緒になっていた。 ○○の両腕の中で、彼の身体に包まれて、鈴仙はずっと泣きじゃくっていた。 「っ……だ、だって、○○っ……ってばっ、お父さんみた……なんだもん、 わだ……っく、私そん、なの駄目っ……っく、ダメだもん、地獄行きだも……ん、 こ、こんな幸せ……にっ……してたらいけなっ……だも……」 「結局それが狙いだったのですか?」 朝ごはんの席で、輝夜にお吸い物を奪われながら○○は尋ねた。 「はい、大部分は」 「……盗み聞きしていらしたのですか」 ○○はあからさまにいやな顔をする。 リールは外れたが、その首にはいまだに紅い首輪。 風呂に入るときくらい外して欲しいが、鍵は輝夜が握っているのではずれない。 ピッキングでも練習したものか。 「ふふ、悪かったわね。でも、あの因幡には少し温もりが必要だったのよ」 ○○の食器に箸を伸ばして、更に漬物を奪う輝夜。 ○○は諦めたふうに、皿ごと輝夜に渡しつつ尋ねた。 「私からは八意先生にたっぷり甘えていらっしゃるように見えますが……」 輝夜が眼を細める。 「ねえ○○。永遠亭に無いものって何だと思う?」 「ローカルエリアネットワークです」 「……貴方が仕事に欲しがってるものじゃなくて。わかった、今度曳いていいわ。 ヒントはね、○○、男性よ。それもある程度大人びた、他者の支えになれる」 ○○は、解っている答えを更に適切なものにしようと、少し顎に手を当てて眼を瞑り、 開いたときには自分の食器から、果物が輝夜の皿に移動したことに気づいた。 「父親?いや、父性ですか」 「あたり。こんな広い屋敷に女ばっかり。あとは性別不詳の毛玉だけ。どう思う?」 「少女に適切な生育環境ではなさそうですね」 「そう。だから貴方が必要なのよ。私にはからかい相手として、あの因幡には支えとして。 そのためにはこの首輪、3980円以上の価値があると思わない?」 具体的な値段を出されて、案外安物だったことに気づいた○○は少し残念な気がした。 しかし、いつものシニカルな顔にすぐもどり、苦笑しながら感想を述べた。 「まったく、姫様にはかないませんな」 「当たり前よ。私を誰だと思っているの」 「○○」 背中からふいにかけられた声は、瞬時に実体として現れ、そして足音を小刻みに刻みながら 彼の背中へと飛び込んできた。胴を抱きしめた手がぐるりと半回転して、彼の前に現れる。 ○○は、愛おしい彼女を抱き返し、頭を撫でながら尋ねた。 「何の御用ですか、鈴仙」 「少し甘えたかっただけ。いけない?」 「まさか」 fin 「え?姫がそんなことを言ってた?」 永琳はびっくりして振り返った。 「ええ、朝食のときにそのように」 永琳はあっちを向いたりこっちを向いたりしておかしいわねたしかとかブツブツと 呟きながら百面相していたが、10秒ほどで○○に向き直り、いつもの顔で言うた。 「一体何をお隠しに」 「なんでもないわ。お使いのメモは……」 「何をお隠しに」 「メモはかごの中よ」 「わかりました。いってまいります」 詮索無用。いつものことだ。 「おかしいわね……姫確か『因幡も人間もすぐ死んじゃうから子孫作らせておこう』とか言って 名案だと思ったからセッティングしたのに、あれ、じゃあこの新郎新婦の衣装はどうすれば?」 机に卒塔婆が叩きつけられた。 緑色の髪をした閻魔が永琳に向けて怒鳴る。 「オーケー永琳、そこを動くな!」 「ざ、ザ……ビショップ!?」 END うpろだ1311 まだまだ暑い夏が続く。 暑い日が続くと、当然のように体調不良を起こす者も増える。 今日も薬局は忙しい。 「こっちが解熱剤、こっちはビタミン錠剤です。 食後に服用してくださいね」 「栄養剤十本と湿布薬、消毒液に包帯、あと塩タブ一瓶と。 夏場の大工さんは大変ですねぇ」 「精力剤とゴムと…って、旦那、ちょっと消費早くないか?」 午前の客もはけた頃、珍しい客がやってきた。 「いらっしゃい…あれ、サボさんが薬局に来るの、初めてじゃ?」 「あんたまでサボマイスタ呼ばわりかい?まあいいけど」 夜に飲みに出ると、そこそこの確率ででくわす死神、小野塚小町だ。 サボリ癖があるため、霊夢にサボさんやサボマイスタなどと呼ばれている。 「ははは、まあ、そのへんの文句は博麗神社にでも言ってくれ」 「やっぱり広めてるのは霊夢か…やれやれ。 ああ、それはそうと、目薬をくれるかい? 目に入ったゴミが取れなくってねぇ」 「あ、それでさっきから右目がぴくぴくしてたのか。 どれ、ちょっと見せて」 小町の目を覗き込み、ゴミを確認するが見当たらない。 細かすぎるのか、よく見えない位置にあるのか… ガタン 「うーん、ちょっと見当たらないな… 目薬よりも洗眼薬の方がよさそうだ」 「なんでもいいからさくっと頼むよ、これじゃ昼寝もできやしない」 「いや幽霊運べよ…」 突っ込みを軽く入れながら、目にフィットする形の小さな器に薬を注ぐ。 「さ、こいつを目に当てて、上向いてまばたきして」 「ん…おお…これは気持ちいいねぇ」 「何気にうちの人気商品だったりするんだ。 川とか湖で泳いだ後なんかに目を綺麗にするのにね」 「おっ、ゴミが取れたみたいだ、すっきりしたよ」 「そりゃよかった。 他にも何か買って行くかい?」 「いやあ、とりあえず入り用なもんはないねぇ。 体には自信があるからねぇ、両方の意味で」 そういって、腕を組んで胸を持ち上げる。 「ははは、確かに見事だな。 サボリに効く薬以外は必要なさそうだ」 「えっ!?ま、まさかそんなもんがあるのかい!?」 「あったらとっくに閻魔様が買いに来てると思うがね」 「あー、そりゃそうか……今日は真面目に仕事しとくか。 それじゃ失礼するよ、ありがとさん」 「毎度。またそのうち屋台で」 夕方、今日の仕事も終わろうかという頃、てゐがやってきた。 「あれ、どうしたんだ、こんな時間に」 「昼に鈴仙、来た?」 「いや、来てないよ。 次は薬の補充のある明後日まで会えないんじゃ?」 「今日は永遠亭の方がお休みでさ、鈴仙がお弁当作ってこっちに来たはずなのよ」 「そんなおいしいイベントは無かったよ…」 「…○○、あんた死神と付き合ってたりする?」 「なんで俺がサボさんと…?」 「鈴仙が泣いてた。○○は兎よりも死神がいいんだって…」 「いやいや妖夢じゃなくててゐ、それがありえない事は…」 「分かってるけど、私じゃなくて鈴仙が思い込んじゃってるからさ。 死神と何かあった?」 「んー…確かに昼頃に店には来てたけどな。 目に入ったゴミが取れなくて昼寝も出来ないとか言ってたが」 「あのさ、○○…そのとき、小町の目を見た?近づいてじっくりと」 「ああ見た…って、え、まさか、そんなベタな!?」 「ベタだ!間違いない!とっとと誤解解いて来なさい!」 まさかのベタ展開。 波長を見ればすぐに分かるだろうに、そんなことにも気付かないとは…。 急いで来たものの、永遠亭に着いた時には既に辺りは真っ暗だった。 「ハァ…ハァ…着いた…鈴仙…」 「あら○○、こんなところまで、のこのこ何をしに来たの?」 「ハァハァ…れ、鈴仙に会いに…って、姫さま顔が能面みたいn」 ズダーン! いきなり足払いをかけられ、うつ伏せに倒されてしまった。 普段ならなんてことはないのだろうが、ここまで走ってきたために足の踏ん張りが効かなかった。 「いたた…な、なにを゛っ゛!」 そのまま俺の上に姫様が乗っかってきて、両手で俺の顎を思いっきり引き上げる… こ、これは機矢滅留・苦落血(キャメル・クラッチ)! 「ぐえええええ…」 「私のペットを弄んでくれたそうね? これはそのお礼よ!」 「ち、ちが…う…けふっ!」 「……」 ドサッ とりあえず開放してもらえたようだ…。 「三途の川を彼女に渡してもらう前に、言い訳ぐらいは聞いてあげるわよ」 「実は…かくかくしかじかうーうーうまうま」 「…嘘よね?」 「つくならもっと現実的な嘘をつきますが」 「波長を見れば分かるはずよね?」 「それは本人に聞かないと…」 「…分かったわ」 鈴仙の部屋の前に来た。 中からはすすり泣く声が聞こえる。 胸が、痛い。 二度ほど深呼吸をして、中にいる鈴仙に声を掛けてみる。 「鈴仙、○○だけど」 …返事は無い。 「鈴仙、入るよ」 襖に手を掛けた時だった。 「ごめんね、○○…」 「え?」 「私ね、○○のこと好きだったの。 毎週薬を補充しに行くのが待ち遠しかった。 お祭のとき、肩を抱かれて、もしかしたら両思いなのかなって思っちゃった。 今日なんて久々に平日休み貰えて、お弁当作って会いに行ったんだよ。 あはは、馬鹿だよね、私。 ○○には、ちゃんとした彼女いたんだもん。 勝手に舞い上がって、何してんだろ、私…」 「鈴仙…」 「ごめん、○○…今日は帰って…ちゃんと薬の補充の仕事はするから…」 「黙って聞いてれば好き勝手言いやがって…」 「えっ…」 「いいか鈴仙! 俺はお前が好きだ! この世界で一番お前が好きだ! お前の綺麗な赤い瞳が好きだ! 長く輝くような髪が好きだ! すらっとした細い体が好きだ! ちょっとくしゃっとした長い耳が好きだ! 普段しっかりしているお前が時折見せる暢気さが好きだ! からかった時の、ちょっとふくれてるお前が好きだ! 時々物憂げに月を見つめているお前が好きだ! お前の一挙手一投足が俺の目を惹き付けて離さないんだ! 俺にはお前しかいない! 鈴仙、俺はお前を誰よりも愛している!」 「嘘…じゃあ何で…」 「…あー、勢い良く告白した後でなんだけど…店に来たときに波長ちゃんと見なかっただろ?」 「あ…うん…」 「あの時な、目にゴミが入って店に来た小町の目を覗いてただけ」 「え……ええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?」 「まあなんだ、いまどきそんな誤解する奴は漫画にだって居やしないぞ…。 あ、気になるならサボさん本人に聞いてくれ。 どうせ昼間はどっかで昼寝してんだろうし」 「ううん…○○は嘘ついてないもの。 ○○…こんな天然ボケでも、私のこと好き?」 「そこも含めて大好きだよ、鈴仙」 「ありがとう、○○… …でも今日は帰って」 「え…」 「…さっきの告白、みんなで聞いてるんだもん、恥ずかしくて出られないわよ!」 「あ…」 周りを見回すと、人型ウサ型のイナバに姫様、永琳先生、てゐ、文がニヨニヨとした顔で俺を見ていた。 「!!!!!!!!!!!!!!! こ、こっちみんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 顔からフジヤマヴォルケイノとは正にこのことだ。 「あはは、そういうわけだから、ね?」 「ん…わかった。 それじゃ、明後日な。 愛してるよ、鈴仙」 「私も、○○のこと愛してるよ」 「本当に会わなくていいの?」 帰り際、姫様が俺に尋ねてきた。 「いいんですよ。 泣き顔なんて、見ても見せてもお互い辛いだけだから」 「本当にそう思ってる?」 「…本当は、告白の時、襖開けていきなり抱きしめようかとも思ったんですけどね。 でも、鈴仙の泣いてる顔なんか見たら、何も言えなくなりそうで。 そしたら誤解も何も解けなくなる。 でも正直、よく理性が持ったもんです。 鈴仙に、とにかく早く会いたいって思ってたから」 「そうね、よく踏みとどまったと思うわ。 なかなか出来る事ではないもの。 しっかりした彼氏じゃない、鈴仙」 「えっ?」 ぎゅっ 「○○…やっぱり我慢できなくて…」 「鈴仙…」 後ろから抱き付いてきた、愛しい人。 一目見たいのだが… 「あ、後ろは見ないで! 今の私の顔、すごいことになってるから」 「目が真っ赤になってたり?」 「それはいつもどおり!」 「じゃあ月みたいにクレーターが?」 「泣いただけでどうしてそうなるのよ!」 「ははははは、良かった、いつもどおりだ」 「…うん、もう大丈夫。 明後日、私のお弁当食べてよね」 「ああ、楽しみにしてる」 「それじゃあ、名残惜しいけど今日はこれで、ね」 頬に感じるやわらかい感触。 心臓がはちきれるかと思うほどの勢いで高鳴る。 同時に離れていく、背中の愛しい人。 「後ろは見ないで帰ってよ? 見られたら恥ずかしくて死んじゃうかも」 「それは困るな、俺の人生終わりじゃないか」 「もう、いちいち大袈裟なんだから…」 「そんなことはないけどな…ま、愛する人の頼みだからな。 またな、鈴仙」 「うん、またね、○○」 その日はどこをどう歩いて帰ったかも覚えていない。 そんな状態で、よくも迷わず竹林を出られたものだと思った。 だがそんなことよりも、鈴仙の手作りの弁当が気になって夜は眠ることが出来なかった。 …あれ…何か心に引っかかってる… 鈴仙のことじゃない…けど…すごく嫌な予感が… 次の日の文々。新聞の一面は、俺の告白が丸々書き出されていた。 薬局は臨時閉店せざるを得なかった。 主に羞恥心的な意味で。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「どうよ、今回のネタは?」 「いやぁ~、凄い反響で売上倍増でしたよ! また何かありそうな時は教えてくださいね! あ、これ今回の情報料です!」 「おーけーおーけー、まかしとくウサ」 ひょい 「これは○○へのプレゼントに使わせてもらうわよ」 「「あ゛」」 「それはともかく、二人とも覚悟はいいわね?」 「「イエス、マム」」 「 幻 朧 月 睨 ( ル ナ テ ィ ッ ク レ ッ ド ア イ ズ )」 「こ、この程度で新聞が売れるなら安い…もの…で…(ガクッ)」 「な…んという…記者…根性…(ドサッ)」 新ろだ107 「ねぇ○○、今日はポッキーの日なんだって」 「鈴仙、幻想郷にポッキーは無いと思うんだが…」 「今朝の文々。新聞に載ってたよ? 今日だけ香霖堂で売るんだって」 「はぁ、紫さんの気まぐれか。 しかし、何だってポッキーなんか…」 「ところでさ、ポッキーゲームって何?」 「は!?」 「…新聞に名前だけ書いてあるんだけど、驚くようなことなの?」 「んー、まあ、ちょっと…」 「へぇ…そういえば、こないだ外から持って帰った中に、このポッキーってなかったっけ?」 「あ…あるけど…」 「じゃあ、やって見せてよ、ポッキーゲーム」 「…………」 「○○?」 「あー、て、手伝ってくれるか?」 「いいけど…?」 俺は神無月に外界から持ち帰ったお菓子を入れている箱から、ポッキーを取り出した。 封を開け、一本取り出す。 「で、どうやるの?」 「あー、とりあえず、そっち側咥えて」 「ふぁい、ほれへ?」 「で、このポッキーをだ、その、両側から食べ進む…」 「ふぇ!?」 「先に放したほうが負けな…」 もう一方を咥え、食べ始める。 鈴仙も素直に食べ始める。 …どちらもポッキーを口から離す気は無く… ちゅ 「…まあ、こういうことだ。わかった?」 「……まだちょっと分かんないから、もう一回…」 「ん、そうか…」 再び一本のポッキーを食べ始める俺と鈴仙。 やはりどちらも離すことは無い。 「…ねぇ、まだ分かんない…」 「仕方ないなぁ…」 三十分後、ポッキーはカラッポになっていた。 「ねぇ○○…」 「…さすがに分かったろ?」 「分かんないから、エアポッキーで…」 「それじゃあ、分かるまでしようか?」 「…うん」 そしてまたたっぷり三十分、鈴仙とのキスは続いたのであった。 新ろだ112 昨日は夜遅くまで仕事をしていたせいか、強烈に頭が痛い。近頃はずっとこんな生活である。 今日も頭痛から始まる憂鬱な一日が始まる……はずだった。 「あ、おはよう○○。いつもこんな時間に起きてるの?もっと早く起きなきゃダメだよ?」 自分一人しかいないはずの家の中なのに、自分以外の声がする。しかも女性の。おまけに何やら良い匂いがする。 動かない頭を無理矢理回転させて考えていると、声の主が台所から姿を現した。 ……俺はまだ寝ぼけているのだろうか。それとも徹夜のし過ぎで頭が限界を突破したのだろうか。 今、目の前に兎の妖怪がいる。腰の辺りまで伸びた銀色のような何とも言えない不思議な色をした髪と、狂気を操る赤い瞳を持つ月の兎。もっと言えば、自分の意中の女性。 鈴仙・優曇華院・イナバである。何故彼女がいるのか全く理解出来ない。 自慢じゃ無いが、自分は外の世界では今まで数えきれない位女性に告白されてきた。……罰ゲームという名目で。 そんな、悪い意味で女性に人気だった俺の家に女性がいる。しかも食事を作っているのである。今日中に幻想郷が消滅しないか心配だ。 「ねえ○○。聞いてるの?」 「いや、ちょっと待て。何故あんたがここに居る。」 「それはもちろん玄関から。」 「いや、そうじゃなくてだな。鍵掛けてあった筈なのに何故家の中に居るんだ。」 「鍵の波長をずらして逆位相をとって消しちゃいました。」 「そんなことも出来るのか。とか言ってる場合でも無くてだな。何勝手に人の家に入ってきてんのさ。それも無許可で。」 せめて許可ぐらいは取ってからにしてもらいたい。どこぞのパパラッチじゃあるまいし。 「え?許可なら貰ったよ?」 「いやいや、嘘はあきませんて鈴仙さん。」 「この前一緒にアクセサリー買いに行ったでしょ?その帰りに『俺と結婚してくれ。』って言ってきたじゃない。凄い真剣な顔で。」 「ああ……あれか……思い出しただけでも恥ずかしい……」 「あの時、考えさせて欲しいって言ったじゃない?その返事を言いに来たんだけどね…… あの……私なんかで良ければ……ふ、不束者ですが……その……宜しくお願いします……」 「……マジ?」 「……うん。」 「……よかった……てっきり断られるかと……」 「うん……これからも宜しくね?あなた……」 「ああ、宜しくな。鈴仙。」 新ろだ171 今日の月は、見すぎるとちょっと危ない事になってしまう丑三つ時の永遠亭。 師匠の手伝いが終わって自分の部屋に帰る時だった。 廊下の奥に小さな人影。一瞬てゐかと思ったけど、感じる波長が違うし、長い耳が無い。 って、事は―― 「○○?」 「ぁ、れーせんお姉ちゃん……」 「どうしたの? もう寝る時間でしょ?」 「うん、でも眠くなくて」 「それでも寝なきゃダメ。夜は危ないんだから」 特に、今日は満月だから妖怪も活発だし。 ○○に限って外に出る事は無いと思うけど、あまり夜遅くまで起きていられると誰も面倒を見てあげられない。 「…………」 「……○○?」 ○○の様子がおかしい。 眠くないと言うわりにはどこかぼんやりとしていて、それでいて視線はある一点を見つめている。 視線の先を追っていくと、永遠亭の窓を通して丸い月がこちらを照らしていて――っ! 「だ、だめっ!」 満月から○○を隠すように思いっきり抱きしめる。 師匠の手伝いをした後だったし、疲れていたんだと思う。無我夢中だった。 満月の妖気の影響力は人間にはそこまで無い、と言われていたけどすっかり忘れていた。 そもそもそんな事するくらいならば、光の当たらない陰に移動する方がよっぽど効率的だ。 「……っ」 急に○○が聞き取れない程の声をあげた。 気になって○○の方を見るけど、私が抱きしめているせいで顔が見えない。 でも引き離す気は起きない。引き離したくない。 「○○? どうしたの?」 「……ぉ……かぁ、さ……ん……」 ――おかあさん。 確かにそう聞こえた。 ○○は元々外の世界から迷い込んできて、里の方で保護されていたらしい。 それを師匠が里の診察に行った時に聞いて、そのまま引き取ってきた。 それからは私も含めて、永遠亭の皆が○○と一緒に楽しく過ごしてきた。 「……っ、ぅ……」 でも、○○は泣いている。私の胸の中で、お母さんを求めて泣いている。 私では、○○の寂しさは埋められない。 少しだけ、悲しい気持ちになった。 しばらくして、○○が私の胸から離れていく。私の服が涙でびしょびしょだ。 「落ち着いた?」 こくん、と頷いてくれた。 「……月を見てたら、おかあさんのことを思い出しちゃった」 そう言って、無理に笑う○○。泣いたせいで目が赤くなってて、私と同じになった。 やっぱり月のせいだった。 母親に会わせる事は出来るかもしれない。 でも、それは同時に○○を向こうの世界に帰すという事。 それを許すには、○○はここに長く居過ぎたと思う。 皆、泣いてしまうと思う。 私も、姫様も、師匠も、てゐも、イナバたちも、他の人も。 とても、悲しい気持ちになった。 「……○○」 「お姉ちゃん?」 ○○から離れていったのに、私はまた抱き寄せてしまう。 月の光を受けているからか、今日の私は少しおかしい。 「……帰りたい?」 「え?」 「向こうに帰りたい? 帰ればお母さんに会えるよ。でも、私たちとはもう会えないよ」 「え、あ、う……」 意地悪な質問をしている事は自分でも分かっている。 私だってこんな質問されたら答えられない。 「○○がいなくなったら、寂しいよ……」 お姉ちゃんと呼びながら私の所に来て、構ってあげると嬉しそうな顔をしてくれる。 私だって嬉しいし、楽しいし、何より心が温かくなる。 だから、この温もりを離したくない。 ○○を抱きしめる腕に力が入る。 「……だいじょうぶだよ」 ○○がこちらに顔を向ける。 目が合った。 「――」 ○○の眼は、綺麗だった。 何の濁りも無い、透き通った瞳。 自分のやろうとしていた事の過ちに気付かされた。 私と同じような罪を、○○と共有しようとしていた。純粋な○○に、罪を着せようとしていた事に。 私は、最低だ。 「……ごめん、忘れて」 「ふぇ?」 「部屋、戻ろっか」 「あ、うん」 ○○から離れて、手を引いて部屋へと向かう。 二人で、ゆっくりとした足取りで廊下を歩く。 そんな中で突然、○○が私の方を向いた。 「僕、帰らないよ」 初めは何を言っているのか理解できなかった。 「れーせんお姉ちゃんと会えなくなるとさびしいから」 これはさっきの意地悪な質問の答えなのだと、理解するのに時間がかかった。 「だから、だいじょうぶだよ」 「それに、れーせんお姉ちゃんのこと大好きだもん」 彼の眩しいくらいの笑顔が、私の波長を乱した。 思わず目を逸らす。心臓がうるさいくらいに高鳴っている。顔だって何だか熱い。 ――え、嘘。私、こんな小さな子にドキドキしてるの? みんなが寝静まってる深夜で本当に良かったと思った。 この瞬間をてゐに見られたら、この先ずーっとからかわれるかもしれない。 意味だってそういう意味じゃない事だって分かってる。 大好きっていうのはほら、あの、友達的な意味、とか、家族的な意味、とか。 だから、私が最初に思ってしまったような"大好き"の意味とは違うって事は――違う。 何もおかしくない。私も今までどおりに○○を愛してあげれば良いだけ。 応えなきゃ。○○の"大好き"に応えてあげなきゃ。 「……うん。私も○○の事、大好きだよ」 握っていた手に力を込めながら応える。 返って来たのは、満面の笑み。 あぁ、だめ。一度意識してしまうと、どうしても頭から離れない。 何だか○○の笑顔を見ると変な幻覚を患ってしまったように、心臓がドクドクと大きく脈打ってしまう。 きっと満月の妖気のせいだ。そうでも考えないと私がおかしい事になってしまう。 「お姉ちゃん、おやすみなさい」 ○○が立ち止まってそんな事を言い始めた。 何事かと思った。ここで寝てしまうのかと思った。 しかし、彼の後ろにあるふすまを見てやっと理解する。 気付けば○○の部屋に着いていたんだと。 握っていた手が離れていく。 「う、うん、おやすみなさい」 ○○が部屋の中に入ってふすまを閉めるまでずっと眺めていた。 短い動作だったけど、○○は最後まで私に笑顔を向けてくれた。 そこでふと浮かんだのが、"大きくなったらお姉ちゃんと結婚する"って言葉だった。 ○○と出会ってからは、その言葉を聞いた事が無い。 小さな子なら高い確率で一度は口にすると里から聞いてきた、と師匠が言っていた。 聞いた当初は、何て軽はずみな言動なんだろうと思っていた。 でも、今は。例えば○○が私にそんな事言ってきたら。 「……本気にしちゃうんだから」 自分で言っていてこれではまるで恋する乙女だと思ってしまった。やっぱり今日の私はどうかしている。 部屋に戻って早く寝た方が良いと思い、自室に向かう。 その足取りは、何故か軽かった。
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■鈴仙3 「なあ鈴仙」 「なあに?」 「押し倒していいか?」 「………ごめん、今なんて?」 「いや、『押し倒していいか?』って言ったんだが」 「……………」 「………駄目か?」 「…………だっ…ななな何、何言ってるのよ貴方って人はぁー!!」 パァーン 「ふぐぉッ!」 あ~っと! 鈴仙くんの平手で ○○くん ふっとばされた~! そのまま鈴仙は文字通り脱兎の如く走り去ってしまった。 「くっ…駄目だったか……」 「あらあらウドンゲもウブねぇ。 まぁこれだから貴方たちを見てるのは楽しくて堪らないのだけど。」 「見てないで助けてください永琳さん……姫様もいらっしゃるんでしょう?」 「あら、バレてたの。流石ねぇ」 「もういい加減慣れました。痛つつ……」 「それにしても貴方にしては随分積極的だったじゃない。何かあったの?」 「いや、なんだかそういうのが流行ってるらしくて……」 「ふぅん。外では変なことが流行ってるのねぇ。」 一方、うどんげはというと……… 勢いで走り去ったものの何処へ行ったらいいかわからず、永遠亭に戻ってきていた。 しかし帰って来たはよかったが、顔を合わせづらかったので庭でうろついているところだった。 「はぁ…はぁ…まったくもう、あの人はいきなりなんてことを……」 ふと、○○の行ったことが反芻された。 「でも………彼にだったら………いい、かも………」 「ふーん、成程ねー」 「ッッッ!!! て、てゐ!!!」 突如、竹林の影から不敵な笑みとともに白兎が現れた。 「い、今のはちが…そういう意味じゃなくって!」 「ふふーん、意外と大胆なんだねぇ。みんな聞いて聞いてー!鈴仙ちゃんがー」 「うう、やめてー。」 時既に遅し、てゐに知れた時点で、その話は永遠亭の全員に知られたと同じことを意味するのだった。 その後○○と鈴仙の間には気まずい空気が流れていたが、 その他大勢はいつ押し倒すのかと期待に胸を膨らませていた。 ちなみに鈴仙自身もちょっと期待をしていたのは秘密だ。 すまん、今まで書いたこと無いのに勢いだけでやってしまった。 しかもイチャイチャできてない上に微妙に流行が終わってる気がする・・・ 5スレ目 161 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 遅れたけど、つまりこういうことですか? 「鈴仙。嬉しい話があるわ」 いつものように鈴仙と採取してきた薬草の仕分けをしていると、八意永琳大先生がにこやかな顔で入ってきた。 イナバ達はそこらではしゃぎ回り、輝夜様はたまたま野草集めにやって来た妹紅と鉢合わせ、殺し合いの真っ最中。 至って平和な永楽亭の昼下がりである。…一区画を除いて。 「え、なんですか師匠? 良い話というのは」 「貴女、胸が大きくなっているみたいよ」 「へぇ、そうなんですか……って、はいぃぃ!?」 全く想像してなかった話に顔を赤くする鈴仙と、あまりにも脈絡の無い話に思わず頭を柱に打ち付ける俺。 「大体従来比にして…2、3センチは増量ってところかしら」 「いや、その、嬉しい…のは嬉しいんですけど、…師匠なんで知ってるんですか?」 「鈴仙、乙女には誰にも教えたくない秘密が十や二十くらいはあるものなのよ(はぁと」 「それ、多すぎやしませんか永琳さん…?」 こちらにウインクする永琳先生。…ツッコミ所満載だが、敢えて黙っておくのが身の為である。 「因みに、今の貴女のトップは8じゅ」 「わーっ! わあぁぁーッッ!!」 「そうねぇ…毎晩のように彼と励んでいたらそうなるのも当z」 「わぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」 必死に言葉を遮る鈴仙。これも弄られ役としての宿命か。というか師匠、見てるんですか? …なんか関係を知られているということが意識されて、顔が赤くなる。 相変わらず庭からはイナバ達の楽しげな声が響き、雄叫びや爆音が聞こえる。 「カァァァァァァァァァァグヤァァァァアァァァァァァッッッッ!!!!!!!!」 「モオォォォォォォォォォォコオォォォォォォォォォォッッッッ!!!!!!!!」 ……庭の一角は無事だろうか? クレーターとか出来てないだろうか? しかし凄い叫び声である。魂に火をつけろ? 「最近鈴仙ったら身体検査もさせてくれないんだから…久しぶりに驚いちゃったわ」 「師匠…あれは普通『身体検査』と呼称される行為とは違うと思います…」 どうやら、俺の想像を超える「アレ」な行為が日夜繰り返されていたらしいようなそうでないような。 まぁ今はその「身体検査」をするのは俺の役割だけどなうはははは… …と師匠に言ったら、一抱えもある座薬を捻じ込まれたのは苦い記憶だ。 なんだか危険な世界に目覚めてしまいそうです、あぁん。 …外からはイナバ達の声がしなくなってきた。どうやら総員退避命令が下ったようである。 「アァァァァァカシックゥゥゥ・バ○タァァァァァッッ!!」 「ムウゥンヒィィリング、エ○カレーショォォォンッッ!!」 …段々両者が危険な世界に転がり落ちて行っているようだが、毎度の事なので黙っておく。 結局薬草の選別をしたり、妹紅を連れ帰りにやって来たが諦めた慧音と共にお茶を飲んだりしてその日は過ごした。 夜ですよ …俺と鈴仙は、一つ同じ布団の中で横になっている。 彼女の長い髪が、俺に絡まっている。くすぐったくて、何となく心地よい。 外には蒼い月。月光が優しく降り注ぐ、静かな夜である。 「科学忍法・火○鳥!!」 「マ○クロウェーブ…来るッ!!」 …前言撤回。今もなお激しい闘いが繰り広げられていた。 もはやネタの披露合戦という様相を示してきているが。というか姫様、それは幻想郷的にOKなの? 月に関係あるとはいえ… 色々考えることはあるが務めて頭の中から消し去るよう努力する。つーきーの光にみーちびかーれー、なんーどもー、殺しーあうー。 「……ねぇ?」 …俺の腕に頭を乗せていた鈴仙が、こちらに尋ねてくる。 「今日も…するの?」 真剣な目で、そう問う。 返事の代わりに、鈴仙の顔をこちらに近付け、唇を奪う。 「ん……んっ……」 そのまま腰を引き寄せ、手の平を(続きを読むには泳ぐキンギョでやみなべパーティー。飛んでもNothing~) 5スレ目 199 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「えーりんって、すげー美人だよな」 「はぁ? いきなり何言い出すのよ」 「ムッチムチでボインボイーンだし。おまえと正反対だな。それでも弟子なのか?」 「失礼ねッ! わ、私もその内、ぼ……ぼいんぼいーんになるわよ!」 薄い胸を張って、うどんげは声を張り上げた。 「で、その内って、いつ?」 「その……いちねんご?」 「第二次成長期終わってんのに育つわけないだろ馬鹿。一生その洗濯板を抱いてろ」 「…………」 恐ろしく狂った目つきをしたうどんげに頬をつねられる。凄まじい力だ。たぶん千切れる。 「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくてですね」 必死の命乞いと土下座の甲斐あって解放してもらってから、俺はうどんげに言った。 「胸を揉んでもらえば育つって言うだろ? 新聞でも話題になってたくらいだし、大丈夫だって」 「も、揉む!?」 ちなみに、話題のその人物はイニシャルA・M。いぢられキャラばんざい!! 「なんだったら俺が揉もうか?」 「揉むなッ!」 「またまたそんなこと言って、よーしパパ押し倒しちゃうぞー」 「揉むなッ!触るなッ!押し倒すなッ!!」 「と、怒りながらも内心ドキドキなうどんげでした」 「か、勝手なモノローグ語るなッ!!」 ちなみに、本当は内心ドキドキでちょっぴり期待してたのはここだけの話。 5スレ目 368 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「最近、胸が苦しいんですよ」 薬品棚の整理をする俺と鈴仙。 ここは永遠亭。 いつの間にか幻想郷に入り込んでしまった俺を、保護してくれた所。 カバンの中に化学Ⅰ・Ⅱなんて物が入っていたせいで、 俺は今、ここで八意永琳という人の、助手No.2として働いている。 「太ったんじゃないか?」 「ああっ、ひどいですね。 太ったんだったら、絶対幸せ太りですから、責任とって下さいよ?」 「もちろん。地獄の底まで責任とってやるよ」 そしてこの娘が鈴仙。 助手No.1にして、俺の恋人。 俺としても、まさか幻想郷で恋人ができるとは思っていなかったけれど、 この娘の熱烈なアタックに、めでたく恋人になった。 グラッ 突如、大地が揺れた。 地震だ! そう思う間もなく、俺と鈴仙は、薬品棚の下敷きになっていた。 う……。 服に付いた薬品の冷たさで目が覚める。 どのくらい経ったのか。 そうだ、俺たちは地震で下敷きになって……。 はっ! 「鈴仙? れいせーん!?」 「こ、ここです……」 見れば。 向かいの薬品棚に、下敷きになっている鈴仙が見えた。 「待ってろ! 今助けるから!」 薬品棚から這い出す。 俺は幸い、怪我はないようだ。 すぐに鈴仙に駆け寄り、薬品棚を押しのけて抱き起こす。 「大丈夫か?」 「大丈夫、と言いたい所ですが……。 少し、右の足首をやってしまったようです。 部屋まで、連れて行っていただけませんか?」 「よし、このまま連れて行くから」 その状態のまま、お姫様抱っこのように抱き上げる。 鈴仙は痛みのせいなのか、はたまたこの状態が恥ずかしいのか、 顔を赤くしながら、俺の首に手を回す。 「よし、行くぞ!」 そういった瞬間。 プツッ、と ブレザーのボタンが、弾け飛んだ。 「んっっ!」 右手で、恥ずかしそうに胸を押さえる鈴仙。 しかし、片手で押さえきれるはずもなく。 指の隙間から、慎ましやかな胸の谷間が顔を出している。 それでも、左手はそのままなのは、 俺を気遣っているのか、自分を重く見せたくないのか。 「は、早く行って下さい!」 「イエス、サー!」 そして。 ボタンを撒き散らしながら。 俺は、鈴仙の部屋までひた走った。 鈴仙の部屋。 そこは、惨状だった。 ぬいぐるみや薬品が辺りに散乱し、そこに本が折り重なって足の踏み場もない。 それは、もちろんベッドも例外ではなく。 「これは……、ひどいな」 「そうですね……。こんなときに限って師匠もてゐも姫様もいませんし、 どうしましょう……?」 そう。 俺たちが恋人になってから、 やたらと構ってくるのがここの人たち。 今日も、 「2人っきりにしてあげるわ」 と言って、イナバたちを連れてみんなでピクニックへ行ってしまったのだ。 「とりあえず、俺の部屋に行こう。 まだ俺はここに来て日が浅いから、物がほとんどない。 ベッドも、無事なはずだ」 そう言って、鈴仙を抱きかかえたまま、俺に与えられた部屋へと向かう。 思ったとおり、俺の部屋は大丈夫だった。 ベッド以外に物がほとんどないのは考え物だが。 「ほれ、鈴仙、大丈夫か」 「はい……」 鈴仙をベッドに寝かせる。 そして、水を汲んできて、濡らしたタオルを足首に巻いた。 少しは冷えるはずだ。 「すみません……」 いつにも増して、弱々しい鈴仙。 「気にするな。お互い様だ。 俺たちは、恋人だろう?」 「ありがとう、ございます……。 あの、手を握っていて、もらえませんか? あなたに触れていると、凄く安心するので……」 「お安い御用だ」 鈴仙の手を握る。 その鈴仙は、笑顔を浮かべると、 ほどなくして、規則正しい寝息を立てはじめた。 「寝られるのなら、痛みはひどくないんだな。 早く元気になれよ、鈴仙」 頭を撫でる。 立ち上がって、さっきの薬品室でも整理してこようと思った時、 クラッ 眩暈がした。 「……え?」 床がスローモーに迫ってくる。 そう言えば、動悸も激しい。 もしかしたら、さっき薬品をかぶった時に、風邪でもひいたか? そう思いつつも、 俺の頭が、大地に着くと同時に、 意識も、闇へと沈んだ。 「う……」 そう言えば、今日は気絶してばかりだな。 そう思いながら目を開くと、 「良かった……。 本当に、良かったです……っ」 眼の前に、泣きじゃくる鈴仙の顔があった。 そう言えば、いつの間にか自分のベッドに寝ている。 「あー、鈴仙?」 「3日間――、3日間も意識不明だったんですよ。 あんまり心配させないで下さい!」 「俺、どうしたんだ?」 「あなたのかぶった薬品、致死性の薬品だったんですよ! 皮膚からだから、死ぬことはないだろうと師匠は言ってましたけど、 もう、心配で心配で……。 解毒薬を作るには時間もかかりますし、 その間に何か起こらないか、気が気じゃなかったんですから!」 「悪かった。 それにお前もネグリジェだし、治りきってないのに看病してくれたんだな」 「え、べ、別にこれは……」 腕を振る鈴仙。 落ち着いて観察してみると、鈴仙の服はネグリジェにカーディガンを羽織っただけの簡単なもの。 ただ、ネグリジェはシルク製の物凄く高そうなものだが。 そこに現れる永琳。 手にはお盆を持ち、その上にはお粥と薬が何錠か乗っているのが見てとれる。 「お邪魔だったかしら」 「いえ、大丈夫ですよ」 「ごめんなさいね。地震が起きるなんて思わなかったから」 「まあ、俺の体も今のところ大丈夫そうですし、いいですよ」 「ふふふ、それにしてもうどんげったら凄かったわー」 テーブルにお盆を置くと、悪戯っぽい口調になる永琳。 止めようとする鈴仙。 だが、永琳の口は止まらない。 「うどんげったら、あなたが致死性の薬品をかぶったのを聞いて、 『○○、死にませんよね! もし死んだら、師匠を刺して私も死にますから!』 って。凄いでしょう?」 「うう……師匠……ごめんなさい」 「愛されてるわね。嫉妬しちゃうわ」 「ははは。自慢の恋人ですから」 「あら、妬けちゃうわね。では、邪魔者はこの辺で退散しようかしら」 音もなく部屋を出て行く永琳。 あとには、ばつが悪そうな鈴仙。 「嫌な女だと思ったでしょう?」 「いや、嬉しいよ。そこまで思ってくれているんだから」 「本当?」 俺の顔を覗き込む鈴仙。 「ああ、本当だ。 それより、腹が減った。そのお粥を食べさせてくれないか?」 「はい!」 途端に元気になる。 そして。 「はい、あーん」 「いや、自分で食べれるって」 「『食べさせてくれないか』って言いましたよね。 男らしくないですよ」 「いや、あれはそういう意味じゃ――」 「あーん」 どうやらやめる気はないらしい。 覚悟を決めて、俺も口を開く。 「あーん。 もぐもぐ。うん、旨いぞ」 「では、もう一口。 あーん」 「あーん」 こうして、鈴仙がお粥がなくなるまで食べさせてもらった。 だが、錠剤まで飲み終わっても、鈴仙が部屋を出て行く気配がない。 それどころか、衣擦れの音とともに、カーディガンを脱ぎ始めた。 「鈴仙?」 「あなたの症状を早く治すには、添い寝が良いと師匠が言っていたんです。 本当は全裸のほうが効果あると言っていたんですが、 それはさすがに恥ずかしいので、ネグリジェで我慢してください」 「ちょ、ちょっと待て! おおおお前、いつもパジャマ派だろう!?」 指摘箇所が違うだろう。 落ち着け、俺。 「ええ、でも薄絹の方が効果があると師匠が――」 そう言いながら、一歩一歩ベッドに近づく鈴仙。 胸がふるふると揺れているのが、ここからでもわかる。 そしてその頬は、恥ずかしそうに朱に染まっている。 「いやいやいやいや、それ絶対騙されてるから。 っていうか胸がなんでそんなに揺れてんねん」 やばい。 相当俺もテンパってきている。 「胸、大きくなったんです」 「え?」 いきなりの方向転換についていけない俺。 「苦しくなったの、大きくなってたんです。 胸に合うブラジャーがないのでノーブラですけど、失望しないで下さいね」 そう言いながら、俺のベッドに入ってくる鈴仙。 「それから。 騙されていても良いんです」 「は?」 「騙されているから、こうして、あなたと一緒にいられるんですから。 私と一緒は、いや、ですか?」 そんなことを言われて。 いやだと言える恋人がいるはずもなく。 「そうだな。2人で騙されようか」 「ええ。なるべく長く騙されましょう」 「それもなんだか変だけどな」 「ふふふ、そうですね」 そして。 俺と鈴仙は。 1つの枕で抱き合いながら眠りについた。 後日、てゐの写真により、75日ほどからかわれ続けたけど。 5スレ目 622-623 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― この前製薬の材料集めだとかで困ってたうどんげ助けたら、 お礼に永遠邸ですき焼きやるんでどう? ってうどんげに誘われたんだ。 うどんげの手料理を食せるとはまさに至福。 これはアレですね? そろそろ俺の想いも成就してOKってことですよね期待しますよ!? 「おじゃましまーす」 「いらっしゃーい、遅かったですね、もう大体できてますよ」 部屋の真ん中に鎮座する鉄板の中にはくつくつにゃーにゃーと色とりどりの食材が踊っている。 おおこれは美味そう……って、なんか赤いの多いんですけど。 「……すき焼きににんじん入れるか?」 「へ?入れないの? うちではたいてい入ってるけど?」 「(そりゃウサギのためだろ、うどんげはウサギなのかよくわかんないけど) うちは入れないなぁ。肉、ネギ、白菜、焼き豆腐、しらたきぐらいで。 あとはラストにうどん食うぐらいか」 ボッ 「え……わ、わたしっ!?」 「え、いや、俺そんなこと言ってな 「え、えとえと、悪くないですけどもうちょっと雰囲気良い場所でって私は何を言って ぷすっ ? 今の何の音? なんか首筋が チク ッ て し た け 「あらあら、私の可愛いオモchじゃなかった弟子に手を出そうなんて1200年くらい早いわ」 っていう声と共にブラックアウトせめてうどんげの手料理食わせてほしかった △ (・∀・) ってとこまで幻視した (νν …………アレ? 幻視だったんだよねヤゴコロ先生? )ノ 5スレ目 940 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 自分はこういうのを幻視した。 あー、でも文章長いし、幻視力足んないな……。 口調が変なのは、酔っているからということでご勘弁。 ちなみにうちはにんじん時々入ってました。 ====== 永遠亭で留守番を頼まれた。 なんでも、うどんげ以外は泊まりでピクニックに行くらしい。 家事を2人で分担して1日を過ごし、夕食の時間。 「夕食できたわよー」 食堂の方から声がする。 「おおっ、今日はすき焼きか」 食堂へと行くと。 テーブルの上に鎮座ましましているのは、紛れもなき鉄鍋。 肉の焼ける香ばしい匂いが伝わってくる。 「それだけじゃないのよ、じゃーん!」 そう言ってうどんげが取り出したのは、 「ああっ、それは月世界!?」 「そ。師匠の秘蔵のお酒。しかも純米大吟醸古酒千年物。 今日は飲むわよー!」 「って、良いのか?」 「いいのよ。大体、私を置いてくなんて、やってらんないわー!」 俺が横に座ると、 コップで酒をくいくい飲みだすうどんげ。 俺もご相伴に預かりつつ、すき焼きに目を移すが。 「にんじん多いな、おい」 「あ、ごめん。 ついつい兎用に作っちゃった、えへ」 すでに相当顔が赤いうどんげ。 これは、かなり酔ってるな。 「まあ、いいけど」 桜形に切られたにんじんを1つつまみ、口に運ぶ。 うん、柔らかく煮えてる。 「あー、にんじんは私が食べるのー!」 俺がにんじんを口にしたことに、不満を表される。 いや、そんなこと言われても。 「あー、今から食べればいいのかー」 「え?」 そう言うと、俺の唇に唇を合わせて。 舌を俺の口に割り入れて。 にんじんを奪い去るうどんげ。 「んー、おいしー」 「お、おい」 「このほうがいつも食べるよりおいしーなー。 ねえ、今から全部口移しで食べさせてー」 とろんとした目でおねだりがくる。 やばい。 ちょっと幼児退行気味のうどんげ、可愛い。 ほんのりと赤くなった肌が、それに拍車をかけている。 「なら、それに見合うだけのことをうどんげがしてくれたらいいぜ」 こんな言葉が出てくる辺り、俺も相当酔ってる。 俺も強い方じゃないもんな。 そんな俺を、うどんげは見つめると、 「うーん、わかったわ……。 あーん、で食べさせてあげるのと、 口移しで食べさせてあげるのと、 私ごと食べるの、どれがいい?」 爆弾発言をかましてくれました。 「え、いや、あの」 「んー、でも、私を食べるときは私だけを見てて欲しいし、 口移しでいいわよねー」 そう言うと、焼き豆腐を咥えて、俺にキスをせがむうどんげ。 そうして、2人で食べさせあったすき焼きは、 いつもの3倍の時間がかかったけど、 大変おいしゅうございました。 そして、夜も更けて。 鍋の中も総ざらいしたところ。 「ねえ、このおつゆどうしてる?」 「うちか? 大体うどん食べてるな」 「ええっ、私食べられちゃうの!」 「違うわー!」 おでこに、こつん。 悪戯がばれたような笑顔のうどんげ。 2人とも、酔いはまだ醒めない。 「えへへ~」 「ここはどうしてるんだ?」 「兎たちはそんなに食べられないから、いつもこれで終わり」 「そっか。勿体ないな」 「でも、そっか、うどんなのね。 ちょっと持ってくるね」 そう言って、席を立つうどんげ。 だが。 まだ酔いが醒めてない状態で動き出せば。 「きゃっ」 ガタッ 案の定。 うどんげはテーブルの足につまづき、転んでしまった。 しかも、その衝撃で鍋が大きく揺れ、汁が飛び出してしまっている。 「大丈夫か!」 「うん、大丈夫。でも――」 俺に抱きかかえられたまま、テーブルの上を見やるうどんげ。 「おつゆ、こぼれちゃった……」 確かに、つゆがこぼれて、うどんげといわず、俺といわず、あちこちに飛び散っている。 「ごめんなさい……」 しゅん、と俯かれる。 そんなうどんげが可愛くて、 「こうすれば、大丈夫だ」 うどんげの首筋にかかったつゆを一舐め。 「ひゃっ! ……え?」 「うどんは食べられなかったから、代わりにうどんげをいただくとするさ」 「やっぱり私、食べられちゃうんですねー。 でも、1人だけ食べるのはずるいですから、 私もあなたをいただきますよー」 そう言って、俺の頬をすっと舌が撫でる。 その夜は、2人でずっとあちこち舐めあっていたのだった。 次の日、永琳に酒を飲んだのがばれて、しこたま怒られたけど。 5スレ目 945 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 945これしか思いつかなかった 永遠亭で留守番を頼まれた。 なんでも、うどんげ以外は泊まりでピクニックに行くらしい。 家事を2人で分担して1日を過ごし、夕食の時間。 「夕食できたわよー」 食堂の方から声がする。 「おおっ、今日はすき焼きか」 食堂へと行くと。 テーブルの上に鎮座ましましているのは、紛れもなき鉄鍋。 肉の焼ける香ばしい匂いが伝わってくる。 「それだけじゃないのよ、じゃーん!」 そう言ってうどんげが取り出したのは、 「ああっ、それは月世界!?」 「そ。師匠の秘蔵のお酒。しかも純米大吟醸古酒千年物。 今日は飲むわよー!」 「って、良いのか?」 「いいのよ。大体、私を置いてくなんて、やってらんないわー!」 俺が横に座ると、 コップで酒をくいくい飲みだすうどんげ。 俺もご相伴に預かりつつ、すき焼きに目を移すが。 「にんじん多いな、おい」 「あ、ごめん。 ついつい兎用に作っちゃった、えへ」 「箸置けぇーー!」 「え?え?」 「加藤家、家訓!!」 以下略 5スレ目 946 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「はぁはぁはぁ……」 俺は逃げている。 理由は簡単、妖怪に追われている。 遊んだいた因幡の子達がいた。 そしてその子達を狙う妖怪がいたので、少し挑発して俺を追うように仕向けたから。 まあ、その隙に因幡の子達は逃げてくれたので良しとしよう。 「しまった……がぁ!」 走っている途中、石に躓き転けてしまった。 そして後ろから妖怪にその大きな爪で切られる。 かなり深い傷みたいだ。 血が面白いように流れている。 これはやばいかなぁ。などと思う。 まあ、最後に因幡の子達を助けられたから良いか…… そう思った時だった…… 「大丈夫ですか! ○○さん!!」 「れい、せん?」 彼女が来てくれたのは。 彼女が来てからは、あっと言う間だった。 俺が必死に逃げていた相手がものの数秒で倒される。 なんか複雑だ…… 「○○さん!! 大丈夫ですか!?」 鈴仙が俺に呼びかける…… 「あーなんかもう無理っぽい」 背中からかなりの量の血が出ている。 それでも俺は答える。 「そんな……なら今すぐ治療しますから頑張ってください!」 彼女は泣きそうな顔で言う。 「たぶん、無駄だと思うよ」 俺はそう言う。 彼女も解っているはずだ、俺がもう助からない事は…… 彼女の師匠の永琳さんが居れば話は別だと思うが居なものはしょうがない。 「最後だと思うから言っておくよ……」 「最後なんて言わないでください!」 彼女が俺の言葉に反応する。 でも、それを無視して俺は自分の想いを告げることにした。 「鈴仙、俺は君のことが好きだ。初めて出会ったときから好きだった。」 「えっ?」 彼女は目を見開く。 「わ、わたしは「いや言わなくていい」え?」 そして泣きながら言葉を発しようとしたのを俺はさえぎる。 答えは解っている。断られる、きっとそうだから。 そんな最後は惨めすぎるから、だから俺は返事を聞かない。 「結果は解っているから。だからいい。」 彼女はそれでも何か言おうとしてくれる。 「でも!」 そんな優しい彼女がたまらなく愛しく感じる。 だから彼女に向けて精一杯優しく微笑む。 そして最後に告げる…… 「ただ覚えていて欲しいんだ。こんな奴が居たって事を……」 その一言を最後に俺の意識は途絶えたのだった…… 6スレ目 255 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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鈴仙2 1スレ目 530-531, 543, 550, 557 真夜中の永遠亭。 僕は竹林で倒れている所を、拾われて介抱してもらった。 幸いにも拾われた場所は人の住む場所だった。いや、妖怪なんかも住んでいたけど。 数日後には、すっかりと調子も良くなり僕はこの永遠亭で色々と手伝いをしていた。 一宿一飯の恩義…どころじゃなくて、すでに五宿十五飯もなっていれば手伝う気にもなる。 「永琳さん。これは何処に置けばいいですか?」 「あぁ、それはそっちの大き目の棚の方に入れておいて」 「はい」 と、まぁ…こんな感じで適当に日々を過ごしている。 永遠亭の人…妖怪達は普通に話すことは出来るんだけど、一人だけ僕と 全く会話をしない者がいた。 「あら、ウドンゲ…」 「あ、鈴仙」 「……」 そう、月の兎(らしい)である鈴仙=優曇華院=イナバだ。 彼女が率先して、僕を介抱してくれたらしいけど…。 僕が起きてからお礼を言ったきり、それだけしか会話がなかった。 『あ、キミが僕を…ありがとう』 『どういたしまして』 そんな感じだった。 事務的と言うか何と言うか…僕に警戒しているのかどうも刺々しい態度だった。 「…師匠、例の花の毒性についてなんですけど」 「あぁ、アレの事ね。アレは――」 見れば見るほど、不思議な感じだ。 見た目は僕みたいな人間と変わらない。でもその耳だけは兎の耳。 狂気を操るらしいけど…見たことはない。 「それじゃ、掃除に戻りますね」 永琳さんにそう言っておき、外に出て行く。 ちらりと鈴仙が僕の方を向いたけど、特に感情を持って僕を見ていると言うわけではない。 ただ淡々と僕を見る。 目が合うと…軽い立ち眩みがした。 そんな日々が続き、既に僕は居候扱いになっていた。 さすがの僕も掃除くらいは出来るし、ここについて色々学ぶのも意外に楽しくて 人間界になかった充実した日々を送っていた。 「ふぅ、あとは…風呂掃除か…」 相変わらず、ここを掃除するのが大変だ。 無意味に廊下は長いし他の妖怪兎が手伝ってくれなかったら 一日かかるだろうし、大浴場に近いこの風呂を掃除するのに 一時間はかかる事が容易に想像できる。 とりあえず必死になりながら風呂場をタワシで擦り始める。 洗剤なんてものがあるわけもなく、全てタワシだ。 「…何であの娘は、僕を避けるんだろう」 もちろん鈴仙の事だ。 鈴仙のことを考えると妙に気が高揚する。 多分、彼女の瞳を目が合うたびに見ているからだろう。 それよりもどうして僕は彼女の事ばかり考えるのか? 「まぁ、いいか…」 考え事をしている内に風呂掃除は既に大体終わっていた。 今日は永琳さんから借りた本を少し読もう。そうすればちょっとは 考えることもなくなるだろう。そう思い戸を開ける。 ガラガラ 「……あ」 「……」 戸を開くと、目の前に居たのは僕が悩んでいる張本人だった。 それだけなら特に問題はないんだろうけど、その張本人―― 鈴仙は妙に露出度が高い服を着て…いや、彼女は脱衣所で服を 脱いでいたのだ。 つまり、僕が見ているものは…… 思考がフリーズする前に、鈴仙の顔が真っ赤になっているのに気付いた。 口を金魚のようにパクパクさせて、『どうしてここに?』といった瞳で見ている。 「きっ…!」 叫ばれる! そう感覚的に悟った僕は一瞬で鈴仙の口元を押さえた。 まるで犯罪者になった気分だった。 「…ごめん」 鈴仙の耳元で、僕はそう呟いた。 悪気があったわけじゃない…。謝って済む話じゃないのも分かっている。 「…本当に、ごめん」 口元の手を外して、僕はすぐさま浴場から出て行った。 「僕は…最低だな」 好かれるどころか、普通に嫌われた気がする。 …このままだと自己嫌悪に陥りそうだ。 今日は本も読まずに寝るとしよう。 それにしても、綺麗な肌だったなぁ… とりあえず、明日は… (選択肢) (土下座するくらいの勢いで謝る) (開き直る) ーーーーーーーーー少女選択中...ーーーーーーーーー 上・(脳内設定の一般的な)鈴仙ルート 下・ツンデレの鈴仙ルート お好きな方をどうぞ。 ーーーーーーーーー少女選択中...ーーーーーーーーー →(開き直る) ピッ 結局、僕はあの記憶を無かったことにして、次の日を迎えることにした。 やっぱり女の子の柔肌を見るのも滅多にない経験だったから、妙な緊張が 残っていた。 「…よし、忘れた」 そう言う事にした。 僕は何も覚えていなくて、昨日の風呂場では何も起こらなかった。 と記憶を模造した。 「あぁ、ちょうど良かった」 朝一番、無意味に長い廊下で永琳さんに会った。 「ウドンゲがちょっと体調崩しちゃって…ちょっとお見舞いに行ってくれないかしら?」 「えーっと、何でですか?」 せっかく忘れようとしたことを、一瞬にして思い出してしまった。 柔らかそうな肌と…兎の耳、そして見る者を狂気に陥れるその瞳。 思い出したらまた軽い眩暈が起きる。 「…ウドンゲもそうだけど、貴方も大丈夫?」 「まぁ…一応、それで鈴仙はどうしたんですか?酷い病気か何か?」 「湯冷めしたみたいで、ちょっと風邪を拗らせてしまったみたいなの」 …多分、僕の所為だろう。 「貴方って、前からウドンゲの事を気にかけてたでしょ?だから頼もうと思って」 そう言って永琳さんは僕に風邪薬を差し出した。 「いや、僕じゃなくててゐにでも頼めば…」 「てゐは私の指示で栄養のあるものを取りに行かせたわ。私も薬の調合とかで忙しいし よろしく頼むわ」 と一方的に決め付けると、永琳さんは僕の反論も聞かずに、さっさと廊下の奥に 消えていった。 「どうしよう…」 僕の手には永琳さんの風邪薬が握られたままだった。 僕は今、鈴仙の部屋の目の前に居る。 別に疚しい気持ちなんて…少しはあるけど…。とりあえず、部屋の前から 進めないでいた。 こんな時に足が震えて動けないから、逆に笑える。 それでも、この薬を渡さないとならないのも事実で…深呼吸をして、手に人という字を 書いて、飲み込む。 これで緊張は気休め程度になくなった…と思う。 戸の前に立ち、意を決してノックしようとした。 『さっきから居るんでしょ?入ったら?』 いきなり先制を取られた。 心臓はバクバクいっているが、一刻も早く薬を渡して去ろうと戸を開けた。 「やっぱり貴方だったの?」 呆れた様子で言う鈴仙。今度は下着姿じゃなかったけど…あの時の姿がフラッシュバックした。 ダメだ。平常心、平常心。 「それで、何の用?」 前よりは刺々しくなかったけど、それでも微妙な壁を感じた。 「永琳さんに頼まれて…風邪薬」 薬は普通の粉薬だった。僕が今まで見てきたのとは違って、それは漢方薬みたいなものだ。 それを受け取ると、薄く笑って 「ありがとう」 と言った。 「それじゃ…」 予定通り、僕は部屋を去ろうとした。 腕力でも頭脳でも勝つ自信はないけど、このままこの場所に居たら 頭がおかしくなりそうだった。 彼女があまりにも儚くて、抱きしめたい衝動に駆られるが…我慢する。 「待って」 「…何?」 まさか、彼女に止められるとは思わなかった。 「少し…話さない?」 そっぽを向いて、顔を赤らめながら彼女は言った。 「あ…うん」 僕はその誘惑には勝てなかった。 「それで、わたしは兎角同盟を作ろうと思ったの」 「そうなんだ」 こんな風に二人っきりで話すって事は考えられなかった。 むしろ、今まで淡白な反応ばかりだったので、普通に話すこっちの方が彼女の 素面なのかもしれない。 「それじゃ、僕も手伝うよ」 「うん、ありがとう」 この可憐な笑顔を見ると、庇護欲というものが出てくる。彼女を守りたい。 そんな考えも出てくる。 「あのね、わたしは――」 「鈴仙~居るー?」 鈴仙が何か言いかけたとき、戸の前から声が聞こえた。 この声…どうやら、てゐのようだ。どうやら、やっと戻ってきたらしい。 「あれ、貴方も居たんだ?」 「居ちゃ悪い?」 「いや、そんな事はないんだけど」 大体、てゐと一緒に行動すると大抵、騙されるし…あんまり一緒に居たくないんだよなぁ…。 色んな意味で、いい子なのは分かるけど。 「で、何を取ってきたんだ?」 「栄養のあるもの。とりあえず、そこら辺から取ってきたの」 「…騙し取って、とかじゃなくて?」 「あ、あはは」 この笑い方だと、間違いなく騙し取ったようだ。 「それじゃ、鈴仙。僕は部屋に戻るから」 「あ…うん」 とりあえず、僕は出て行くことにした。 『あれ、どうしたの鈴仙?そんな青筋立てて』 『どうしてだか分かるかしら?』 『え、ちょっ…待ってぐりぐりが!痛い痛い!』 僕が部屋から出て行くと、そんな会話が聞こえた。 …とりあえず、気にせずに逃げることにした。 それからと言うもの、誰かと居ると妙に視線を感じるようになった。 てゐと適当に雑談をしてても、永琳さんに本を借りたりしても、輝夜さんと 話しても、何処かしらでほぼ必ず、視線を感じるようになってしまった。 そんな折、僕と鈴仙は永琳さんの元に呼ばれた。 「…何の用なんだろう?」 「さぁ、師匠のことだし…分からないわ」 どうも鈴仙の機嫌も悪かった。 「あぁ二人とも、よく来たわね」 扉の外で永琳さんは待っていた。 「とりあえず、何の用ですか師匠?」 鈴仙の言葉に困ったような笑顔を浮かべる永琳さん。 「これから、出かけなきゃならないんだけど…薬に使える花が 今の季節じゃないと咲かないの。だから出来たら、二人で手分けして 探してくれないかしら?」 その言葉に鈴仙はちらりと僕の方を向く。 どうやら鈴仙の方は行くつもりらしいが、僕は…。 考えてみれば僕に拒否権なんてない。 そもそも居候の身だし。 「分かりました。それで、何を取ってくればいいんですか?」 「えぇ、簡単な絵を書いたメモがあるから、これを使って探してね」 そのメモを僕と鈴仙に渡すと、永琳さんは忙しそうに駆け出していった。 「それじゃ、気をつけてね」 「心配してくれるんだ」 「わたしはあなたの心配なんてしてないわよ!し、心配なんて…するわけないじゃない…」 最後の方は真っ赤になりながら小さい声でほとんど聞こえなかった。 僕が歩き出そうとすると、腕を引っ張ってそれを止め 「死なないでよ」 「死なないよ。…やっぱり、心配してくれてるじゃないか」 「か、勘違いしないの!わたしはあなたに死なれたら迷惑だし… ほら…ほ、他の子も悲しむでしょ!」 確かに掃除とかは手伝ってくれるけど…あんまり好かれてる気がしないんだよなぁ。 悪い子はいないんだけど…。 僕と鈴仙はそんな他愛のない会話をしながら。入り口に着いた。 「それじゃ、鈴仙…後でね」 「うん。また」 鈴仙は空に飛んでいった。 僕に至っては歩くしか能がないので歩き始める。 紳士として、鈴仙が飛んでいる状態から上を見上げるなんて真似はしない。 上を見ないように…僕は素数を数えて落ち着いた。 そう、僕は鈴仙と分かれたことが文字通り命取りだった。 永琳さんに頼まれた目的の植物は手に入れたんだけど…。 目の前には、僕の体の三、四倍はあるであろう巨大な妖怪が居た。 僕を天然の人間と見るや否や、いきなり襲い掛かってきたのだ。 「…どうしようか」 相手の方は嗅覚が利きそうで、隠れても無駄だということが良く分かる。 だからと言って、戦うなんていうデンジャラスな選択肢は僕の中に存在しない。 やっぱり、二人できた方が良かったのかな。 鈴仙が居れば、狂気の瞳で逃げるチャンスくらいは出来たかもしれないのに… それでも、多分…彼女はここに来るだろう。 何故か分からないけど、僕はそう確信していた。 お互いに動く事はない。 僕が動いたら、相手は即座に僕を食らおうとするだろう。 「鈴仙…」 口元から思わず、彼女の名前が出てきた。 自分から永遠亭の方に動く事で、鈴仙に会える可能性も増えるはずだ。 …傷を負ったとしても、鈴仙なら…何とかできると信じよう。 ポケットには野球ボールよりも小さい石が入っていた。 それを握り締めて、狙いすまして妖怪の鼻に当てた。 「ぐぎゃ!」 これでしばらくは眩暈くらいはするはずだ。 今が好機だろう、と僕は駆け出した。 それが、思えば間違いだったのかもしれない。 妖怪は意外に機敏な動きで、僕を追ってきた。鼻を打ってスピードが落ちているとは思えなかった。 それでも僕は必死に走る。 ザク 足が縺れた。背中に鈍痛が走った。 血を流しながら…僕は倒れた。倒れた拍子に木の根元に頭を打った。 それでもまだ、意識はある。 「ニンゲン…」 相手が近付いて来る。僕はこのまま食べられるんだろうか? 『死なないでよ』 …ゴメン、鈴仙。 謝れなくてゴメン。約束が守れそうもない… 「――波符『月面波紋(ルナウェーブ)』」 一瞬で視界が真っ赤に染まった。 そして、その聞き慣れ始めた声に、僕は少しだけ安心した。 「ボロボロじゃない。一体どうしたの?」 「…見ての通り、そこの妖怪さんにやられた」 プライドなんて欠片もない。我ながら情けないな。 「…お仕置き!」 その妖怪に次々に打ち込まれていく鈴仙の弾。 はっきり言って、蜂の巣だった。 「ぎゃぁぁぁぁ!」 その断末魔を聞きながら、僕は頭がボーっとし始めた。 ちょっと血が出すぎたみたいだ。 「ふぅ…って、何で死にそうになってるのよ!」 「…ゴメン、血が出すぎた。眠い…」 実際、意識を保つのも辛い。 「寝ないでよ!今、寝ちゃったら死んじゃうのよ!起きて…起きてよぉ…!」 ゆっさゆっさ、揺り篭のように僕の身体は揺すられた。 泣きそうな鈴仙の声を聞きながら、僕は徐々に意識を失った。 エピローグ 目が覚めると、そこは永遠亭の僕の自室だった。 どうやら生きてはいるようだが…傷が痛む事には変わりない。 「目が覚めたようね」 すぐ傍にいたのか永琳さんが目覚め早々に僕に声をかけた。 「僕は…?」 「ウドンゲに感謝しなさい。生死の境を彷徨っていたあなたを ずっと見ていたんだから」 「…やっぱり、死にかけたんだ」 「容態が安定してからも、ずっと看病を続けて、今はこうなってるけどね」 と、僕の横を指し示す。 そこには疲弊して眠る月の兎の姿があった。 「そうそう、貴方、ウドンゲの下着姿を見たそうね?」 「あ、あはは…」 バレてるよ。まぁ大方、鈴仙が話したんだろうけど。 「月の兎には面白い風習があってね…。それについてはウドンゲから聞くといいわ」 「…一体何なんですか?」 「秘密よ。とりあえず、痛み止めは置いておくわね」 錠剤を机の上に置かれる。 「お大事に」 軽く笑うと、永琳さんは外に出て行った。 「で、鈴仙、起きてるんだろ?」 「…起きてない」 狸寝入りかどうかは大体分かる。眠るのを偽ると不自然に感じるものだから。 「とりあえず、ありがとう鈴仙」 「…~っ、別に貴方を助ける為にあの場所にいたんじゃなくて!」 「それでも、だよ」 「…言っておくけど、ただ通りすがっただけだからね!」 「分かったよ」 彼女の耳は人よりも遥かに優れている。あの時の呟きがきっと聞こえていたのだろう。 「あ、ところで…永琳さんが言ってた事なんだけど…月の兎の風習って?」 その言葉を出すと、鈴仙は真っ赤になりながら俯いてしまった。 僕、何か悪いことでも言ったのかな? 「つ、月の兎は…」 「月の兎は?」 「は、初めて肌を晒した家族以外の異性に求婚をしなければならない」 …思考がフリーズした。 あの時の行動が…まさか、こんなに事になっていたなんて。 「あ…えっと、まぁ、わたしは別にいいの。しょ、正直…他の人よりもあなたなら まだ…十分って言うか…」 「うん」 「ちょっ…」 鈴仙の華奢な身体をそっと抱きしめる。 これから守ろう。この素直じゃない兎の少女を―― ーーーーーーーーー少女選択中...ーーーーーーーーー →(土下座するくらいの勢いで謝る) ピッ うん、やっぱり僕が悪いんだから、明日一番に謝ろう。 それにしても… 「やっぱり、女の子の肌って白いものなんだな…」 と改めて実感した。 まるっきり反省の色がない僕だった。 とにかく、明日は謝らないと…僕の気がすまない。 彼女を傷つけたのもあるけど…やっぱり、嫌われたくはないし。 朝の永遠亭。 目覚めは別段普通だった。 別に『新しいパンツを正月元旦の朝に穿いたような気分』でもない。 結局、普通の目覚め。気分は微妙に沈んでいる。 トントン 戸をノックする音が聞こえた。 こんな事をするのは永琳さんだろうか? まず間違いなくてゐという意見は外れる。彼女の場合、居ようが居まいが勝手に入って 勝手に物を取っていくから。 輝夜さんという事もないだろう。第一、ここに来るような理由がない。 とりあえず、永琳さんということを仮定しておいて、戸に向かう。 「はいはい、何方ですか?」 と、戸を開くと、そこに立っていたのは一匹の月の兎だった。 ここの永遠亭には一匹しか月の兎はいないけど…。 「鈴仙…?」 「お、おはよう」 「えっと、何の用?」 思わぬお客の来訪に、僕は戸惑っていた。 こちらから出向こうと思っていたのに、まさかそっちから来るとは思っていなかった。 「し、師匠が貴方を呼んで来いって言ってて…その、迎えに」 「あ、うん…分かった。ちょっと、待ってて」 鈴仙の顔が赤い。きっと僕の顔も赤い。 やっぱり昨日のことを覚えているからだろう。 「あー、それじゃ…行こうか」 一応、着替え終わり僕は鈴仙と一緒に無駄に長い廊下を歩く。 歩いている間は互いに無言だった。 「えっと、鈴仙」 「は、はい?」 急に声をかけられて、驚いたように鈴仙はこちらを向いた。 すーっと息を吸い込む。 よし、準備オーケー覚悟完了! 嫌われる覚悟は出来てないけど、叩かれるくらいの覚悟は既に出来ているッ! 「昨日はごめんっ!」 「え、え、え?」 「本当に悪かった。今も反省している。殴っても構わない」 本気で土下座するくらいの勢いで謝った。 と言うか、土下座をした。 「えっと、別にいいんだけど」 顔を上げると、鈴仙がスカートを押さえながら、僕を見下ろしていた。 若干恥ずかしがっているのは分かるけど、何でスカートを押さえているんだろう? 「あ、後、早く立って…」 「いや、そうしないと謝れないんだけど」 「…その位置からだと…その、スカート…」 あぁ、そういう事か。この位置から普通に見るとスカートの中が見えるから 早く立ってくれと、言ってるのか。 「ともかく、ゴメン」 「もういいってば、別に減るものでも…ないし」 いや、色々と減ると思う。 気にしなくなったら、少なくとも羞恥心が消える。 「…別に、今のあなたなら見られても…その…」 最後の方はあまりにも小さな声だったので聞き取れなかった。 「あぁ、二人とも来たわね」 「えぇ、結局何の用なんですか?」 永琳さんの部屋(永遠亭住人曰く『八意研究室』)に入ると 明らかに生命に関わるような匂いと、その中で平然と立っている永琳さんが居た。 「えぇ、今日貴方達にここに来てもらったのは他でもないわ。 ちょっと私の作った新薬の実験を――」 『謹んでお断りします』 僕と鈴仙の声が見事に重なった。 永琳さんが新薬を作る、人を実験に使うイコール、死亡確認! の方程式が簡単に頭を過ぎる。 多分鈴仙も同じ方程式が出たんだろう。 「残念ね。じゃあ、別の用件を話しましょう」 「…むしろそっちが本当の用件じゃ?」 「新薬はてゐにでも頼む事にするわ」 心の中でてゐに合掌する。 ごめん、僕達にはどうすることも出来なかった。 「鈴蘭畑に行って鈴蘭を取ってきてくれないかしら?」 「鈴蘭畑って…何処に?」 「それについては、ウドンゲが知っているから案内してくれるわよ、ね」 「あ、はい…鈴蘭畑かぁ…」 何か思うところがあるのか、考え事を始めた。 永琳さんの用件はそれだけだった。 僕達は早速、支度をして昼頃に鈴蘭畑に向かった。 「コンパロ、コンパロ、毒よ集まれー」 鈴蘭畑に着いて早々、僕たちが見たのは一体の人形だった。 鈴仙曰く、ここに住んでから毒を浴びて心を持った人形らしい。 「あ、お久し振りー」 「久し振りね」 一応顔馴染らしく、その人形と鈴仙は話を始めた。 僕はその間、鈴蘭畑をずっと見る。 こうまで同じ花があると、逆に気味の悪くなりそうな光景だった。 毒もあるらしいし… 「話は終わったわよ。さぁ取っていきましょう」 「またね」 「ありがとうございます」 とりあえず、その人形に礼を言って鈴蘭を摘みはじめる。 その人形も手伝ってくれたおかげで、それほど時間がかからず 話しながら一時間ほどで、持ち帰れる程度の量を手に入れた。 「それじゃ、帰ろうか、鈴仙」 「えぇ、行きましょう」 両手いっぱいの鈴蘭の花束。 これではどこかへ、お見舞いに行くような感じだ。 それにしても、鈴蘭畑に居た所為かどうか分からないが、 頭が痛い。ボーっとする。 「鈴仙はよくここに来るの?」 「うーん、来る時と来ない時があるんだけど…最近はあんまり来てなかったから」 人形の彼女とは、何でも花の異変の時で出会ったらしい。 季節を無視した花の一斉開花。 僕は見ていないけど、それは凄まじい異変だったらしい。 そんな異変なら、僕も一度見てみたいと思う。 「うん、これでいいわ。二人ともご苦労様」 夕暮れに永遠亭に戻り、永琳さんの労いの言葉を受けて、僕達は 部屋に戻ろうとした。 戻る時に庭先で倒れていたてゐが妙に印象的だった。 「ねえ、ちょっと外に出ない?」 「あ、うん…別にいいけど」 鈴仙が僕を外に誘ってきた。 今日は色々な鈴仙を見れた気がする。 それでも、真っ赤になった鈴仙が一番印象的で、一番可愛く思えた。 「今日は、いっぱい話せたね」 「まぁ、ね。…今まで鈴仙が話してくれなかったんだけどね」 「わたしは…貴方と話せなかったの」 「…話せなかった?何で?」 「貴方が、男の人って事もあったし…そう、恐かった」 鈴仙の言うことを黙って聞くことにした。 夕日に照らされる彼女は今まで以上に儚く感じた。 「今はそうでもないんだけど…恐かったの」 「だったら、聞きたいんだ…」 「えっと、何を?」 僕は、後ろから鈴仙を抱きしめた。 背中越しに明らかに戸惑っている事は分かる。 僕の顔が赤いのも何となく分かる。 「鈴仙は…僕が好き?」 「……」 鈴仙は答えない。 突然の告白に驚いているのか、彼女の動きでしか分からない。 「わたしは――」 僕は腕の力を抜いて、彼女を離した。 たとえ、どんな言葉を言われても僕の思いは伝えた。 …これで十分だった。 ぎゅっ 唇に柔らかい感触とともに、鈴仙は僕に抱きついた。 「わたしは――あなたが…好き。好きだよ」 時は夕闇に染まっていった。 「鈴仙」 「はい?」 「…幸せってこういう事を言うのかな?」 「少なくとも…わたしは幸せよ」 「そうか…。僕も幸せだ」 僕は鈴仙に口付けた。 その後、僕と鈴仙はてゐや永琳さんによって散々茶化されたりした。 ーーーーーーーーー少女選択中...ーーーーーーーーー 右左右左BA ピッ 無敵コマンドを入力した。 これで何が起きるか僕にも分からない。 ついさっきあった二つの選択もしていないから、適当に行動するべきなのだろう。 誰が入力したのか分からないけど…。 僕にはそれは何かの導きのように感じた。 「…無敵コマンドの導きがあらん事を――」 電波的な言葉を言いながら、僕は瞳を閉じる。 どうか夢の中だけは幸せが見られますように… 翌朝の永遠亭。 いつもと同じように、食事を摂る。 目覚めは普通すぎるくらい普通。 それでも不思議な体の軽さと、朝から感じる違和感だけは、ここ――永遠亭に来てからも 感じた事が無かった。 鈴仙はご飯を食べている。 てゐも普通にご飯を食べている。 永琳さんは他のウサギ達と違って豪華な食事を食べている。 うん、いつもの光景だ。 そう、三人とも僕の方をちらちら見ながら、赤い顔をしていなければ。 「あ、あの…三人ともどうかしたの?」 『べ、別にっ』 目線があった途端、全員が全員顔を背ける。 …? よく見ると、他の妖怪兎なんかも僕を見ていた。 別に朝に鏡を見たときは、何も無かった。 額に『肉』とも『骨』とも書かれていなかったし。 ズボンのチャックが開いているわけでもない。 顔が赤いのも気になる。 まさか全員が風邪を引いたとかそういう感じなのだろうか? …それだとしても、おかしい。 鈴仙やてゐ、他の妖怪兎はともかくとしても、 一応、不老不死…病にかからない永琳さんが風邪を引くなんてありえない。 「それだと…僕だけが何もなっていないって事だよなぁ…」 まぁ、おかしいのは最初だけだろうと思っていた。 流石に二、三日経ってみるとその様子がおかしいと言う事に気付いた。 鈴仙には、念のために例の事故を謝った。 僕のその言葉には驚いたみたいだけど、ちゃんと許してくれた。 とりあえずその日の、日の高い内に、やっぱり永琳さんに呼び出された。 「よく来たわね」 「…永琳さんが呼び出したんでしょう」 やっぱり、顔が赤いのは治っていなかった。 「ここに呼んだのは他でもないわ」 そう言うと、永琳さんは扉に向かって閂を仕掛けた。 これで外からは誰も入って来れない。 あれ? 「そんなに重要な用事なんですか?」 「えぇ、重要な用事よ。まぁ、そこに腰掛けて」 何故かイスは無く、永琳さんはベッドを手で示した。 何となく変だという違和感に駆られながら、僕はベッドに腰掛けた。 その時、たった一瞬だけ体が自分のものでないような感覚に駆られた。 ドン 「え?」 気付いたら、永琳さんに押し倒されていた。 両手首を片手で押さえられて、永琳さんの顔が近かった。 「どうかしら?」 何でこんな状態になっているか、それを考えるのに十数秒要した。 「…永琳さん、病気か何かですか?」 「あら、どうして?」 「…貴女が、こんな事をするなんて考えられない」 「そう、もしかしたら病かもしれないわね」 艶っぽい表情を浮かべて、永琳さんは両手首を押さえながら 馬乗りになった。 「恋の病って言ったら信じるかしら?」 「…冗談じゃ――」 「冗談だったら、こんな事を言わないわ」 もがこうにも、手首は塞がれていて、暴れる事も出来はしない。 動く事が出来ないし、今の永琳さんには恐怖すら感じる。 「ふふっ」 妖艶な笑み。 僕はその表情に吸い込まれそうになる…。 その時だ。 ドカン!とまるで、何かが粉砕するかのような音が聞こえた。 あまりにも大きな音が戸の方から響いた。 そこに居たのは―― 二匹の兎…いや、それはまるで兎の皮を被った鬼だった。 一匹の兎は手に木槌を持っており、恐らくそれによって閂があった扉を 粉砕したのだろう。 もう一匹の兎は、手に何故かリボルバーを持っていた。 言うまでも無い、鈴仙とてゐだった。 「師匠、その手を離してください!」 「あらあら、いけない弟子ね。こんな時に私の邪魔をしようだなんて」 そう言いながら近くにあった弓を手に取る。 拙い…この雰囲気は…互いに殺る気だ! 「六発です!六発以上生きていられた人はいません!」 そう言いながら鈴仙は引き金を絞った。 軽い音が響きながら、その弾は真っ直ぐ、何故か僕の方へ向かってくる。 ――違う その弾はまるで意志があるかのように、途中で曲がり永琳さんに向かって飛ぶ。 いや、そう感じさせる事すらトラップ、本当は最初から永琳さんに銃弾が飛んでいた。 ただ、惑わして僕に向かうように見せただけだ。 「くっ、その程度!」 すぐにバックステップで、永琳さんは距離を取って、その銃弾をかわした。 「もらったー!」 飛んだ先には木槌を構えたてゐが居た。 その木槌が振り下ろされる! しかし、彼女もそれを予想していたのか、既に回避行動に移っていた。 それでも頬を掠って軽く血が飛ぶ。 「こっちへ、早く!」 鈴仙に導かれて、僕は急いでその部屋から出て行った。 何が起こっているんだろう? 「ここまで来れば…大丈夫よね」 永遠亭の外に出て、僕と鈴仙は深呼吸をした。 「鈴仙、一体…何があったんだ?何か…おかしいよ」 いつの間にか感じていた違和感。 それは一体何なのか、僕は鈴仙にそれを聞いていた。 「あなた、自分で気付いていないの?」 「…何を?」 「雰囲気が、その…」 「雰囲気…?」 言いにくそうにしている鈴仙の顔は真っ赤だった。 「その、格好良くなりすぎてる…って言うか」 「いや…意味が分からないよ」 「それで永琳師匠も、てゐも…皆も今のあなたが気に入っちゃったみたいで」 …まさか。 あの時選んだ。妙なコマンド? 「どうかしたの?」 「い、いや…何でも無い」 アレが本当に効いたとしたら、いや…今の状態から考えるとすると それしかありえない。 「…とりあえず、今のあなたがどのくらい続くか分からないけど…守ってあげる」 「そう言えば、鈴仙は…みんなが受けてるような効果が無いみたいだけど?」 「わ、わたしは…その」 真っ赤になりながら、そっぽを向いた。 どうやら、聞いてほしくはないらしい。 「…それで、逃げ切ればいいのか?」 「命をかけた鬼ごっこね」 嫌な響きだ。 命までは取られないだろうけど…永琳さんの態度を見ると捕まったら 色々なものがなくなりそうだ。 「とにかく、竹林を越えて…里でもいいから逃げ込んで!」 そう言いながら、リボルバーを構える鈴仙。 「ところで…鈴仙、その銃は?」 「山猫って呼ばれてた人から貰ったの」 …どうやら、違う次元の人が紛れていたようだ。 その人はきっと『リロードがレボリューション』らしい。 「…鈴仙、頑張って。あと怪我させないようにね」 僕は、竹林に向かって走り出した。 「頑張れ、か…。うん、頑張ろう」 竹林には既に敵の兎部隊が、たくさん来ていた。 けど、突破できない程度ではない! 鈴仙のためにも…突破する! 「うわぁぁぁぁ!」 後ろを見ずに必死に走る。 敵の方が圧倒的に早い。さすがは鍛えられた兎だ。 「うさうさー!」 「うさー!」 数十、数百…これだけに追われている状態なんて人生史上にない経験だろう。 しかし、そんな事は考えてられない。 今は逃げ切らないとならない。 「うさー!」 僕は背後に、気配を感じながら必死に竹林を駆け抜けた。 竹林を抜けた頃には、僕の足はとっくに笑っていた。 動く事すらままならない。 二度と走りたいとも思わない。 木の根元で倒れていると、人の気配があった。 また妖怪兎か? と警戒したところ、現れたのは見知った月の兎だった。 「大丈夫?」 「…鈴仙、まぁ大丈夫だよ」 よく見ると、彼女の服なんかも所々破れていた。 幸いにも肌に傷はないようだけど。 「…あのね。わたしは、あなたに言わないとならない事があるの」 「何?」 「…貴方がおかしくなった原因、わたしなの」 「え?」 「…前から、貴方はわたしの瞳を見ていたでしょ?あの時に、 簡単な幻惑――言うなれば狂気をかけたの」 「…どんな効果?」 「自分から、格好良くなろうとするような効果」 そんなのが掛けられていたのか? いや、思い当たる節は結構あった。考えてみれば、いつも僕は彼女の 瞳を見ていた。それでは、そんな幻惑もかかるだろう。 自分から格好良くなる気はなかったけど…どこかしら、なっていたのかもしれない。 「それが、こんな結果か」 「…ごめんなさい」 「別にいいよ。ところで、どうしてそんな事を?」 「…から」 あまりにも小さな声だった。 「あなたが…好きだったから。もっと格好いい貴方が見たかったの」 でも結果は永遠亭の者がちょっと変になってしまった。 もしかしたら、あのコマンドを選んだのも鈴仙の影響だったのかもしれない。 「…格好いいか分からないけどさ…。僕は――」 「……」 「僕は、鈴仙が好きだ」 何だ。結構簡単に言えるじゃないか。 走った所為もあって、心臓がドキドキ言っているけど。 『永琳さま、突撃しますか?』 「いえ、もう終わりみたいね」 『どう言う事ですか?』 「彼は――ウドンゲとくっついたわね」 落胆と諦めの声が妖怪兎の方から聞こえた。 「これで、久し振りの恋も終わり、か」 永琳も気付いてはいない。 その恋の病というものは二つの狂気のようなものから成り立っているという事に。 一つの狂気は恋する『月の兎』の狂気。 もう一つは恋をしたかった『普通の人間』の狂気。 人の想いとは具現するようだ。それこそが彼の選んだ『コマンド』なのだ。 ちなみに数日後、その『コマンド』の狂気はあっという間に消えてしまっていた。 月の兎の恋と、恋をしたかった普通の人間の願いが叶ったかもしれない。 後書き。 ごめんなさい。 色々やりすぎました。ごめんなさい。 …こんな風に自分で首をしめてどうするんだろう? とにかく、ごめんなさい。 補足。 コマンド入力=好感度がマックスになる。 鈴仙が(半分くらい)みんなの狂気を促しました。 てゐ。漁夫の利を狙っていたけど主人公を鈴仙に取られて失敗。 師匠。今回の多分一番の被害者。狂気に晒されてちょっとだけ、変になった。 注意点。 おかしい事が起こるので、出来る限りコマンドをあまり使わないようにしましょう。 何事もほどほどに(暴走すると手がつけられません)。 最後に、ごめんなさい。 とりあえず首吊ります。 1スレ目 603 610-611 603 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/22(土) 01 42 06 [ S8SIfbtc ] ここでちょっと無意味な質問。 自分が風邪を引いたとして、東方キャラに看病してもらうとしたら誰がいい? そんな告白じゃないけどほのぼのなSS書いてみようかな……って思って。 610 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/22(土) 17 06 05 [ OCbEik9U ] 603 鈴仙。 風邪で伏せってる男の看病を買って出るも、 師匠から処方された座薬を入れる段になってから 二人して顔真っ赤にしているという… しまった、ほのぼのどころかとんだ恥辱プレイじゃないか。 611 名前: 名前が無い程度の能力 投稿日: 2005/10/22(土) 17 14 12 [ ZlkrqM1c ] 610 そこで決め台詞ですよ 「鈴仙、愛してる」
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鈴仙8 うpろだ1198 誰かが泣いている。 誰かが許しを請うている。 泣く必要は無いのに。謝る必要は無いのに。 朧気に浮き沈みする意識はそう思うのだけれど、布団に伏せた体はぴくりとも動かない。 誰かが泣いている。 誰かが許しを請うている。 嗚咽の混じったその声が、あまりにも綺麗で、悲しかったから。 その時、彼は決めたのだ。 泣いている誰かのために、何かをしようと。 ーーー ちりんちりん、家の扉を開けて目に入るのは、幻想郷の家屋にしては珍しい、玄関と広間が一体になったような部屋。 同時に扉の上部に付けてある涼しげな風鈴が音を発し、客の来訪を告げる。 客――鈴仙・優曇華院・イナバはそれ程広くはない部屋をくるりと見回し、誰もいないことを確認すると同時にため息。 毎度のことながら、この場所にはあまり来たくない。 薬売りの道の最後に必ず寄る事になっているこの家。この家の主にかけてしまった迷惑の事を考えるとあまり顔を出したくないのだ。 ここだけはてゐに押し付ける、という手もあるのだが、師匠にあることないこと吹き込まれても困る。 もう一度部屋の中を見回す。 大量のタオルが泳いでいる水槽に、いくつもの鋏が整頓されて置かれている棚。高さの調節が可能な椅子が部屋の中央で、自らを部屋の主だと誇るようにふんぞり返っている。 誰もいなければ、用件だけ済ませて帰っても構わないだろう。 鈴仙がほっとしながら荷物を地面に降ろした時だった。 「えっと、誰か来てるの?」 彼女から見て右、窓の奥のほうから声が聞こえてきた。 何だ、いたのか。 少しの落胆。ため息と共に声が聞こえてきた方角へ向けて声を発する。 「こんにちは、○○、いるかしら?」 「あー、鈴仙? 今、裏にいるからちょっと待っててもらえる? すぐに終わるから」 ああ、仕事の最中か。 耳を済ませてみれば、誰かが嬉しそうな声を上げているのが分かる。 この声は、氷精だろうか。妖精がこの店を利用している、というのは何だか変な感じがする。 やっぱり、物だけ置いて帰ってしまおうか。その場に立ち尽くしたまま数分経ってから、ようやく鈴仙はそう考える。 うん、そうだ。そうしよう。そう決意して踵を返すと、先程自分が入ってきた扉から、一人の男が入ってくる。 咄嗟に、目をそらした。目線を、合わせないように。瞳を、覗き込まれないように。 そらした目線の端、男が口元を寂しそうに歪めたのが見えたが、気付かない。気付いていないという事にしておく。 「おまたせ、鈴仙。毎日ご苦労様」 その辺座ってよ、という言葉に鈴仙は、部屋の隅にある椅子を引っ張り出して腰掛けた。 「ううん。それで、調子の方はどう?」 「あー、仕事の方? おかげ様で順調だよ。さっきもチルノが来ててさ。妖怪とかそっちの方にも受けがいいってのは客商売としてどうなんだろうね」 この問いかけには二つの意味がある。一つは彼の仕事の話。そして、もう一つは―― 「……じゃあ、記憶の方はどう? ○○」 ○○と呼ばれた男が、お茶の入った湯飲みを両手に持って近づいてくる。片方を鈴仙に渡すと、残りの片方に口をつけながら彼も椅子に腰掛ける。 「……そっちは今ひとつ、だね。この間来てくれた時と対して変わってない」 「……ごめんなさい」 「なんで謝るの。鈴仙が気にする事じゃないってば。きっとこっちに来た時にはもう記憶なんて無かったんだよ」 ○○は最近、幻想郷に迷い込んできた外の世界の人間――らしい。 らしい、というのは本人が記憶喪失に陥っている為、外見からそう判断している、という理由からだ。 「でも……」 鈴仙は口ごもる。竹林の中に突如現れた○○の第一発見者は鈴仙であり、その時、ちょっとした事故がおきてしまった。 目を、合わせてしまったのだ。鈴仙が持つ赤い瞳――狂気の瞳と。 彼の記憶喪失はそれが原因だろう、師匠の永琳に言われなくても、瞳の持ち主である自分は十二分に理解している。 だからこそ発生してしまう、負い目のようなもの。それが鈴仙がここに近づきたくないと考える理由である。 「あ、そうだ。持ってきてくれた物、確認してもいいかな?」 ちょっと強引な話題転換。お使いの品の確認、永遠亭の使いとしての自分。その立ち位置は、彼女にとって救いの手。 「ああ、ごめんね。ちょっと待ってて」 言って、鞄から乳白色の液体の入ったボトルを十本ほど、目の前の机に並べる。 次いで、二つ折りにされた師匠直筆のメモを開いて渡す。 ○○はそれを受け取ると、中をさっと確認し、頷きを一つ。 「ありがとうね、俺がこうやって店出してられるのも、永遠亭のみんなのおかげだよ」 「ところで……効果ってどうなの?」 ちょっとした興味。何だかんだで世話焼きな師匠の事だ。弟子の不始末は師の不始末、とばかりに色々と気を配っているのは分かる。 鈴仙の質問に、○○は嬉しそうに答える。 「ばっちり。たまーにくる里のお客さんにも好評だし、魔理沙が何本か持って行っちゃった。永遠亭で売り出したらどうかな? 多分売れるよ、これ」 あの黒白め。おかげで私の仕事が増えるじゃないか。 内心そんな愚痴を零しながらも、そうまで言うなら自分も一度使ってみようか、なんて気分にもなる。 立ち上がった。用事は済ませたし、これ以上ここに居る理由は無い。 「じゃあ、今日はこれで。また必要になったら連絡して頂戴」 言うだけ言って、踵を返す。そのまま出口へ向かって歩を進める。 「ねえ、鈴仙」 足が、止まった。 足を止めたまま、振り返ることは無く、相手に答える。 「何?」 「あのさ――」 そこで、しばらくの間があった。 彼にしては珍しい事だった。何を言うべきか迷っている、という空気が後ろから感じ取れる。 沈黙の空間がいくらか続き、彼はついに、何かを決心したかのように、ふ、と息を吐いてからこう言った。 「あのさ、もし良かったら、髪切っていかない?」 右手にある空間を見た。 タオルが泳ぎ、鋏が並び、高さを変えられる椅子が部屋の中央でふんぞり返っている。 そこは世間一般で床屋と呼ばれる職業の人間の仕事場で、それはつまり○○がここで床屋を営んでいるという事を意味している。 記憶喪失の彼の荷物は櫛と鋏と剃刀で、記憶はなくしてもその使い方と技術だけは忘れていなかった。 だから、彼は永遠亭を出て、店を開いた。 何時までもここでお世話になっているわけにはいかない、と言っていたし、記憶に残っている行為を続ければ自分の記憶も戻るかもしれない、とも言っていた。 はじめは永遠亭全体が反対していたが、試しにと何人かのイナバの髪を切らせてみれば、それは確かに様になっており、コレなら問題はないだろうとの結論が出たのだった。 鈴仙が届けているのは、彼女の師匠特性の洗髪料だ。 彼が師匠を薬師と見込んで頼みがある、などといって洗髪料の調合を頼み込んだ時は流石に開いた口が塞がらなかったが、当の本人が楽しそうに調合しているのだから、まあいいのだろう。 「……」 少しだけ、考えた。 最初は不安そうにしていたイナバが、作業を終えた後嬉しそうにあちらこちらを飛び回っていたのを思い出す。 そんなに、いいものなのだろうか。 興味を惹かれたというのもあるし、時間に余裕があるというのもあった。 そして、なによりも。 彼の手で髪を切ってもらいたいという願望は、彼が床屋である事を知ったときから、鈴仙の心の何処かで、間違いなく存在していた。 「……じゃあ、お願いしようかな」 彼は、何処か安堵したような表情を浮かべて、部屋の真ん中にある椅子を指し示した。 それに従い、椅子に腰掛ける。 刈り布をすっぽりとかぶり、手回しで高さを調節する椅子が鈴仙を乗せて上昇する。 鏡の向こう側の彼と目を合わさないように、薄く目を瞑った。 霧吹きが髪を湿らせる感触が閉じた視界では強烈で、ぴくり、肩が震える。 ――しゃりん。 髪に櫛が入り、二枚の刃が触れ合う音がする。 視界を閉ざした鈴仙の後ろから発せられるその音に、それ程恐怖を覚えない。 目を閉じて、鋏が立てる音を聞きながら思い返す。 初めて彼と出会ったあの時を。そして自分が起こした過ちを。 ーーー その時、鈴仙は竹林の中を歩いていた。 師匠に薬の材料を取ってくるように言われたのか、何か用事があっててゐを探していたのか、それは覚えていない。 風の吹かない夜だったことは覚えている。上弦の月が照らす光だけが世界の光源で、それだけあれば充分な明るさだったことも覚えている。 静かな夜だった。蓬莱の人の形と月の姫が、二人の間にしか成立しないお遊びに興じる事も無ければ、誰かが弾幕を放つ轟音も無かった。 しばらくの間一人で歩いていると、ふとした拍子に視線を感じた。 周りを見ても誰もおらず、波長を用いて周囲を見渡しても何も無い。 気のせいだ、と判断して再び歩き出したその時に、突如風が吹いた。 思わず体を庇ってしまうほどの強風だった。草や枝が舞い上がるのを感じた。 何の予兆も無く生じた風に疑問を覚えると同時に、風は止んでいた。 代わりに鈴仙の視界に映っていたのは、一人の青年。 鈴仙の足にして三歩ほどの距離に、呆けたように突っ立っていた。 何が起きるか分からない世界とはいえ、今まで何も無かったところにいきなり人が現れたら唖然としてしまうのは道理という物。 じろじろと、という表現で青年を見てしまっていた。 突然現れた青年。怪しいし訳が分からなかった。視覚で情報を得る生物である以上、彼女がそれを観察しようと見詰めるのは、間違ってはいない。 いや。 思えば、鈴仙のその行為は、見惚れていた、と言ったほうが良かったのかもしれない。 居なかったはずの場所に気がついたら居た、という現象よりも、その人物の姿形や自分よりも高いくらいの背の高さ、月の光を跳ね返す黒髪に、見惚れていた。 一目惚れという概念は、存在する。その時の鈴仙の状態は、間違いなくその単語に合致していた。 青年が、我に返ったように周囲を見渡し、視界に鈴仙を納めた。 鈴仙に、目を合わせて。 何かを訊ねようと、口を開く。 「――あの、」 胸が、高鳴った。 視線は、絡まったまま。 だから、きっとそれが引き金だったのだ。 青年は、突如苦悶の表情を浮かべたかと思うと、声を発する事も無く倒れてしまった。 色彩に濃淡があるように、記憶にも濃淡はある。 その日の出来事の中で、記憶に濃く残っているのはそこまで。 慌てて永遠亭にその青年を運び込んだ事とか、師匠に青年の世話をするように言い付けられた事とか、そういったことはぼんやりとしか覚えていない。 ――いや、もう一つだけ。こびりつく様に記憶に残っている事柄が、一つだけある。 目を覚まさない彼に、謝った。 一目惚れしてしまった彼をこんなにしてしまったことを、泣きながら謝った。 彼との出会いが長い時間の中で風化していってしまうことがあっても、きっとそれだけは朽ちることなく脳裏に残るだろうという確証がある。 あの姿に自分が見惚れなければ、あの声に高鳴る胸が無ければ。そもそも、最初に出会ったのが自分でなければ。 彼は、こんなことにはならなかったのだ。 その思いは鈴仙の体を這う鎖となり、彼が目を覚まし、記憶を失っていた事で彼女を縛り上げてしまった。 結果生まれる、苦手意識のようなもの。それが、彼女から青年を遠ざけた。 用事があれば話しかけたし、呼びかけられればそれに答えた。 けれど、そこに初めて相手を見たときの思いが見え隠れしないように。 想いを鎖で縛って、心の奥底に沈めていた。 ーーー 「――はい、おしまい」 風が○○の声を運んでくると同時に、それまで彼女を包んでいた布が取り払われるのを感じる。 椅子が下がっていき、服を手箒で軽く払われる。閉じていた目を開き、手渡された手鏡を恐る恐る覗き込み、思わず息を呑む。 作業としては、大した物ではない。腰まで届くほどの長髪を、肩口まで切って全体を整えただけ。 けれど、鏡の中に移っていた自分はそれまで見た事のない自分だった。 これが本当に私なのだろうか、そう思うと変身した自分が不安そうにこちらを見る。 「どう……かな?」 ○○の声に、怯えが混じっているように感じられる。 何も言わずにずっと鏡を見つめている自分が怒っていると感じたのかもしれない。 「凄い……これ、本当に私?」 逆だ。思わず聞き返してしまう。 立ち上がると頭は軽く、今飛び上がればそのまま月まで行く事が出来そうな錯覚を受けるほど。 ○○は両手に持っていた刈り布を手首でばさりと一振りして、ほっとしたような笑顔を見せる。 「大丈夫、今俺の目の前にいるのは鈴仙、君だよ。気に入ってくれた?」 頷く。嬉しさでそのまま舞い上がりそうだった。そのまま舞い上がれそうだった。 「良かったー、鈴仙って髪が綺麗だからさ、こういう事言い出すのに凄く勇気が必要だったんだ」 「な……!」 さらりと口に出された自分への褒め言葉に対応できなくて、顔中が真っ赤になる。 何を言うかな、と搾り出すように呟く。 「だって事実だもん。俺、鈴仙のその綺麗な髪、大好きだよ」 顔の赤みが濃度を増す。何でこう恥ずかしいことをさらりと言えるのだろうか、彼は。 悔し紛れに反撃してみる。 「……ふ、ふーん。髪だけなんだ。君にとっての私って」 言ってみてから、とても悲しい事実だと思う。 知っている。この散髪師は、髪を切るという行為が心の底から好きなのだ。だから誰が相手でも真摯にその髪を切り、相手を喜ばせる。 その情熱は髪に向けられているものであって、個人に向けられているものではない。 言われた相手は、その言葉に困ったように笑う。 その笑顔はきっと、彼女の好みの顔。 「どう、だろうね。もしかしたらそうなのかもしれない」 思う。私の好きな笑顔で、言わないで欲しいと。分かりきった答えでも、曖昧なまま希望を残していて欲しかった。 踵を返す。薬売りの仕事はもう終わっている。今日は竹林の中をふらふらと歩いて帰ろう。 「でもね、知ってる? 俺がこんなに相手のことを考えて髪切ったのって、鈴仙が初めてなんだよ?」 足が、止まる。 「突然この世界に来て君の赤い瞳を覗き込んだあの時から、君が俺のために泣いてくれたあの時から。 いつかこの人の髪を切ってあげようって、決めていた。 それが俺に出来る恩返しの形だろうって、朝も昼も夜もずっと、君に似合う髪形を考えていた。 はは、おかしいよね。髪型を考える為に顔を知って性格を知って好みを知って、気が付いたら惹き込まれちゃってた。 凄い時は一日中何をやっても君のことしか考える事が出来なかった日もあった」 背後から、抱きしめられる。 「ねえ、鈴仙。今日髪を切ったのは、ここが境界だったからだと思うんだ。 これ以上君を考えていたら、俺はきっと君に恋してしまう。君のことしか考えられなくなると思う」 「……その気持ちが、私の瞳から生まれた狂気の結果でも? 私は君を狂わせてしまったんだよ。 狂気の中でねじ込まれた想いなんだよ、君のそれは。だから私は、君に好かれる資格なんて、無いんだよ」 そう、思い込もうとしていた。 出会いが悪かったのだと、諦めようと思っていた。 なのに、彼の腕の力はますます強くなっていくのだ。腕の温もりが、思い込みを打ち砕いていく。 「関係ない。始まりがどれだけ不純でも、間違っていても。今の俺はきっと、君が好きなんだ。 狂気がどれだけ心を蝕んでも、それだけは決して歪みやしない。絶対だ。 だから、聞かせてくれないかな。俺は君に恋しても、いいのかな……?」 変身した自分が、今までの臆病だった自分に勇気を与えてくれる。 両手を広げればどこまでも走っていける気がする。今ならどんな相手も敵じゃない。 澄み渡る青空に、彼女の声が吸い込まれていく。 狂気の瞳が介在する余地も無い、一つの答えが導かれる。 「……私は――」 新ろだ12 鈴仙と喧嘩になった。 原因は、俺の目の前の食卓にある。 人参のグラッセにソテー、かき揚げ、きんぴら、煮物、野菜スティックにんじんのみ。 人参50%のメンチカツ、にんじんの味噌汁、そしてデザートは冷蔵庫ににんじんゼリーだそうだ。 そして、俺は人参が嫌いだ。 それは俺と鈴仙が一緒に、里の食堂で昼食を食べていたときだった。 「そういや鈴仙って料理できるのか?」 「そりゃ出来るわよ?なに、もしかして出来そうにないって思ってる?」 「いやぁ、永遠亭に遊びに行くと、いっつも他のイナバ達がご飯の準備してたから、ね」 「む、それじゃあ今日の夜は私が腕をふるうわ!」 「おお、それは楽しみだ。期待してるぜ」 そして現れたのは、忌々しき根菜どもだった。 「鈴仙、一つ言い忘れてたことがある」 「何?」 「俺、人参ダメなんだ…ちっこいガキの頃から、一度も口にしてないぐらいに…」 「……ねぇ、○○……」 「……すまん……」 「人参も食べられないのに、月の兎を彼女にしたっていうの? 酷い…○○がそんな人だったなんて…」 「え、あ、いや、でも、愛は本物だかr」 「食べて」 「え゛」 「愛が本物なら、食べて」 「……どうしても?」 「……」 「……」 「そっか…それじゃもう片付けるわ」 「すまん……」 「いいのよ、○○との縁もこれっきり片付けるから!」 「え!?」 「当たり前じゃない!人参も食べられない人とこれ以上…これ以上……ぐすっ」 鈴仙は泣いていた。 考えてみれば当然だ。 折角腕を振るって作った料理に箸すら付けてもらえなかった。 人参が食べれるか否か、じゃない。 俺は鈴仙の愛情を撥ね付けたんだ。 「……食うぞ」 「いいの、無理しないで」 「鈴仙泣かせたままにする方が、俺にとっては無理なんだよ! 大体、折角彼女が作ってくれた料理に一口も手を付けないとか、彼氏のすることじゃないからな! さぁて、全部平らげてやるぜ!」 「○○…」 大見得を切ってはみたものの、これはとんでもない難題だ… 何とか食べ進むには…加工度の高い料理からいかなくては… まずはメンチカツだ。 こいつならば、肉と半々で、しかも衣を付けて揚げてある。 ソースを多めにかけ、覚悟を決めてかじりつく… サクッ 心地よい歯ごたえと共に、人参の臭みが…こない。 下処理がいいのか、人参の嫌いな部分は何一つなかった。 これは美味いじゃないか。 「大丈夫、○○…?」 次にかき揚げを口に運ぶ。 サクサクとした歯ざわりと共に人参の嫌な味が…ない。 …?これは…? 「うん…」 きんぴらと煮物に箸を付ける。 ……そういえば、最後に食べてから既に軽く十年以上の歳月が流れているわけだ。 要はあれだ…食わず嫌い状態。 人間、成長するうちに味覚にも変化が出て、嫌いだった物も平気になってくることがままある。 ただし、それを食べる機会がなければ、気付くはずもない。 俺は、目の前にある人参のフルコースを既に楽しみ始めていた。 「○○、普通に食べてるように見えるんだけど…」 「ああ、どうも食えるっぽい。っていうか普通に美味しいわ、これ」 「なによそれ…」 「いやぁ、最後に人参食べたのって、ほんとに小さい頃だったんでな。 もう平気になってたっぽい」 「はぁ…一口食べたら許してあげようと思ってたけど、なんか拍子抜けしちゃったわ」 結局、人参のフルコースを平らげて満腹になった俺は、縁側で月を見ながら休憩していた。 今日は十六夜、綺麗な月が雲の無い空に浮かんでいる。 「ちと食いすぎたか…」 「私の分まで全部食べたら、そりゃお腹もきつくなるわよ」 「いや、食ってたら止まらなくなってさ…」 「ふふ、でも、嬉しかった。 あんなに美味しそうに食べてくれたんだもの」 「本当に美味しかったからなぁ…また作ってくれよ。 ああでも…さすがに人参フルコースはやりすぎだぜ?」 「あ、あれはその…好きなもの作ってたらああなっちゃって…えへ」 「兎の人参好きは恐ろしいな…」 月明かりに照らされた鈴仙の顔は、息を呑むほどに綺麗だった。 同時に、もし人参が今でも食べることが出来なかったら… 俺は、この綺麗な顔を見ることが出来たんだろうか… 「なあ、鈴仙…俺が料理を一口も食えなかったら、本当に…」 「…その時は、人参1%入りのオレンジジュースで勘弁してあげたわよ」 鈴仙は、月の兎というよりも悪戯兎のような顔で微笑んだ。 「やっぱり鈴仙は優しいな」 「貴方には特別、ね」 俺達は少しの間見つめ合うと、どちらからともなく笑い出した。 うpろだ1268 「こんにちは、薬の点検に来ました」 「来たよ~」 「ちょっとてゐ、挨拶ぐらいちゃんとしてよ!」 「はは、ご苦労様。 それじゃあ上がって、薬を見ておいてくれ。 その間にお茶を淹れるよ」 「あっ、いつもすみません」 「今日のお茶菓子な~に?」 「てゐったら!」 「今日はブランデーケーキだよ、新聞で見かけたんで買ってみたんだ」 「やった!それ一度食べたかったんです!」 「鈴仙ったら~」 「あはは…し、失礼しました」 ここは里の薬局兼俺の住居。 いや、正確には永遠亭の出張所か。 人里から永遠亭は結構遠い為、薬だけでも提供できるようにと作られたのだ。 そして、その少し前に隣家の火事で家が焼けて困っていた俺が店番として雇われた。 「薬はあんまり出てないみたいですね」 薬の残りを確認している鈴仙が声をかけてきた。 「ああ、薬はね…」 「薬局なのに、カレー粉ばっかり売れてるね~」 「確かに材料はほぼ漢方薬とはいえ、売上の半分以上がカレー粉ってどうなんだろうな…」 「診察に来た親御さんが、子供が食欲が無いときでも食べるからって買ってるって師匠が。 体壊して薬を飲むぐらいなら、そのほうがいいですもんね」 「最近暑いからな…無理もないか」 「そういえば、お茶は熱い奴?」 「いや、朝方にチルノを捕まえて氷を作ってもらったよ。 冷やしカレーが気にいったらしい」 「さすが子供ね…」 お茶を淹れ、ケーキを切って居間に運ぶ。 氷水で冷やしたおしぼりも ブランデーケーキの甘い匂いが、薬局の方まで届いたようだ。 鈴仙とてゐが、呼ばれるまでもなくやってきた。 「いい匂い~」 「薬の補充、終わりました。 夏祭りが近いから、酔い覚ましなんかを多めに置いておきました」 「ご苦労様、二人とも。 今日はアイスティーにしといたよ」 「やっと人心地つけるわ、もう暑くて汗だくなんだもの!」 「ほんと、今日は暑いよね~」 よっぽど暑かったのか、鈴仙はネクタイを外し、ボタンを二つほど外している。 冷たいおしぼりをおでこに当てながら、ストローでアイスティーを飲んでいるが、当然、少し前傾になるわけで… 正直、目の毒だ。 「あー、生き返るわー」 「死んでないけどね~」 「確かに暑いのは分かるが、落ち着いたらボタンぐらいはきちんと掛けてくれよ。 目のやり場に困る」 「えっ!?やだ、忘れてた!」 「そっか~、鈴仙も色気で男を釣る歳になったんだね~」 「ちょ、ちょっとてゐ!変なこと言わないでよ!」 「しまった、あまりにも美味しいエサにまんまと釣られた!」 「もー、○○まで!」 「どうよ○○?一家に一匹鈴仙ちゃん?」 「いや是非とも一匹所望いたす」 「価格は三百円ポッキリですぜ~」 「うぬぬ…月給三か月分か…月賦でおk?」 「一括のみ受け付けウサ」 「……」 『幻 朧 月 睨 ( ル ナ テ ィ ッ ク レ ッ ド ア イ ズ )』 「「すんません、調子こきました」」 「分かればよろしい」 物理破壊を伴わない、家にやさしいコスト5スペル。 相手にも優しいのが今回ばかりは幸いした。 「そういえば、夏祭りは三日後だったっけ」 「ああ、救護テントは俺も手伝うんだったっけ…」 「そうよ、忘れないでよね。 夏祭りを楽しめないのは残念だけど、みんなの思い出に影を落とさないようにするのも大事なんだから」 ケーキをつつきながらの会話。 夏祭りは残念ながら楽しめない。 …だが、テントには鈴仙がいる。 「わかってるよ。 まあ、今回は別に出店を回らなくてもいいしな」 「ほうほう、○○は別の楽しみを見つけたみたいだね~」 「ああ…だが言えば兎鍋だぜ?」 「亀の甲より年の功、幸せうさぎがそんな野暮しないって~」 「なにコソコソ話してんのよ、そこ」 「「なんでもないよ~」」 「…ものすごく気になる…」 アイスティーとケーキを楽しみながらの、おばかな会話。 この時間を過ごす為に、俺は生きているのかもしれない。 「ん~、このケーキおいしいね~」 「ああ、先にちょっと味見したけど、かなりいい味だよな。 ちょっと酒がきついけど。」 「そう?丁度いいと思うけどな~」 「ん~、お酒の香りがすごくいいね~ほんとおいしい~」 「あれ?鈴仙ちゃん、ちょっと酔ってる?」 「よってないよ~?ケーキぐらいで月の兎が酔うはずないじゃない~あははははははは」 「あ、そうか…」 「え?なになに?」 「このケーキ、はじっこに酒がやたら多く染み込んでるんだ。 鈴仙の皿のケーキ、ちょうどはじっこだ…」 このケーキの端は、やたら多く酒を含んでいる。 味はいいんだが、そのアルコール量は酔うには十分すぎる。 味見をした俺が言うんだから間違いない。 「ん~おいしい~」 鈴仙は、幸せそうにケーキを食べている。 「まあ、この後は帰るだけだから怒られたりはしないし、まあいっか~」 「いいのかよ!」 上機嫌でケーキを食べ終えた鈴仙は、そのまま帰ると言い出した。 「本当に大丈夫か?」 「だいじょうぶだいじょうぶ~このていどなんてことないわ~」 「ちょっとやばそう…」 「ふう…てゐ、鈴仙のことよろしくな」 そういって、俺はてゐの頭を撫でてやる。 いつも帰り際にやっていることだ。 「はいよ~、ふふふっ」 「いっつもてゐだけずるい~!私も~!」 「えっ!?」 鈴仙が、頭をなでてくれと言い出した…本格的に酔ってるな。 「はやくはやく~」 「はは、仕方ないな」 鈴仙の頭を、言われるがままに撫でてやる。 「ん~♪」 「やれやれ…すっかり可愛くなっちゃって…」 とん 鈴仙が、頭を俺の胸に預けてきた。 「…鈴仙?」 「…ん…もっと…」 鈴仙の頭を撫でている右手はそのまま、左手で鈴仙を抱きしめる。 鈴仙も俺に抱きついてきた。 両手を俺の後ろに回し、手を背中に這わせてきた。 「…鈴仙…」 「○○…」 …ずっとこのままで… 「三分経過~」 「「えっ!?」」 てゐの一言を合図に、俺と鈴仙はものすごい勢いで体を引き離した。 「あー、すまん。ちょっと調子に乗りすぎた」 「わ、私こそごめん…」 顔が熱い… 鈴仙の顔も真っ赤になっている。 少し酒が入った状態とはいえ、なんとも恥ずかしいことをしてしまった。 「それじゃ、夏祭りでね~」 「ま、またね○○!」 「お、おう!」 「青春だね~」 「「うるさいよ詐欺ウサ!」」 「あれ?夫婦?」 「「……!」」 そのまま、互いに一言も発することが出来ないまま、鈴仙とてゐは帰っていった。 「…あれ?三分経過とか、滅茶苦茶野暮じゃないか?」 寝る前になって気付いたあたり、俺にも相当酒が回っていたようだ。 「…次は夏祭りか」 次に鈴仙に会えるのは夏祭りの日。 その日を待ち焦がれながら、タオルケットをかぶる。 だが、俺の手は鈴仙の暖かい感触がいつまでも残っているかのようで、とても眠れそうにない。 「…鈴仙」 愛する人の名を呟き、俺は無理矢理に目を閉じた。 うpろだ1270 体に響く太鼓の音と、篠笛の調べが心地よい。 夏の暑さも、夕闇と共に収まっていた。 「みんな楽しそうだな~」 「そうだなぁ…」 「ごめんなさいね、○○まで付き合せちゃって」 八意先生が、申し訳無さそうに話し掛けてきた。 「あーいや、人里の祭りに救護テント出してもらってるんですし。 毎年、医者が酔っ払って役に立たないのも分かってましたから…」 「医者が酔っ払うとか…結構無茶苦茶なのね…」 「腕は悪くないんだけどね、勧められると断れない人だから」 そんなわけで、今年は祭の会場の二箇所に救護テントが出ている。 普通なら患者は分散するはずが… 「鈴仙、消毒薬の瓶を取って」 「はい師匠。 …気のせいか、みんなこっちのテントに来てるような…」 「医者がアテにされてないせいだな…」 患者はほぼこちらのテントに集中していた。 まあ、患者といっても大体は人ごみに酔ったか転んだ程度のものだが。 それでもひっきりなしに来られると、なかなか辛いものがある。 祭りの開始から2時間ほどして、やっと客足が落ち着いた。 「ふー、やっと一休みできるな」 「みんなご苦労様。 てゐ、ちょっと抜けて食べ物と飲み物を調達してきてちょうだい。 あ、チョコバナナだけは絶対に外さないでね」 「わたしかき氷!」 「俺は焼きそば!」 「らじゃ~!」(`・x・)ゞ てゐは何故か敬礼をして、外に飛び出そうとした。 「てゐ!ゲームは一回だけにしなさいよ!」 「鈴仙ちゃん、無駄に鋭いな~わかったよ~」 ぺろっと舌を出して、てゐは雑踏に消えていった。 「一回ならいいんだ?」 「いつもなら真っ先に逃げてるはずなのに、今日は頑張ってたしね」 「そうね、珍しいこともあるものね…何かあったのかしら?」 俺たちが不思議がっていると、一人の男が飛び込んできた。 「す、すいません、八意先生は!?」 「はい、どうされました?」 「頭を打ったまま動けなくなった人がいて…すぐに来てくれますか?」 「分かりました、場所は?」 「その…向こうの救護テントです…」 「…どういうことかしら?」 「それが、椅子に座ってる先生に無理に酒を勧めた男が、勢い余って先生を椅子ごと後ろに…」 「…はぁ…分かったわ。 鈴仙、○○、悪いけどしばらくお願いね」 「わかりました師匠」 「はい、早く行ってあげてください。 ここはしばらく大丈夫だと思うんで」 八意先生は、愛用のバッグを持って向こうのテントに向かった。 「やれやれ…まさか先生が患者になるとはなぁ…」 「ほんと無茶苦茶ね…私達が居なかったら、ほんと悲惨だったんじゃない?」 「全くだな」 この状況で、目の前で将棋倒しでも起ころうものなら、もはや手の打ちようがないだろう。 四人いても対処できるかどうか分からないのに、今は俺と鈴仙の二人しか… …二人しか…いない… そのことに気付き、鈴仙の方を向いてしまった。 鈴仙もこちらを見ていた。 お互い、一言も発せず、身動きもしないまま、時間が流れた。 ドーーーーーーーーーーーーーーン その音に、俺も鈴仙もびくっと体をふるわせた。 「花火が始まったみたいだ。 お、こっからもよく見えるな」 「本当、綺麗ね…」 テントから少し外に出て、花火を眺める。 暗闇に咲く光の華をしばし眺めていた。 ふと、横に居る鈴仙を見る。 花火の光が、鈴仙の瞳に映り、色とりどりに輝いてる。 気が付くと、俺は鈴仙の肩を抱いていた。 鈴仙もこちらに体を預けてくる。 「…綺麗だね…」 「うん…」 俺と鈴仙は、花火が終わるまで、そのまま立ち尽くしていた。 …今しかない、本気で気持ちを伝えるなら。 「すいません!うちの子が転んでしまって…」 足に怪我をした子供を抱いた母親が駆け込んできた。 「あっ、はい!こちらに座らせてください。 ○○、創傷用の一式用意して」 「あ、ああ、分かった!」 …ま、次の機会を待つか… しばらくして、八意先生は向こうのテントでそのまま待機する旨連絡が来た。 てゐは結局逃げたのか、そのまま戻ってくることは無かった。 鈴仙は「もう!結局逃げたのねあの詐欺ウサは!」と怒っていた。 そんな鈴仙をなだめつつ、やってくる患者の治療を続け、祭りは終了した。 「これで終わりかな…お疲れ様、鈴仙」 「うん…ほんと疲れちゃった…」 鈴仙は耳までぐったりしていた。 「た、ただいま~」 「ちょっとてゐ!今まで…って、なんであんたがぐったりしてんのよ」 「ひ、姫に捕まって、そのまま今まで市中引き回し…」 「それはまた、大変な目に遭ったな…」 「それじゃあ責めるに責められないわね…ご苦労様」 「とりあえずかき氷以外は確保してきたよ~」 「お、それじゃ早速食べるか」 「うん、もうおなかぺこぺこ!」 出店の焼きそばやお好み焼きを食べながら、くだらない会話をする。 次こそは言葉で伝えよう、そう思いながら。 花火が始まって、しばらくした頃。 「チョコバナナおまちど~」 「あらてゐ、どうしてこっちに?」 「あっちは熱くて近寄れないのよ~」 「ふふ、そういうことね。 それじゃ、かき氷は私が頂いちゃおうかしら」 「半分ちょ~だい~」 うpろだ1276 今日は幻想郷でもっとも暑い日らしい そして暑いといったら倒れる人も多いそうで、永遠亭で手伝いをするようにと師匠に呼ばれたので 来てみたら案の定 輝夜「あちいぃ~溶ける~溶ける~」 ……とまあ、こんな感じであったので普通に師匠の手伝いをすることにした 永琳「あらよく来たじゃない。てっきり運ばれてくる方だと思ってたわ」 ○○「そんなにやわじゃないですよ師匠。それで何を手伝えばいいんですか?」 永琳「そうね……とりあえず運ばれてくる人たちがとのくらいのものか調べておいて」 ○○「了解しました。……それで鈴仙はどこに行ったんですか?」 永琳「あの子なら町に出かけてるわよ。里のほうでも倒れる人が多くてここまでこれないからって」 ○○「あの鈴仙がね……優しいところもあるんだなぁ」 永琳「ふふっ、今頃気づくようじゃまだあなたもダメダメね」 ○○「???」 永琳「じゃあよろしくね」 なんか変な師匠。うふふと笑いながらどっか行っちゃったし それにしてもあの鈴仙がわざわざ里の方へ出向くなんて……明日は雨だろか? ……って早く師匠の手伝い終わらせないと それにしても鈴仙か…… 師匠に言われたとこはきちんとやるし、 いつも俺に対しては厳しいけど言ってる事は正しいし 髪さらさらで可愛いし、 ウサ耳だし、 赤い眼もなんかかっこいいし ……俺、鈴仙のことどう思ってんのかなぁ…… 鈴仙「ただいま、あれ、○○じゃない」 ○○「っと、よお、れいせ……ん……?」 鈴仙「どうしたのよ?」 の、ノースリーブだとぉ!? ま、まさか今までにこんなことがありえたか!? ○○「な、なぁ鈴仙?」 鈴仙「何よ?」 ○○「なんで今日はそんな格好なんだ?」 鈴仙「え?暑いからに決まってるじゃない」 ○○「だ、だよな~あははは」 鈴仙「ま、まさか……ちょっと近寄ってこないでよ?」 ○○「なんで?」 鈴仙「あんたもどっかのバカと同じで「腋サイコーーー!」とか抱きついてこないでよね!」 ○○「……悪いがそこまでは腋に執着はしていないぞ」 鈴仙「ほっ……」 ○○「まったく人をなんだと思ってやがる……」 鈴仙「そ、それじゃあ今の私どう……思う?」 今の私?そんなもん可愛すぎるにきまってるじゃないか! っと危ね~思わず本音を言っちまうところだったぜ でも……本当に可愛いよなぁ…… 鈴仙「○○?」 ○○「のわぁ!い、いつの間に横に!?」 鈴仙「ねぇ……私のこと……どう思う……?」 すすすすすすs擦り寄ってこないでくださいれれれれれ鈴仙 りりりりr理性ががががが ○○「そ、その……す、すすすすす」 鈴仙「す?」 ○○「す……す、すごく可愛いと思う……」 鈴仙「そう!嬉しいよ○○!」 ……ああ、なんだろうこの笑顔を見たらなんでもできる気がするぜ…… 永琳「そう、それじゃあこれも追加でヨロシク」 ○○「……ハッ、し、師匠!?勝手に心読まないでください」 鈴仙「何考えてたの?」 ○○「い、いやなんでもない。そ、それよりこれ早く終わらせようぜ」 鈴仙「そうね、とっとと終わらせましょう」 永琳(うふふふ、上手くいったわね。この「自分の本当の気持ちに気づく薬」……あとはこのまま……うふふふふふふ……) 輝夜(えーりんがこわいよぉ……) ○○「鈴仙そっちはどうだ?」 鈴仙「うん、もう終わるよ」 よ、ようやく気持ちが静まってきたぜ…… 鈴仙「○○?」 ○○「へっ?あ、ああ」 鈴仙「そのさ……この後空いてる?」 ○○「あ、ああ」 鈴仙「大事な話があるんだけど……いい?」 だ、大事な話!?ももももももしかしてそれって!? 鈴仙「その……ここじゃあなんだから外に出て話ていいかな」 ○○「それで……大事な話って?」 鈴仙「その……あのね……」 こ、これは愛の告白ということですか!? そ、そそそそそんな心の準備が…… 鈴仙「実は……」 ○○「ゴクリ……」 鈴仙「実は○○は師匠に薬を打たれてるの!!」 ○○「俺も鈴仙のことs……ってええ!?」 鈴仙「そうなのよ……って○○何うつむいてるの?」 ああ、なんだろうこの悲しさ…… そう、そうだったのか……ということはこの状況を!! ○○「はっ!?鈴仙っ!」 鈴仙「っ!!そこか!!」 永琳(ちっ気づかれたか……まぁいいデータが取れたからいいわ。ここは退散ね) ドロン! 鈴仙「遅かったか!」 ○○「もういいよ鈴仙……どうせデータ採集に使われてただけだから……」 鈴仙「それにしても……何でそんなに落ち込んでるの?」 ○○「ああ、それは俺が鈴仙のこと好きだから、てっきり鈴仙も俺のこと好きだと思って……あはは、これもきっと師匠の薬の せいだよね」 鈴仙「!?……そ、それは……私も……その」 ○○「えっ?」 鈴仙「わ、私も○○のことが好きだから……」 ○○「あ、あははは、な、なんだ両思いだったのか」 鈴仙「そ、そうみたいね……あははは」 ○○「あははは……」 鈴仙「ははは……」 ○○「……」 鈴仙「……」 ○○「そ、そろそろ戻ろうか」 鈴仙「そ、そうね戻りましょ」 永琳(うふふふ、鈴仙よく見破ったけどまさか自分も打たれてるなんて思ってないわよね……うふふ、いいわ~初心な恋愛…… ここからきっと二人とも大人への階段を上って……うふふふふh) 輝夜(……さっきから永琳「うふふ」としか笑ってないし……死亡フラグかしら……) てゐ(いや!あんた死なないやん!?)
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鈴仙座薬イナバ 名前 鈴仙座薬イナバ 主使用武器 FA-MAS F1 AK-47 M4A1 Carbine 得意マップ ウェア 不得意マップ 特にナッシング プレイスタイル 初弾でHS出さないと死ぬ程度の能力 マウス感度 SA側は6~8 マウス解像度は400dpi クロスヘアー 1 FPS暦 半年ぐらい? コメント いろんな銃から座薬が出る。 最近 考え中 リンク 座薬ろぐ 顔文字四段活用 弱 (´・ω・`) 強 (`・ω・´) サイキョウ (´`c_, ` ) とんがりコーン m9(´`c_, ` ) CS:S買いました Steamアカウントはmathkmです PCスペック 自分は解説も交える予定 OS Windows XP HomeEdition ServicePack 2 CPU Athlon64 X2 4200+ (OC 2.6GHz) メモリ CFD ELIXIR W2U800CQ-1GLZJ PC6400 1GB×2 CL5 HDD HGST Deskstar 7K160 160GB ビデオカード Winfast PX8600 GeForce8600GT サウンドカード Realtek HD Audio(オンボ) モニター Baffaloの17インチ 型番忘れた マウス Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0 or Microsoft IntelliMouse Optical or A4Tech X-750FX-750BFが死亡→X-750F購入がツルツル加工氏ね→IME 3.0購入で最高だ\(´^∀^`)/なんとなくIntelliMouseOpticalも買ってしまった気分で使う マウスパッド DHARMAPOINT TACTICAL PAD HARD TYPE 40H or SteelSeries SteelPad Qck miniSteelPadいいな→だがしかしIME 3.0に合わない気がする?→キャノ子のが良かったからダーマハードかお→最高だ\(´^∀^`)/現在はIME 3.0とDHARMA HARDのセットを主に使用中・・・SteelPadとX-750Fはどっかで使う キーボード ELECOM TK-U12FYASV→シグマA・P・O GMKB109BK前のがガチャガチャうるさいから替えましたパソコン工房で2480円同時認識数は満足すぎますタッチ感良し・音も静かで満足満足 ヘッドセット audio-technica ATH-M2Z SV サンワサプライ MM-MC62000円ぐらいのオーテクのヘッドホンに1200円ぐらいのマイクコスパ高い インターネット環境 NTT西日本フレッツ光ホームプレミアム OCN 環境の画像とか ↑タクティカルパッドにいっぱい乗ったから撮ってみた ←SteelPad Qck mini+A4Tech X-750BF+英世+100円硬貨 →SteelPad Qck mini+A4Tech X-750F+英世+500円,10円,1円硬貨+あおもりんごちゃん耳かき[勝手に仮称]